女性向け週刊誌『The Girl's Own Paper』 創刊号(1880年1月1日) 所蔵:個人
部屋の間仕切りに利用されたピアノは、背面にドレープを寄せた布を掛けて飾った。 『CASSELL'S FAMILY MAGAZINE』1889年より 所蔵:個人 上記2点複写撮影:佐治康生
暖炉の両脇に使われた組タイル。色違いの花を描いた5枚組。 所蔵:常滑市 管理・写真提供:INAXライブミュージアム
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The home is beautiful
インテリアの宝石箱
産業革命により繁栄を謳歌した英国・ヴィクトリア時代(1837〜1901)。工業化、都市化、交通手段の発達などを背景に職住分離が進んだことから、台頭してきた中産階級による自邸への関心が高まり、そこに独自の表現が求められるようになりました。華やかな色彩のタイルで装飾した暖炉、その上には大きな鏡や様々な置物、異国趣味の日本の団扇などが飾られ、窓はステンドグラスやたっぷりとしたドレープで彩られる・・・。彼らの住まいは過剰な装飾とも形容されますが、不思議な心地よさを醸し出す空間でもありました。その室内装飾を担ったのは主に女性たちです。彼女たちがインテリアに求めたのは“くつろぎ”を表す「コンフォート」や「アットホーム」でした。そのための指南書も相次いで出版され、それらをヒントに女性たちは独自の室内デザインを構想し、センスを磨いていきました。
会場では、ヴィクトリアン・インテリアの典型例を示す写真パネルをはじめ、1886年作のドールズハウス、また「アットホーム」のシンボルとなった暖炉まわりの再現空間ほか、指南書の雑誌類やその時代の室内が描かれた絵本、また装飾材の主要アイテムであったタイルなども豊富に展示します。これらの資料から、当時の室内装飾の特長と、人々が夢に描いた「コンフォート」や「アットホーム」の有りようを身近に感じとっていただければと思います。
見どころ
@Linley Sambourne House/サンボーン邸
ロンドン中心部にあるヴィクトリア時代の中産階級のインテリアをそのまま残した家。住人は絵入り週刊誌『パンチ』で活躍した風刺画家、リンリー・サンボーン。美的センスに長けたサンボーンの室内装飾を解説つきの写真パネルで紹介します。過剰な装飾、モノの氾濫と形容されるヴィクトリアン・インテリアの典型例を写真パネルでご覧いただきます。
Aドールズハウス 「アイビー・ロッジ」
このドールズハウスは、かつて英米の二大プライベート・コレクションのひとつ、イギリスのヴィヴィアン・グリーン・コレクションで収蔵されていたものです。1886年作で、ロンドン北部のオックスフォード地方に典型的に見られる住居の意匠を伝えます。
Bヴィクトリアン・インテリアの再現空間
「アットホーム」のシンボルであった暖炉まわりの再現空間です。装飾材としてよく使用された彩のある組みタイルが施された暖炉や部屋を明るくするための大きなミラー、また、持ち運びやすい軽いつくりの家具が流行したことで作られた背もたれの丸いバルーン・チェアや小ぶりなティーテーブル、そして、この時代の室内装飾に多大な変革をもたらしたウィリアム・モリスのデザインによる壁紙やカーテン(現在生産のもの)を展示します。ヴィクトリアン・インテリアの特徴を表すアイテムで構成された空間をお楽しみください。
C当時の雑誌や絵本からみる室内装飾
この時代に急増した室内装飾の指南書『The Book of The Home』 やそれに類する雑誌『The Girl’s Own Paper』や『CASSELL’S FAMILY MAGAZINE』の合冊本を展示。暖炉ほかコージーコーナー(「暖炉脇のくつろぎ場所」の意。)や家具、またドレープなどの挿絵が描かれ、当時の女性たちがこぞってそれらからヒントを得ていたことが想像されます。また当時の室内装飾の様子がうかがえる絵本『At Home Again』や『Baby’s Bouquet』(ウォルター・クレイン画)なども展示します。
Dヴィクトリアン・タイル
ヴィクトリア時代のタイルの隆盛は、ゴシック・リバイバル運動を契機に始まりました。途絶えていた製法を復活させたミントン社の象嵌タイルや陶器装飾の分野で大きな功績を残したウィリアム・ド・モーガンのタイル(写真5)も含めこの時代に多用された美しいタイルをご覧いただきます。
展示にあたり、関係の皆様には多大なるご協力を賜りました。この場をかりて厚くお礼申し上げます。
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