INAXライブミュージアム 世界のタイル博物館 INAX TILE MUSEUM

博物館概要
常設展
展覧会のご案内
企画展一覧
やきもの新感覚シリーズ一覧
展覧会一覧
研究レポート
タイル・れんがの豆知識

展覧会のご案内


企画展(1階 企画展示室:入場券必要)

【2001年】「谷内六郎のタイル絵 四季」
2001年11月3日(土)〜2002年1月31日(木)

心に甦る数々の幼い日の光景を描き続け、郷愁の画家といわれ、また、昭和31年に創刊された「週刊新潮」の表紙を25年間、毎号にわたり描きつづけ、多くのファンに親しまれた谷内六郎さんの貴重な作品を紹介します。本展では、谷内さんが広告企画会社の縁で、昭和38年から2年間、伊奈製陶(株)の社外向けPR誌「伊奈だより」の表紙用に制作した季節感あふれるテーマによるタイル絵を、谷内さんの執筆による短いエッセイをあわせてご紹介します。



会期

2001年11月3日(土)〜2002年1月31日(木)

時間

10:00AM〜5:00PM(入館は4:30まで)

会場

世界のタイル博物館 1階

休館日

毎週月曜日


2004sp_pos_tuchikabe.jpg

谷内さんは、昭和31年の『週刊新潮』創刊号から、昭和56年に亡くなるまで実に25年の長期にわたり、表紙絵の制作を続けられました。その特徴ある絵柄は多くの谷内六郎ファンをつくり、親しまれています。2001年は、谷内六郎さんの生誕80周年で、その作品を取り上げた展覧会が各地で開催されています。本展のメインとなるタイル絵は、水彩画をはじめ、油彩画、陶板画、はり絵、モザイク壁画、ろうけつ染など多彩な作品を手がけた谷内さんの作品の中でも、非常に珍しい貴重な作品です。谷内さんによるタイル絵は、今から約40年前の1963年(昭和38年)に、伊奈製陶株式会社(現INAX)が当時、社外向けのPR誌『伊奈だより』の表紙絵の原画として、谷内六郎さんに依頼して実現したものです。1963年8月号から1965年7月号まで2年間24冊分の表紙を、当時の人気画家、谷内六郎の郷愁画が飾ったのです。タイル絵は、谷内さんの自宅で、伊奈製陶から送られてくる最新のタイルを使ってつくられました。ホームタイルと呼ばれた厚さ3mmほどの薄いタイルも使われています。このタイルは、カットしてモザイク状のタイル絵を楽しむのには適していますが、製作中に割れてしまうことがあったのでしょう、作品の外周に張られたこの薄手のタイルの割れ防止のために、小さな厚手のモザイクを補強のために張り込んだところもあり、ご苦労された跡が伺えます。

「谷内六郎のタイル絵」展示


谷内さんのタイル絵には、タイルの他に、厚紙、ベニヤ板、Pタイル(プラスティック薄板)も使われています。タイルも例外ではありませんが、表現したい色が素材にない場合には、絵の具が表面に塗られています。谷内さんのタイル絵は、一般的なタイルによる壁画のように平面的ではなく、背景に見立てたタイルに主題を重ね張りし、タイルが自由自在に使われているところが特徴です。最後の作品「七月の埠頭」は、岸壁に波しぶきが砕ける様子を、厚さが最大30mmに及ぶタイルの重ね張りで大胆に表現された大きな凹凸のある作品となり、係りの人が撮影所に運ぶのが大変と、ご自身も心配されたそうです。 それぞれの作品には、谷内さんの短いエッセイが添えられており、そこには、幼い日の経験、社会批判、珍しい民俗の紹介、詩などが、織り込まれていて、作品を、そして谷内さん自身を理解するのに良い手がかりとなります。

「谷内六郎のタイル絵」展示


また、作品には花火の音、波の音、風の音、虫の音、雑踏の騒音、雪景色の無音など、音を感じる絵も多く、それらは私たちの中の幼い頃の記憶を鮮明に蘇えらせてくれます。エッセイに綴られた谷内さんの素直な、素朴な表現も、その共感をストレートに呼び起こしてくれます。こうしたことが、目の前のタイル絵に、よりいっそうの親しみを感じさせてくれます。なお、「花火」と「鳥追いまつり」の2作品は、非常に残念ですが、現存しません。(印刷物は現存)

徳島市にできた陶板画の美術館に展示されている陶板画は、これから先2000年経っても現在の色をそのまま保ちつづけるそうです。そして現存する大家の油絵作品は、その頃には朽ち果てているかもしれない、というわけです。ハイテク技術により陶板画が半永久的に残るというのは素晴らしい再現の技術だと思います。しかし、本物の作品が時のいたずらで少しずつ姿を変えていくのも、潔くて、堂々としていて偉大だと思います。もちろんどんな絵画でも完成した瞬間が、最高であることは万人が認めるところです。

谷内さんのタイル絵は、40年近くの長い年月を経て私たちの目の前に現れました。絵の具の分離による変色、タイルの汚れ、接着部分の剥落、素材の反りなど、時のいたずらに当惑を禁じ得ませんでした。そのなかで、「美術品の修復・再現」という言葉が頭の中にちらついて離れませんでした。しかし本物の有るべき姿を自問するとき、このタイル絵を鑑賞する人は、作品そのものと、過ぎた時の流れと、制作している在りし日の谷内六郎さんを同時に見ているのだと気付きました。それが可能なのは、修復品やレプリカでなく本物だからこそだと思います。そして「印刷物の原画だから」と鑑賞者に言い訳をしたくてならなかったことを恥じ入った次第です。

ページの先頭へ

LIXIL Link to Good Living

Copyright © LIXIL Corporation. All rights reserved.