ミュージアム日記 No.270
イスラームの装いをタイルから読み解く講演会を開催

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講演会風景
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講師の神田惟さん
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講演会風景
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多彩人物図タイル
イラン、17世紀、237×240×22㎜、INAXライブミュージアム蔵
左側の男性がヨーロッパからの商人と思われる。
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多彩人物図タイル
イラン、19世紀後半-20世紀、175×135×13㎜、INAXライブミュージアム蔵
斧を持つスーフィー
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講演会風景

INAXライブミュージアムでは、2023年2月11日、講演会 「~イスラームのタイルから読み解く~ 人々の装いとタイルの魅力」を開催しました。

この講演会は、4月11日まで開催中の企画展「Fashion On Tiles―あの時代、この国のおしゃれさん」の関連イベントで、講師には、同展でイスラームのファッションのセクションを監修していただいた東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 特任助教の神田惟さん(イスラーム美術史)をお迎えしました。

神田さんには、実物資料がほとんど残されていない時代のイスラームのファッションを、今日に残された絵画やタイル絵など豊富な図版を参照しながら、解説していただきました。

冒頭で、イスラームのタイルを起点に、その歴史や宗教的な背景が語られました。ファッションにおいては、長衣にブーツ、ターバンというスタイルは資料で確認できる13世紀ごろから何世紀にもわたって変わらなかったと解説。その中で、今展展示のタイルに描かれた装いから、17世紀のイランが生糸貿易の世界的拠点だった影響がうかがえる例を紹介されました。そこにはイランの衣服を身に着けながらも、ヨーロッパの帽子をかぶったヨーロッパからの商人が描かれています。

さらに印象深い例として、今展で展示の、小さな斧を持つ男を描いたタイルを示されました。19~20世紀のものです。彼らの職業が謎だったのですが、今回、同時代に撮影された写真から、共通項の斧の存在により、彼らがスーフィーと呼ばれる托鉢僧と判明したことが披露されました。

このように興味深いエピソード満載の講演会に、複数の参加者から、普段なかなか触れる機会のないイランの文化を知ることができたというコメントをいただきました。多くの参照事例をご用意され、楽しく、また知識欲が十二分に満たされた講演会となりました。

会場風景の撮影:河合秀尚