近代産業都市の成立が居住環境の悪化と公害問題をもたらすなか、美しい自然に恵まれた田園都市生活のイメージを可能にしたのは郊外私鉄道網であり、新聞・雑誌等のマスメディアであった。建築家・事業者と中産階級の人々がともに描いた「郊外住宅」の夢と現実。
■目次
第1章 都市の近代化と環境変化
淀川の水が飲料水
近代工場の林立と疫病
近代的公害問題の発生
第2章 郊外居住と山容水態
郊外私鉄沿線への誘い
水と緑と健康の宣伝
第3章 日本的田園都市論
「田園都市」という言葉の普及
内務省地方局有志(編)『田園都市』
第4章 住宅改良運動と郊外住宅運動
「住宅改良会」の設立
住宅改良運動の目指すもの
関西における「日本建築協会」の役割
「桜ヶ丘住宅改造博覧会」
第5章 郊外住宅の展開
郊外住宅の間取りと価格
下水施設と上水道
第6章 郊外住宅の理想と現実
谷崎潤一郎の転居
『細雪』の世界と田園都市
おわりに