INAXライブミュージアム


ライブミュージアム日記

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2009年以前の記事は、ライブミュージアムでの日々の出来事やスタッフの想いを綴ったものです。

2006年9月以前の記事は、土・どろんこ館開設準備室による「どろんこ広場」として書かれたものです。


独自企画や地域との連携で、コンサートや講演会、ワークショップなど、さまざまなイベントを開催しているミュージアム。ライブ感あふれる活動をスタッフがご案内・ご報告します。

No.128 開催中の企画展「19世紀の幸せなものづくり」に寄せて

2010/11/25

担当 竹多

現在、INAXライブミュージアムでは、企画展「19世紀の幸せなものづくり〜ウィリアムド・モーガンがタイルに残したメッセージ」を開催中です。19世紀のイギリスでは、ミントンやウェッジウッド、クラーベン・ダニルなど大手メーカーの機械による大量生産が主流でしたが、その一方で、このような室内装飾のためのタイルを手づくり&手描きで制作する人たちが登場しました。アーツアンドクラフツ運動を推進したウィリアム・モリスやウィリアム・ド・モーガンがその代表です。作り手にはもの作りの楽しみと喜びを、使い手には手づくり&手描きの逸品タイルを使える楽しみと喜びを与えてくれるものとして、手づくりのタイルが制作されました。



第一会場の入口。左手がド・モーガン財団から借用しているド・モーガンのタイルの展示。





ド・モーガンの手づくりタイルを6枚並べた状態。


モリスを知っている人は多いと思います。壁紙やカーテンなどのインテリアに今でも人気のヤナギやスイカズラ、アカンサスなどの模様などをあしらったものが作られています。しかし、ド・モーガンは残念ながら知名度は低いです。ド・モーガンはモリスより5,6歳年下で、ド・モーガンが陶器やタイルを作り始めた初めの頃は、モリスと一緒に仕事をしていたのです。ド・モーガンの初期の作風にはモリスの影響が色濃く出ています。もともと画家を志していたのですが、絵の具や筆で表現する以外にやきもので表現することができると考えて転向していったのです。芸術家であるほかに、化学や機械にも強く、やきもの制作に欠かせない釉薬や素地の調合を決める実験をしたり、窯やそのほか必要な道具や機械を自ら設計しています。甲高い声で話すことが多かったことからマウスというあだ名が付いていたようですが、風貌も親しみ深く、丸い目は少年のような好奇心に富んだ輝きを持っています。製作者の肖像写真があると俄然その人の名前や作品に触れたとき親近感を覚えます。そんな意味でド・モーガンの肖像画も会場で是非見てください。



モリスのデザインがあしらわれたファブリック製品。第一会場のコージー・コーナーのソファにあります。


ここで、このたびの展覧会の取って置きの見方をご紹介しましょう。展覧会を見に行って、監視員の目を盗んで何度も会場の中を行ったりきたりするのが私の常ですが、今回の展示も是非そんな鑑賞の仕方でご覧になることをお勧めします。19世紀の中産階級の人々の間でタイル使いが普及し、中でも上層の中産階級といわれる人たちは、住宅の中にド・モーガン作品のような高価なタイルを使っていたといわれます。その実際の施工例は、これまでの常設展では見ることができませんでしたが、今回は、痒いところに手が届く感じで、来場された皆さんにタイルを使ったさまざまなタイプの邸宅をご紹介することができます。第一会場(土・どろんこ館企画展示室)に入ったら逆まわりできませんが、矢印のとおりにタイルの個別展示のコーナーを足早に進み、まずド・モーガンのタイルを使った部屋の再現コーナーを見てください。青のタイルとルビー・ラスターのタイルを張った当時の部屋を再現しています。また、パネルには写真で実在の建物を紹介しています。都会に出て事業に成功した中産階級の人たちがさらに上の階級の貴族たちの生活にあこがれて、郊外や田園地方に大邸宅を建て、当時の最先端の文化を享受しようとした情熱が感じられます。第二会場(世界のタイル博物館企画展示室)では現存するパブのインテリアを写真と現物で紹介しています。



レイトンハウスの青のタイルを再現したコーナー。ものづくり工房で制作しました。





ド・モーガンのタイルを使った邸宅の施工例4点を写真パネルにて紹介。





ロンドン郊外にあるパブのインテリア。壁上部にド・モーガンの組絵タイルが張られている。


当時のタイルがどのように使われていたのかを理解したら、次はものづくりの見学です。ビデオが上映されています。ものづくり工房でルビー・ラスターを再現したときの記録映像です。ものが出来上がっていく過程を興味深く見ていただけると思います。是非ご覧下さい。パネル解説では、ド・モーガンが描いた多彩色の窯の設計図や、タイルや壷皿などに使われた下絵(ドローイング)にも注目してください。



ものづくり工房でのド・モーガンタイルの再現過程を上映中。





ものづくり工房で再現したルビーラスターのタイルの実物を展示。光に反射してメタリックの輝きを放っている。


そのあと、いよいよ、ド・モーガンの本物のタイルをじっくり見ていきましょう。骨太な描画と濃厚な色づけという印象があります。釉薬が波打つように厚く掛かっていて一品の工芸品を見ているようです。ド・モーガンは暖炉の両脇に使うタイルなど左右対称で張られることを想定して左右対称の図柄を多く制作しています。これは原画から輪郭を写し取るときに、原画を裏向けにガラス板の上に置いて透かせば、簡単に左右対称の輪郭を写し取ることができます。もうひとつ面白いのはグロテスク文様です。植物が描かれているかと思って良く観察すると、その中に鳥や肴、獣などが描き込んであります。羽根が葉に化けていたり、草の茂みの中に動物がカモフラージュされて描かれていたりします。16世紀頃から流行っていたグロテスク文様ですが、ド・モーガンは友達と競い合ってこのグロテスク文様を創作していたようです。



主だった作品には小解説が付いています。入口に備付のカードをお持ち下さい。グロテスク文様を探してみるのも楽しいです。


≪ギャラリートーク≫
INAXライブミュージアムでは、会期中(2011年3月14日まで)数回にわたりギャラリートークを開催しています。入館券をもって自由に参加下さい。
今後の予定; 11月27日(土)、1月22日(土)、2月26日(土) 
時間はいずれも14:30〜。土・どろんこ館受付にお集まりください。

≪ミュージアムショップ≫
企画展にあわせて、ミュージアムショップでは、ウィリアム・ド・モーガンやウィリアム・モリスのデザインのグッズを販売しています。是非ご利用下さい。






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