大正から昭和初期にかけて東洋一と謳われ、江戸時代からの遊廓の理想(数寄屋)と西洋型の都市の理想(モダニズム)とが不思議に合体した名古屋・中村遊廓。遊蕩空間に現れた都市の風俗としての建築意匠を、多数の調査写真と実測図面とともに紹介する。
■目次
第1章 消滅する桃源郷
名古屋駅近くの中村遊廓
様々なる意匠をまとう建物
第2章 近代都市・中村遊廓の誕生
突如出現した理想の街
モダン・デザイン定着の時代
第3章 遊蕩空間としての数寄屋
中庭採光のコート・ハウス型
数寄は好きであり、奇をてらうもの
「やまとごころ」と「からごころ」
数寄屋とエキゾティシズムの通底
第4章 イミテーション・エキゾティシズム
イスラム風からライト風まで
別世界としての「仮」のやど
第5章 風俗としてのモダニズム
アール・デコと数寄屋の同居
中村遊廓のモダニズムとは
歴史としての都市風俗の流行現象
おわりに