展覧会/イベント

CONNECT/DISCONNECT | Asao TOKOLO × noiz
LIXILの文化活動

CONNECT/DISCONNECT | Asao TOKOLO × noiz

東京:2020.08.08(Sat)~09.30(Wed)

LIXILギャラリー「オンライン特別展について」


LIXILギャラリーは、特別展「CONNECT/DISCONNECT | Asao TOKOLO× noiz」を開催します。
新型コロナウィルスの世界的な感染拡大が続き、公共空間での人やものとのかかわり方に大きな変化が求められています。このような状況に於いてLIXILギャラリーでは、場所や時間に捉われず、より多くの人に届けられるオンライン上でのバーチャルエキシビジョンを開催します。
幾何学の持つ規則性を巧みに操りながら美しいデザインパターンを生み出す野老朝雄(ところあさお)氏と、デザインの可能性を飛躍的に高める「コンピューテーショナルデザイン」をとりいれている建築デザイン事務所 noizがタッグを組み、デジタル技術を駆使した楽しく美しいバーチャルな世界を画面いっぱいに展開します。
野老氏の描く紋様が万華鏡のようにつながり、はじけ、多様に変化する独特の面白さを、その動きと連動し響きあう音楽とともに、ぜひ体感ください。


(*LIXILギャラリーは現在も臨時休館しております)



「探索するパターン」豊田啓介(建築家、noiz)


物理からバーチャルへの流れが加速している。仕事がリモートで打ち合わせはZOOMになり、講演やトークイベント、コンサートや展示までもバーチャル化への流れを避けられない。もちろん、これはCOVID-19による不可避的な状況への対応であって、積極的な選択の結果ではない。しかし見方によっては、肉体や物性を越えた多様な価値や体験のデジタル技術による移転や再現、機能の拡張が、少しずつでも確実に可能になりつつある現在、変化に対してあまりに臆病なこの社会に、早く新しい可能性に移行しろという神のちょっとした蹴りが入ったとも捉えられなくもない。


とはいえ、あまりに突然の変化に我々は戸惑う。直接会っていた人、持っていたモノ、立っていた場所から五感以上のあらゆる感覚を通して我々が日常的に感じていた存在の分厚い質感や光沢、重さや匂いなど、つまりは圧倒的に高次元な情報の濃厚なスープが、突然PCのスクリーン経由の、すまし汁のような薄い情報に置き換えられてしまったのだから仕方がない。これまでのリアルが持っていた圧倒的な情報の多層性や構造をそのまま担保することを求めれば、今の情報技術にはそれを常時再現する力はない。


ところで、野老作品は本質的に情報である。その材料は幾何学という関係性であり明快なルールであり、そのあらゆる可能性の中から特殊な嗅覚によって恣意的に探り出された、マジカルな驚きを備えた特殊な情報の組み合わせである。野老作品をちょっと分析すればすぐにわかるが、いかに単純な幾何学的ルールであってもその組み合わせはすぐに天文学的な数となり、我々人間のちっぽけな脳などではその多様性を組み尽くすことなど到底不可能なオーダーがいたるところに現れる。野老朝雄というアーティストはその広大な宇宙の中から、どうしてか我々にも十分扱えるほどに単純な要素とルールの組み合わせを、同時にそのシンプルさからは想像もつかないような豊潤さをも同時に、ピンポイントに探り当てる(この探索能力については、本展示の関連書籍「Rhombus Connect」の解説文を参照されたい)。複雑な世界は一般にルールの機微や緊張感が見えない退屈なものになりがちだが、野老作品として抽出された特異点たる組み合わせは、カオスの淵よろしく予想外の「生命」性を宿し始める。オリンピックのロゴで有名になった「組市松紋」の背景タイリングパターンもまた、そうした可能性の可視化に成功した稀有な例である。組市松紋は、「動く」。


すなわち野老作品の本質は、動的な世界にこそあると言っていい。パネルが、タイルが、新しいバランスを求めてうごめき出し、あらゆる可能性の探索を始める時、仮にそれがたった60枚のタイルだとしても、われわれはそこに無限の宇宙を感じることができる。それは数学という言語の視覚化であり、生命性の発露であり、究極的には意思や想いといったよりウェットな形質が生まれる培養スープでもある。素材感や質感にまでこだわった物質的な表現媒体を持つ野老作品ももちろん魅力的だが、どんなに静的な作品でも、野老作品には常にインタラクティブなデジタル表現、特に没入的な環境でこそ体現され得る質がある。ただ、野老作品が「アート」である所以は、物質性と情報性の対置にはとどまらない。情報性をもふたたびすり抜けて、この動きを手触り感のあるタイルでつくってみたい、量感やぶつかりあう音も感じてみたいという「生な」感覚を再度誘発し、否応なくモノ性と情報性を双方向にミックスしてしまう。


今回noizでは、オリンピックロゴにも使われる組市松紋の完成型のルールをあえて崩すことで、「完全ではない」状態、完全な状態を自律的に「探索している」動的な過程として、個々の要素がゆがんだり、離れたり、震えたりしているタイリング群を没入型の空間として視覚化している。ルールは単純だがその挙動は驚くほどに有機的で、ある瞬間には原初の生命のような、ある瞬間には系の破れが無限遠に信号を伝えるConwayのGame of Lifeような、さまざまな予想外の表情を見せる。あえて完成型ではないトコロパターンの「もがき」を見せることで、さらにはそこにシンクロした音や動きというニュアンスも付加することで、完成型の間、物性と情報性の間に存在する無限の可能性を、少しでも体験できるようにした。



*8月8日(土)より公開します。

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紋様制作 野老 朝雄
監修 noiz
プログラミング 白木 良
音楽 原 摩利彦
WEB / UI 池田 航成
企画制作 株式会社LIXIL

プロフィール

野老朝雄 Asao TOKOLO 

1969年、東京都生まれ。幼少時より建築を学び、大学卒業後、建築家/美術家の江頭慎に師事。2001年9月11日より「繋げる事」をテーマに紋様の制作を始め、美術、建築、デザインの境界領域で活動を続ける。単純な幾何学原理に基づいて定規やコンパスで再現可能な紋と紋様の制作をするほか、同様の原理を応用した立体物の設計/制作も行なっている。主な作品に、東京2020オリンピック・パラリンピックのエンブレムに採用された〈組市松紋〉、大手町パークビルディングのための屋外彫刻作品《TOWER OF CONNECT》、〈PPP TOKOLO PATTERN MAGNET〉などがある。

noiz

2007年に豊田啓介と蔡佳萱のパートナーシップとして設立。2016年より酒井康介を加えた3名パートナー体制で、東京と台北の二拠点からコンピューテーショナルな手法を駆使し、建築を軸にインスタレーションから都市まで幅広いジャンルで国際的に活動する建築・デザイン事務所。最新のデジタル技術を駆使した各種デザインや製作、システムの実装から教育、各種リサーチ& コンサルティング活動も積極的に展開している。

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