建築とデザインとその周辺をめぐる巡回企画展



展覧会案内

薬草の博物誌 -森野旧薬園と江戸の植物図譜-展<br>Museum of Medicinal Herbs

薬草の博物誌 -森野旧薬園と江戸の植物図譜-展
Museum of Medicinal Herbs

薬草を主とした本草学が中国から渡来し盛んになった江戸時代。それは近代に向かって博物学へと発展していきました。本展では、江戸時代から続く森野旧薬園と当時描かれた薬草を中心とした植物図譜を通して、幅広い本草の世界へとその魅力を紹介します。

Museum of Medicinal Herbs:
Morino-Kyuyakuen Garden and Illustrated Plants in the Edo Period


Osaka: 4 December,2015-16 February,2016
Tokyo: 3 March-21 May,2016

Kampo (herbal medicine) is a familiar part of everyday life in Japan. Its roots are found in the honzo-gaku (herbology) that developed in the Edo period (1603-1868). In late Edo, herbs used in medicines became so precious that the Shogunate adopted a policy of domestic cultivation. As evidenced by the many herbals and illustrated plants published at the time, interest among people in medicinal herbs was strong. It was also in this period that research expanded from medicinal herbs to plants in general and that public interest in plants grew.
Around this time, a man deeply knowledgeable about medicinal herbs appeared—the Morino family’s first generation Tosuke, Tosuke Michisada (pseudonym: Saikaku). Saikaku, who also worked on behalf of the Shogunate’s domestic cultivation policy, opened Japan’s oldest extant private herbal garden, “Morino-Kyuyakuen Garden” (Uda, Nara prefecture). In his late years, he completed the Matsuyama-honzo (“Matsuyama Herbal”) containing some 1,000 brightly colored illustrations of plants depicted with a botanist’s eye for detail. Saikaku’s wisdom of learning from the past to build for the future still lives today in this herbal garden.
This exhibition, while keeping a focus on “medicinal herbs,” looks at Morino-Kyuyakuen Garden which faithfully carries on Saikaku’s thinking. Displayed, along with photographs and film, are about 90 important botanical illustrations created in the Edo period and in the subsequent era when herbology was reborn as modern botany. We hope that, through these items, viewers will feel the passionate interest that people long ago held in plants and medicinal herbs.

大阪・東京プレスリリースpdf_icon_s.gif PDF 460KB ※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

ギャラリー1(東京): 2016年3月3日(木)〜5月21日(土)
□Closed:水曜日/Wednesday
□AM10:00〜PM6:00
□入場無料/Free
ギャラリー大阪: 2015年12月4日(金)〜2016年2月16日(火)
□Closed:水曜日/Wednesday
□AM10:00〜PM5:00
□入場無料/Free


展示品 リスト BOOKLET
講演 会「森野旧薬園至宝『松山本草』の世界 -薬草栽培の叡智-」(大阪)
講演 会「森野旧薬園至宝『松山本草』の世界 -薬草栽培の叡智-」(東京)
展示会概要
薬草の博物誌

60歳で家督を息子に譲り、隠居した賽郭が薬草研究に没頭して過ごした桃岳庵。、その集大成として『松山本草』全10巻を著した。
撮影=白石ちえこ

薬草の博物誌

右:「オタネニンジン」
生薬名「人参(ニンジン)」中国東北部、朝鮮半島原産の多年草。

左:「トチバニンジン」
生薬名「竹節人参(チクセツニンジン)」日本特産。北海道、本州、四国、九州の山地に自生する。
『松山本草』(森野賽郭著)より。
画像提供=橋京子、森野旧薬園

薬草の博物誌

シャクヤク Paeonia lactiflora
ボタン科。根は生薬の「芍薬(シャクヤク)」平滑筋弛緩作用があり、「芍薬甘草湯」などの漢方薬に配合する。
『本草図譜』(岩崎灌園著、1830〜44年の刊に彩色を加えて発刊した大正版)より。
*東京会場では同図譜の別頁が展示されます。

薬草の博物誌

「ツキヌキソウ」
『新訂草木図説』(飯沼慾斎、1875年刊)より。
牧野富太郎が愛読書であったこの図譜に部分図を貼ったり、書き込みを加えたりしたもの。その後、大幅に増補した『増訂草木図説』(1907〜1913年)を刊行。
*東京会場では同図譜の別頁が展示されます。




