
谷本景展 古代からⅡ
東京:2019.09.03(Tue)~11.12(Tue)
LIXILギャラリーでは2019年9月3日(火)~11月12日(火)の期間、「谷本景展 古代からⅡ」を開催します。
谷本景氏は伊賀焼の窯元の家に生まれ、若き日にはフランス、パリで銅版画を学び、古伊賀の伝統の中に独自の現代性を表現する作家です。これまでも茶道具などの他に、銅鐸をイメージして生まれた、土に埋もれて朽ちかけるものの美を表現した造形作品「古代から」シリーズを制作してきました。
本展では、さまざまな土の表情を矩形の支持体である陶板に表した新シリーズから10点を展示します。
「谷本景展 古代からⅡ」に寄せて
今回の展覧会は、前回(2015年)開催された個展「古代から」シリーズの最新作である。この2013年から制作している「古代から」シリーズは、前回は「古代遺跡から出土した朽(く)ちかけた銅鐸(どうたく)をイメージして生まれた」作品で、古伊賀の特徴である「火色・焦げ・ビードロ釉」を新しく解釈し直し、その焼き上がりに絵画的要素を取り入れたものであったが、今回は、その平面的な造形をさらに進化させて、平面そのものの「陶板」という形式になっている。
だからと言って、銅鐸をイメージして生まれた作品の制作が終わったわけではなく、それはそれとしてさまざまなヴァリエーションを表現しながら発展している。例えば、今年の7月に伊賀市のART SPACE IGAにて開催された「古代から」展には、銅鐸をイメージした作品の全面に大小の赤い円形が施されて、古伊賀から解放された抽象的な表現作品を発表している。
思い返せば、谷本氏は高校卒業後、美濃の日根野作三(同じ伊賀出身)や弟子の加藤仁の許で陶芸を学ぶが、絵画への憧れが断ち切れず、1973年パリ在住の「具体」の画家・松谷武判を頼って留学、その紹介でW・ヘイターの版画工房「アトリエ17」で銅版画を学んだ。また、父・光生氏は、日本で初めて「抽象陶画」というジャンルを開拓した先駆者であった。そんな谷本氏にとっては、陶芸と銅版画は両輪のような存在であったが、その二つが融合し始め、「陶板」シリーズでは、粘土の亀裂を造形表現したものや、ストライプ模様を描いたもの、水玉のモチーフをカラフルに彩色したものなど、表現の領域を大きく広げている。
今回の「谷本景展 古代からⅡ」では、粘土の亀裂を造形表現したものを中心に出品される。この「古代から」シリーズには、縄文や弥生の要素が多分に内包されているが、これまで日本の陶芸家がなかなか抜け出せなかった「用途性」や「器(うつわ)性」と言った概念からは解放されている。なぜならば、使うことや器であることが、その作品の芸術的価値を決定付ける要素ではないからである。しかし、縄文人が土に神を見、水の神に頭を垂れる太古の信仰と言った古代的なもの「土の本質」は、谷本氏の作品の中に強く内在していると言ってもいいだろう。今回の「陶板」には、そんな「大地の力」を強く感じるのである。
森 孝 一(美術評論家・日本陶磁協会常任理事)
会期 | 2019年9月3日(金)~11月12日(火) |
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休館日 | 水曜日 |
開館時間 | 10:00~18:00 |
企画制作 | 株式会社LIXIL |
入場料 | 無料 |
作家略歴
1948 | 三重県伊賀市に陶芸家・谷本光生の長男として生まれる |
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1970 | 美濃にて日根野作三、加藤仁に師事 |
1972 | 伊賀三田窯にて作陶 |
1973 | パリのウィリアム・ヘイターのアトリエ17にて銅版画を学ぶ |
1976 | 陶芸展(パリ・フランス) |
1977 | ギメ東洋美術館にて陶芸作品によるデモンストレーション(フランス)、帰国後、 |
三田窯を継承、以後、全国各地で個展開催 | |
1978 | 個展(池袋三越/東京)、「伊賀・信楽二人展」(小田急/新宿) |
1980 | 「伊賀・信楽新作展」(松坂屋/静岡)、「景茶陶展」(益田屋/東京) |
「光生・景茶陶展」(大丸/高知、1981年 玉屋/福岡) | |
1982 | 「伊賀・信楽二人展」(赤坂グリーン・ギャラリー/東京)、個展(三越/新潟) |
1984 | 「光生・景・洋・三人展」(大丸/福岡)、個展(池袋三越/東京) |
1986 | 親子展(岩田屋/熊本)、「三重の茶・花器展」(三重県立博物館[現・三重県総合博物館]) |
個展(野村美術館/京都) | |
1987 | 親子展(大丸/福岡) |
1988 | 「陶芸百選展」(髙島屋/大阪、東京) |
1989 | 「土来花来」展(マスダ・スタジオ/東京) |
1990 | 明治村茶会(犬山・愛知) |
1991 | 「伊賀・信楽展」(香雪美術館/兵庫)、個展(松坂屋/横浜・神奈川) |
1994 | 「伊賀陶芸会展」(三重県立美術館) |
「三重陶芸作家展」(近鉄百貨店/四日市・三重、1996年) | |
1996 | 「茶の湯と野の花の出会い展」(玉屋/佐賀) |
1997 | 「三重の作家たち展」(三重県文化センター/津・三重) |
1999 | 個展(近鉄百貨店/名張・三重、髙島屋/京都、2004年) |
2000 | NHK「やきもの探訪」出演 |
2001 | 個展(小倉玉屋/北九州・福岡) |
2002 | 個展「壺と華」(名鉄百貨店/名古屋・愛知) |
2003 | 「工芸家の大正・昭和・平成展」に出品(三重県文化会館[現・三重県総合文化センター]/津・三重)、個展(和光/銀座・東京) |
個展(和光/銀座・東京) | |
2004 | 「現代伊賀・信楽陶芸展」(大丸/大阪) |
2005 | 「東海の陶芸」展(名古屋・愛知) |
2007 | 個展(大丸/大阪、2008年 /東京) |
2011 | 個展(フランクフルト・ドイツ、2013年) |
2014 | 「『古代から』谷本景」(現代美術 艸居/京都) |
2015 | 個展「谷本景展 古代から」(LIXILギャラリー/東京) |
2018 | 個展(京王/東京) |
2019 | 「谷本景展『Since ancient times 古代から』」(伊勢現代美術館/三重) |
「谷本景 古代から」(ART SPACE IGA/三重) |
- 2019年9月 会場風景
撮影:荻沼秀和 - 2019年9月 会場風景
撮影:荻沼秀和 - 2019年9月 会場風景
撮影:荻沼秀和