外国への渡航を船が一手に担っていた時代。海外の模倣から始まった日本の客船づくりは、大正後半から昭和初期には国の威信をかけたものとなり、造船技術の習得と開発が進んで、日本独自の設計へと大きく発展を遂げていきました。
本書では、日本のデザインの完成形をみることができる客船として、大阪商船(現・商船三井)の「あるぜんちな丸」と、東京湾汽船(現・東海汽船)の「橘丸」を中心に、当時、限られた人々のみが搭乗を許された優雅な空間や趣向を凝らしたおもてなしなどを紹介します。
■目次
□にっぽんの客船 タイムトリップ
ようこそ、あるぜんちな丸へ!
船のおもてなし
ようこそ、橘丸へ!
さまざまな航路
[鼎談]客船の時代──あるぜんちな丸への道程 野間恒×三浦昭男×志澤政勝
薄命の佳人・あるぜんちな丸 野間恒
□客船を彩った建築家たち
中村順平──船内装飾を牽引 志澤政勝
村野藤吾──自在なる創造
本野精吾──先駆者の軌跡 笠原一人
松田軍平──造形文化の証 丸山雅子
[インタビュー]クルーズ客船の設計 岡部憲明