特記のないものすべて所蔵:高知県立牧野植物園 撮影:佐治康生
*画像をご使用の方はLIXILギャラリーまでお問合せ下さい。


精緻な観察で描かれた植物の姿
280余年経た薬草園に、面影をみる




私たちにも馴染み深い漢方薬。その元になっているのが江戸時代に発展した本草学です。江戸後期には原料の一種である薬草は幕府により国産化政策がとられるほど貴重なものでした。当時人々の関心も高く、それを裏付けるように多くの本草書や図譜が出版されました。そして薬草から植物全般へと研究、または興味の範囲が広がっていくのもこの時代です。
そのころ薬草への造詣が深い人物として現れたのが森野初代藤助(とうすけ)通貞(みちさだ)(号:賽郭(さいかく))です。先の幕府の政策にも尽力した賽郭は現存する日本最古の私設薬草園「森野旧薬園」を開設します。晩年には約千種の動植物の姿を、自然科学的な観察眼で色鮮やかに描いた『松山本草』を完成させました。この薬草園には今も薬草に関わる温故知新の知恵が息づいています。
森野旧薬園の存在をきっかけとする本展は、「薬草」に焦点を当てながら、賽郭の意思を忠実に受け継ぐ森野旧薬園を紹介するとともに、江戸の初期から後期、そして本草学が近代植物学へ移行する時期までに描かれた主要な植物図譜の変遷を、約90点の実資料の他、写真、映像などで展観します。それらを通して、当時の人々が薬草を含む植物に注いだ熱い眼差しを感じ取っていただければ幸いです。

見どころ

森野旧薬園と『松山本草』
葛や薬草の町、宇陀市大宇陀(奈良)にある「森野旧薬園」は代々葛粉を製造する森野家10代当主の森野賽郭(1690〜1767)によって享保14年(1729)に開園。約300坪の薬園には今も250種ほどの薬草や観賞用植物が生い茂り、同園顧問の森野Z子(てるこ)さんと平成の賽郭こと原野悦良(えつろう)さんにより江戸時代からの栽培方法で育てられています。
まず薬園の様子と、森野さん、原野さんのインタビューを写真や映像でご覧いただきます。そして森野家に門外不出の家宝として残されていた賽郭の大作、全10巻の『松山本草』から、近年その調査を行った大阪大学によって写真に収められた約10点の図譜の写真とその薬草が元になっている生薬見本を、『松山本草』のレプリカと共に展示します。さらに、全1003種の図譜をiPadより画像データでご覧いただきます。ここでは、漢方薬の原料の多くを輸入に頼る日本で、賽郭が残してくれた貴重な薬園の存在に着目します。
 
<江戸の植物図譜>
日本の本草学の歴史は、江戸時代に『本草綱目』が中国から渡来したときから始まります。その和刻本(1637年刊)からはじまり、江戸末期に至るまでに描かれた植物図譜(11種の和綴じ本より)と植物図約70点をご覧いただく予定です。それらからは徐々に科学と芸術性が高められていく様が読み取れます。なかでもシーボルトが称賛した『花彙(かい)』、薬用部も描かれた日本で最初の植物図鑑『本草図譜』(岩崎灌園著、1830〜44年刊の大正版)、日本初の科学的植物図鑑『草木図説』(飯沼慾斎著、1856年刊)は当時を代表する植物図です。それぞれの手法を用い、大胆な構図で描かれた図譜は今でも目を見張ります。

<本草学から近代植物学へ>
江戸時代の本草学は、近代に入って系統的な植物学へと発展します。その架け橋となった植物学者・牧野富太郎を紹介します。本草学を多く学んだ牧野はそれを源流とし、あらたな日本の植物学を確立しました。さらに、緻密な観察眼と抜群の描写力によって多くの植物図を残しました。それらは、植物の種類の全体像を描く「牧野式」植物図と呼ばれます。 ここでは牧野富太郎が『草木図説』に書き込みなどを施した原本と、牧野式植物図の原図と図版4点をご覧いただきます。

展示にあたり、関係の皆様には多大なるご協力を賜りました。この場をかりて厚くお礼申し上げます。



[企 画]
LIXILギャラリー
[制 作]
株式会社LIXIL
[協 力]
大阪大学総合学術博物館、高知県立牧野植物園、(株)栃本天海堂、森野旧薬園

BOOKLET
薬草の博物誌-森野旧薬園と江戸の植物図譜
『薬草の博物誌-森野旧薬園と江戸の植物図譜』

2015年12月15日発売
定価:1800円(税別)  LIXIL出版
会場風景
薬草の博物誌
薬草の博物誌

薬草の博物誌

2015年 大阪会場写真





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