INAXライブミュージアム 世界のタイル博物館 INAX TILE MUSEUM

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企画展(1階 企画展示室:入場券必要)

【2004年】「土壁礼讃」−小林澄夫のまなざし−
2004年11月6日(土)〜2005年1月30日(月)

自然素材の土に造詣が深く、自ら左官業界の業界誌の編集長を勤める傍ら、国内外の土壁や土塀などを巡ってきた小林澄夫氏のまなざしで見た大和路を、寺社や野辺の土壁等を写真とエッセイで構成し紀行風に紹介します。ほかに全国から魅力に満ちた土壁や土塀の写真や模型などをとおして土の魅力を紹介します。



会期

2004年11月6日(土)〜2005年1月30日(月)

時間

10:00AM〜5:00PM(入館は4:30まで)

会場

世界のタイル博物館 1階

休館日

毎週月曜日


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現在、私たちの身の回りを見渡すと、ガラス、コンクリート、タイル、アルミサッシなどの近代的で人工的な建材が目に飛び込んできます。一度出来上ると半永久的にその形を保ち続ける、そんな堅牢な建材に囲まれて私たちは住の安全を手に入れているのかもしれません。その一方で、土や木などの自然素材を見かけることが少なくなってきました。日本の建築は、かつてこのような自然素材を用い、時間とともに朽ちて再び自然に帰っていき、そしてまた再生するという自然のサイクルを大切にしてきました。

ところが、現在では千数百年もの長い間、自然のサイクルの中で守り続けられてきた土塀や土壁が、耐久性に優れたコンクリートの下地に土を塗ったものに変わったり、逆に何の補修も施されずに朽ちていくままに放置されたりしているものも数多く見受けられます。建物はその周辺にある素材を用いてつくっていくという、日本のどこにでも見られた建築スタイルが工業化によって一変し、その伝統的な技法で仕上げる左官職人も減少しています。




「土壁礼賛」展示


左官の仕事や土壁・土塀などに造詣が深く、長年にわたりそれらを国の内外に取材してきた小林澄夫氏の案内で、私たちは、土塀や土蔵、土壁が残る奈良大和路を訪れました。土塀は、おもに寺院の境内にあるものを、また土壁は山の辺の道の周辺の集落に点在するものを見てまわりました。このうち奈良にある寺院については、1998年12月に、東大寺・興福寺・春日大社・春日山原始林・元興寺・平城宮跡・薬師寺・唐招提寺の8遺産群が、ユネスコの世界遺産に登録されました。1993年日本初の登録となった法隆寺についで奈良で2件目、日本で9件目となります。これらの寺院は、今後大切な世界遺産として維持管理がこれまで以上に厳しくされていくと思われますが、私たちが訪れた東大寺や唐招提寺、法隆寺とその周辺には風化が進んで崩れかかった土塀が幾つもありました。今回、東大寺で見た中では、練り壁と呼ばれる古瓦と粘土を交互に積んで、最後に小さな瓦屋根を掛けた土塀が多いのですが、使われた粘土の塊の形に小林氏は注目しています。たまたま新旧の壁がつながるところがあり、古いものでは粘土の形はいびつで、水平を狙った挟みこみの瓦も微妙に上下してリズム感が感じられる、そのリズムは信徒たちがよろこんで土塀作りをしているその気持ちが現れているのだといいます。一方、新しい壁は、型抜きした粘土塊と真一文字に並んだ古瓦が目に飛び込んできますが、無味乾燥です。




法隆寺の土塀


土壁は、山の辺の道の柿畑やみかん畑に作られた小屋に見ることができました。農作業小屋として、畑にある土とわらをこねて壁をつくっていくのです。作っている物によって小屋の形態は変わってくるそうです。自然素材を使い、機能性も兼ね備えた土壁の小屋に魅力が感じられます。自然素材の土を使った土塀や土壁は、未完成でも、風雨にさらされて下地が見えたり砂利が現れたりしても、完成品の整った美しさとは別の、本来の土の美しさが感じられるのが、大きな魅力だと、小林さんは言います。本展では、小林氏のまなざしをとおしてこれらの遺構に対する思いを伝えていくことにしました。この土の温もりのある土壁や土塀の魅力を後世に伝え、再び現在の生活の中に取り込んでいく価値があるのではないかと思います。少しでも多く土の魅力を再発見できることを祈念いたします。




山の辺の道の小屋


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