INAXライブミュージアム 世界のタイル博物館 INAX TILE MUSEUM

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技術と歴史展

第4回「土の質感が魅力の湿式無釉外装タイル」
2004年7月1日(木)〜2005年6月28日(火)

2004年はINAX創業80周年にあたりますが、創業年に竣工した大阪倶楽部には、INAXが制作した「タペストリータイル」とテラコッタが張られています。ピアノ線で一皮剥いだ現在のラフ面タイルに相当するもので、ざっくり土練した原料による斑点模様と波模様が特徴のタイルです。このほか帝国ホテルのスクラッチれんががもとで昭和初期に非常にはやったスクラッチタイルを初め、さまざまな湿式成形無釉タイルを、最新の建物写真とタイル現物で紹介します。


会期

2004年7月1日(木)〜2005年6月28日(火)

時間

10:00AM〜5:00PM(入館は4:30まで)

会場

世界のタイル博物館 1階 常設展示会室・企画展コーナー

休館日

毎週月曜日

2004tech_summary.jpgスクラッチタイル

明治時代に洋風建築が展開していく中で、東京の銀座では明治5年の大火の後、耐火構造建築として赤煉瓦建築が推奨され、東京府の主導でいわゆる銀座の赤煉瓦街ができました。そして赤煉瓦と帯状の石材を組み合わせた辰野式煉瓦建築が各地で造られました。その中でも最大傑作は東京駅で、大量の鉄骨を使った煉瓦建築となり、関東大震災にも耐えて残りました。一般的な煉瓦建築は、いわゆる煉瓦積だけで地震に弱く、震災後は鉄筋コンクリート造に建て変わっていきました。この外壁を被覆するのに薄い張付化粧煉瓦、すなわち外装タイルが登場しました。当初は煉瓦のイメージを引きずった赤煉瓦色の小口平タイルが使われました。乾式プレス成形されたきめの細かい肌合いが特徴で、赤色のほかに淡黄色もみられます。大阪市中央公会堂や名古屋の旧名古屋控訴院(現名古屋市市政資料館)などには乾式赤色小口平タイルが張られています。

その後、外壁タイルに大きな変化がもたらされる著名建築が登場しました。F・L・ライトの設計による帝国ホテル(大正12年竣工)です。この外壁には大谷石と常滑産の「スクラッチ煉瓦」が使われました。張付化粧煉瓦ではなく、煉瓦の表部分にスクラッチ(=引っ掻き)模様を刻んだ湿式成形の無釉煉瓦です。煉瓦積からタイル張りに変わる過渡期の建材ということができます。この帝国ホテルのスクラッチ煉瓦が引き金になって、その後官庁や大学、金融機関などに「スクラッチタイル」を張った建物が建造され、昭和3年から6年にかけてそのピークを迎えました。スクラッチタイルは、原料に含まれる鉄分などによる赤褐色から淡黄色の素地色を生かした無釉のタイルで、スクラッチ加工をするために湿式成形されます。スクラッチタイルはその特徴であるささくれだった多数の溝が表面に刻まれており、ワラビと呼ばれる土のささくれの大小やワラビの押さ込みの有無等により表情が変わってきます。また東京大学の建物に使われたスクラッチタイルでは、外装タイルとして初めて色合いのバラツキを積極的に認めた乱張りが採用され、色合いに深みのある外壁として評価されました。




大阪倶楽部



このほか、湿式成形を活かした新しいテキスチュアの外装タイルが登場します。「粗面タイル」は、乾式赤色タイルなどのきめの細かい表面との比較で命名されたものと思われますが、原料にシャモットや砂を混練して成形するので、焼成したあとはこれらの粗粒分がぽつぽつと表面に浮き出て粗い面になるのです。「タペストリータイル」は、成形するときに表面を太いピアノ線で一皮剥ぎます。原料にはシャモットのほか塊状の別色の原料が混練されており、ピアノ線で剥ぎ取った後が、祖粒分が押し込まれて窪んだり、波打ったような跡が付いたりして、それを並べた様子がつづら織のように見えることからタペストリーの名称がつきました。戦時中にタイル需用も激減して生産もストップしていましたが、昭和40〜50年代には名前を変えて復活しています。粗面タイルは「セミ面タイル」、タペストリータイルは「ラフ面タイル」となりました。このうちラフ面タイルは、使用するピアノ線を細くして粗粒分がピアノ線に押されるのではなくて、引っかかって短い筋を残すタイプに変わりました。湿式成形の無釉外装タイルは、土の質感と焼けのバラツキで生じる色幅が奏効して、一段と効果的なやきものらしさをまとい、戦前の装飾性豊かな建物の外壁材として一世を風靡ました。




旧大阪市立博物館



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