雄大な琵琶湖をすっぽりと囲む滋賀県・湖国では、暮らしの折々で神への感謝と祈りを捧げてきました。なかでも年頭から春にかけて五穀豊穣と村の安全を願う「オコナイ」という行事は、神様と村人たちを強く結ぶ大切な儀礼であり、古くから受け継がれています。
本書では、独自性に富んだ「オコナイ」のありようを、その象徴となる神様へのお供え物と周辺の装飾や道具、人などに焦点をあて紹介。とくに、村人たちが中心となって祭りの準備から本祭、そして神様との饗宴の場である直会(なおらい)にいたるまで粛々と執り行われるドキュメントからは、現代の生活で薄れつつある、神と近しくし、礼儀を重んじ、自然と食に感謝する様がくっきりと浮かび上がってきます。湖国の風景に溶け込む村々の表情、色鮮やかで不思議なかたちの神饌などをページごとに多彩に展開します。
■目次
祭りの湖国 中島誠一
冠絶の祭礼 写真=杉原正樹
──川道神社/老杉神社/春日神社/日吉大社
オコナイ・祭礼のディテール
──神饌を知る/餅の意味/藁の仕事/受け継がれたかたち/オコナイの国/祈り
湖国の循環 上田洋平
心象絵図
近江のオコナイ解説 中島誠一
村々の神饌 原田信男