建築とデザインとその周辺をめぐる巡回企画展


展示内容

夢みる家具−森谷延雄の世界− 展

大正の若き家具デザイナー・森谷延雄の創造世界を会場写真からご案内します。
夢みる家具−森谷延雄の世界−世界-

会場写真:INAXギャラリー1 (東京)



森谷の代表作といえば、「ねむり姫の寝室」「鳥の書斎」「朱の食堂」と題した三つの部屋です。これらは1925年に開催された「国民美術協会第11回展覧会に「家具を主とせる食堂書斎及寝室」として出品されました。まずはこれら詩情溢れる三部屋を森谷自身の言葉とともにご紹介します。
■ 「ねむり姫の寝室」


『(―――中略―――)この絵がファイヤプレースの上に掛けられて、家具は皆象牙色で、彫刻の周囲はその古びた色で隈取りされてあります。金色の星と月が小さいハイライトを作っております。
床の色は朱色天井は薄い紫で、壁の掛裂は黄味の這入ったローズ色のスポンジクロス、壁は其の色と天井の紫との中間の色でずっと薄いものを選びました。天井の寝台に近い処は一段と濃い紫でボカシてあって其の中から金色の小さい星が見える。
マドンナの頭に頂く背光が、細い針金を金色に塗って、寝台の頭部の上高く半円形に壁から細い光線を投げておるのであります。床はパインナップルのようなステンシル模様、それはお伽噺の王様が王座で持っておるもののようなグローブを想わせるものです。
飾り壺に花を盛った其の花がお盆を支えておる気持から来た小卓子は、半円形の筆返しの中央に、寝る前にルビーの付いた指環を入れる為に――お姫様の為に――用意された小箱があります。 花の雄しべのみを見せた飾りをもつ支柱と、グスベリの果を其のままの可愛らしい電燈が、麻の葉の模様をつけた紙のシェードを透して静かな光を送っておるので御座います。(以下略)』


『小さき室内美術』より
(旧漢字・旧仮名は、新漢字・新仮名に改めました。


夢みる家具−森谷延雄の世界−世界-

写真/「ねむり姫」 佐倉市立美術館蔵

■ 「鳥の書斎」


オスカー・ワイルドの著、ピクチャー・オブ・ドリアングレーのはじめの方に、私の学生時代でした。『紙張りの障子にのどかな日の光をゆるがせて、斜めに鳥影が飛ぶ景色、それは日本画のようだ』と云う言葉を非常に愛した、心持。
学問は得ようとしても中々得られないものだが、もし一度でも良いからこの鳥影のように窓から書斎に紙障子を越して這入って来てもらったらと云う気持。
長押の枝に鳥が学問の木の実を背って止まっております。
お人形を入れた小さい赤い背色を持った箱、金地に朱をエメラルドと白で画いた模様を持つ扉が、日本色紙と錦絵を想わせております。
チークの木理を矢筈にベニアードした甲板、抽出しの前板、側板を持つ机、ジャパニーズ・チッペンデールを気取って見る仮りの心持。
唐木細工からの影響を受けておると見られても差支えありません。
手元本箱の筆返しや抽出しは、矢張り日本人の仕事だと御覧下されば幸甚。
(以下略)


『小さき室内美術』より
(旧漢字・旧仮名は、新漢字・新仮名に改めました。


夢みる家具−森谷延雄の世界−世界-

写真/「鳥の書斎」 佐倉市立美術館蔵

■ 「朱の食堂」


いつでしたか覚えません、多分今年のお正月でしたでしょう、『もし三々九度の盃を載せるあの朱色の台で食事を執ったら一体どんな気持がするだろうか』と云う遊戯心、小さい歌の気持でそう云う食事室を作って見度く成ったのです。
支那にある朱塗の家具を想い浮かべながら、それに金と象牙色の蒔絵を引き合せて、ただ其の家具を入れる為の室を造ろうと云う簡単な気持で、単にそれだけで設計を致したのです。
三つ重ねの玉盃の気持を其のサイドボードにものぼせて、軽い英国十八世紀初葉の田舎風の椅子に朱を塗って、どう東洋の気分が出るかとの好奇心、少し調子を破ったかとも思われる拡張卓子と将棋台も、取りとめない内に出来上がってしまいました。
たとえ取りとめないとは云うものの、其の設計を致した五月八日の詩で御座います。
(以下略)


『小さき室内美術』より
(旧漢字・旧仮名は、新漢字・新仮名に改めました。


夢みる家具−森谷延雄の世界−世界-

写真/「朱の食堂」 松戸市教育委員会蔵



森谷は、このようなメルヘンな家具づくりとは一変してシンプルなデザインもつくってきました。その大きな理由のひとつが、洋家具の中流家庭への普及です。彼はそのために「木のめ舎」という家具製造工房を立ち上げました。


夢みる家具−森谷延雄の世界−世界-

写真/「木のめ舎」の作品 すべて個人蔵



これは、日本工芸美術会が開催した第1回展覧会(1926)に出品された作品です。机のほうはオリジナルで、香川県坂出市にある「四谷シモン人形館 淡翁荘」で四谷シモンの人形とともに展示されています。つい数年前まではちょっと変わった机として存在したのですが、2008年1月、佐倉市立美術館学芸員の本橋氏によってそれが森谷の作品であることが見出されました。さらに、この机とセットで日本工芸美術会に出品された椅子が、今回の展覧会直前に復元されました。唯一の手がかりはセットで写っている写真と実際の机のみです。それらの情報をもとに本橋氏がスケッチを描き、同じく香川県にあるジョージ・ナカシマの作品を製作・コレクションしていることで有名な桜製作所が製作を担当されました。結果、見事な椅子が誕生し、幸運にも机とあわせて本展にお借りすることができました。椅子については本邦初公開の作品です。そして、ともに森谷の傑作といえる作品です。


夢みる家具−森谷延雄の世界−世界-

写真/「洋風書見木具と椅子」
2点とも(財)鎌田共済会蔵



その他、今回の見どころは、家具の実測スケッチです。森谷は欧米へ留学に、とくに長く滞在したイギリスで、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館やサウスケンジントン美術館へ足繁く通い、家具の実測スケッチを描きました。膨大な数を描いていますが、今回はその中から36点をご覧いただきます。











森谷は家具ばかりでなく、かれの執筆物の装丁まで手がけています。多彩な才能を是非会場でご覧ください。


夢みる家具−森谷延雄の世界−世界-

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写真/2点とも個人蔵

■ 関連リンク
佐倉市立美術館
http://www.city.sakura.lg.jp/museum/
桜製作所
http://www.sakurashop.co.jp/
松戸市デジタル美術館
http://www.city.matsudo.chiba.jp/index/kurashi/kyouiku_sports/dezitarubizyutu_top.html/
「四谷シモン人形館 淡翁荘」
http://www.kamada.co.jp/simon/simon.html
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