
高橋奈己展 白磁のかたち
東京:2019.11.15(Fri)~2020.01.21(Tue)
LIXILギャラリーでは2019年11月15日(金)~2020年1月21日(火)の期間、「高橋奈己展 白磁のかたち」を開催します。
「高橋奈己展―白磁のかたち―」に寄せて
高橋奈己は、いまもっとも注目される若手陶芸家の一人である。その鋭いエッジとゆるやかな曲線から生まれる陰影の美しさは、高橋独自の造形世界である。作品は一貫して「果実」をモチーフに制作しているが、その多くが非対称なので、複数のパーツに分けて「鋳込む」という手間のかかる工程を通して制作される。成形の際におこなうラインの修正、口元の整え方によって作品は日々変化する。また、角度の違いや陰影が生み出す濃淡によって、白一色でありながら多彩な表情をあらわし、それが高橋作品の魅力ともなっている。
高橋は、武蔵野美術大学卒業後、イタリアのファエンツァ国立陶芸美術学校に入学する。動機は、「美大の時は、学校自体がシンプルで機能性のあるクラフト中心だったので、一度そういう世界から出たかった」からだ。美術学校に在籍中、左右対称のオブジェ作品「frutti(フルッティ)」を制作したことから、「鋳込み」という技法と出合った。フルッティとは、イタリア語で「果実たち」のことである。このイタリア留学は、高橋にとって自身の陶芸と出合ういい機会となったようだ。
「私の作品は作為の塊なんです。ですので、自分の造形力とセンスにかかっている部分は大きいです。白磁の美しく品のある質感で、凛とした美しい造形になるよう日々制作しています」と、新しい造形に挑戦する意気込みを語るが、その生みの苦しみも半端ではない。高橋は、どんなに悩み、疲れ果てても「鋳込みからも白磁からも離れようとは思わない」と覚悟のほどを語る。
高橋の白磁作品に新たな局面が現われたのは、2010年に林屋晴三氏より「茶道具を作ってみなさい」と叱咤激励され、2012年に柿傳ギャラリーで初めて茶陶作品を発表した頃からではなかったか。茶陶とは、イタリアに着いて早々、ファエンツァ国際陶芸美術館にて「樂茶碗400年・伝統と創造」のヨーロッパ巡回展をみて興味をもち、1999年には同館にて深見陶治氏の個展をみて大いに刺激を受けたという。帰国してからお茶を習いはじめたが、作品を作るまでには至らなかった。茶陶を本格的に作りはじめて4年を経た2016年、第63回日本伝統工芸展で「白磁水指」が日本工芸会新人賞を受賞した。この作品は、小さいながらも、清涼感あふれる清新な造形感覚の水指で、とくに不規則な稜線から生まれる陰影とフォルムが美しい。その後の活躍は、陶歴が示す通りである。
本展には、2003年から2007年までの小作品と、茶碗、水指、茶器の白磁作品が展示されるが、これまでの作品より稜線の幅が大胆になり、高橋のまた新たな局面を示しつつある。
森 孝 一(美術評論家・日本陶磁協会常任理事)
- 左:白磁茶碗 2019年 H8.2×W11.3×D11.3cm
中央:白磁水指 2019年 H19×W18×D18cm
右:白磁茶器 2019年 H7.5×W5.5×D5.0cm - 撮影:荻沼秀和
- 撮影:荻沼秀和
- 撮影:荻沼秀和
会期 | 2019年11月15日(金)~2020年1月21日(火) |
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休館日 | 水曜日、11月24日(日)、12月28日(土)~2020年1月5日(日) |
開館時間 | 10:00~18:00 |
企画制作 | 株式会社LIXIL |
入場料 | 無料 |
作家略歴
1997 | 武蔵野美術大学短期学部専攻科(陶磁コース)卒業 |
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1997~1999 | ファエンツァ国立陶芸美術学校在籍(イタリア) |
1999 | グループ展(ファエンツァ・イタリア) |
「国際陶芸シンポジウム」参加 | |
グループ展「アートケラミカトロヤン99」(ブルガリア) | |
2000 | 個展(INAXガレリアセラミカ・東京) |
2003 | 個展(Gallery Jin・東京、2004) |
「第21回朝日現代クラフト展」入選(2004、2005、2006、2007、2008) | |
2005 | 個展(乾ギャラリー赤坂・東京、2008) |
2006 | 「第44回朝日陶芸展」入選 |
2008 | 「―わかもん展―」(陶彩 新橋・東京) |
「第8回国際陶磁器展美濃」入選(2014、2017) | |
2010 | 個展(柿傳ギャラリー・東京、2012、2014、2016、2018) |
2013 | 個展(リスン青山・東京/リスン京都・京都) |
「第5回菊池ビエンナーレ」入選(2015、2017、2019) | |
2015 | 「一点展」(SHISEIDO THE GINZA・東京) |
「第8回現代茶陶展」入選(2016、2017、2019) | |
2016 | 「現代茶の湯工藝展:流儀を問わず今を問う」(伊勢丹新宿店・東京) |
「FINE ART ASIA」(艸居ブース 香港) | |
「SOFA CHICAGO」(艸居ブース シカゴ・アメリカ) | |
「近代工芸と茶の湯Ⅱ」(東京国立近代美術館工芸館) | |
「第63回日本伝統工芸展」新人賞 | |
「第50回女流陶芸展」T氏賞 | |
2017 | 個展(日本橋三越美術サロン・東京) |
個展(GALLERY YUNOR 白金台・東京) | |
個展(現代陶芸サロン桃青 大阪大丸心斎橋店・大阪) | |
「COLLECT 2017」 艸居ブース(ロンドン・イギリス) | |
「現代作家茶碗特集展」(日本橋三越・東京、2018、2019) | |
「清州工芸ビエンナーレ」(韓国) | |
「国際北陸工芸サミット「ワールド工芸100選」」展(富山県美術館) | |
「第3回金沢・世界工芸トリエンナーレ」入選 | |
「第42回日本陶芸展」茨城県陶芸美術館賞 | |
「第57回東日本伝統工芸展」入選(2018,2019) | |
「第64回日本伝統工芸展」入選 (2018,2019) | |
2018 | 「陶芸~新世代の技とかたち~」(札幌芸術の森工芸館・北海道) |
「国際陶磁器フェスティバル美濃 桃山から現代へ志野、織部 伝統の継承展」 | |
(横浜そごう美術館・神奈川) | |
「日本×ファエンツァ姉妹都市・国際陶芸展・陶芸学校 交流の軌跡展」 (ファエンツァ・イタリア) | |
「第11回現代茶陶展」TOKI織部大賞 | |
2019 | 個展(アートサロン光玄 名古屋・愛知) |
「質感」稲葉周子・内田翠・高橋奈己(現代美術艸居・京都) | |
「岡田文化財団設立40周年記念 第14回パラミタ陶芸大賞展」(パラミタミュージアム・三重) |