写真:「なのはなDX」 JR九州最南端の路線となる指宿枕崎線を走る。 撮影/雨宮秀也
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斬新で心地よいインテリアを乗せて走る、旅する空間。
九州は、移動空間も観光地になる。
JR九州の列車に、近年大きな変化が起きています。
鮮やかな色使い、革張りの座席、フローリング床、木製のスツール、ブラインドなど高級ホテルやラウンジのような設備が次々に取り入れられています。また観光地へ向かう列車では、サンルームのように広い窓や読書スペースなど、旅の楽しみを掻き立てる仕掛けが随所に施されています。
九州は車社会の傾向が強く、列車は秀でた魅力がなければ利用されがたい環境にあると言われています。そのためJR九州は細やかな工夫を重ね、愛される列車の開発のため独自の挑戦を続けてきました。このような鉄道ルネッサンスともいうべき、今までのイメージを一変させた車両のデザインは、鉄道ファンのみならず多くの人を魅了し注目を集めています。
本展では、九州を走る列車の中でも、デザイン顧問・水戸岡鋭治氏の手による10種類の列車の意匠やコンセプトに光を当て、洗練された和の味わいを取り入れた新幹線「つばめ」、近未来を想像させる遊び心に満ちたフォルムの特急「ソニック883系」など、多様な輝きを放つそれぞれの列車の魅力、そして誕生の背景を紹介します。
会場では水戸岡氏のスケッチやプレゼンテーションのためのイラスト、実際の列車に使用されている部品やその試作品を100点以上にわたり展示します。西陣織のシートが体を包み込む新幹線「つばめ」、木製の軽快なデザインを備えた観光列車「なのはなDX」は座席の実物を展示、腰を下ろしてみることによって、人を運ぶ移送機関から一歩も二歩も踏み込む、洗練された乗り心地とデザインへの追求を体感して頂けます。地元の木材を使用したテーブルや肘掛け、襖を意識した磨りガラスの間仕切り、多様な照明器具、座席生地の豊富な見本類、竹を編んだ目に軽やかなくず箱、上質な制服や備品などのディテールは、実際に乗ってみたいと思わせるような驚きと新鮮さに溢れています。さらに、迫力ある模型の数々や各種の写真、映像からは、九州の雄大な風景を縦横に駆け抜ける列車たちの車窓の風景、空間の雰囲気を追体験して頂けるでしょう。
今展で取り上げる、足を踏み入れた途端心の沸き立つような豊かな列車空間は、公共空間の未来への展開、そして希望を感じさせてくれます。「旅の途中が、目的地となりうる」新たな旅の楽しみ方を感じていただければ幸いです。
今回の展示・取材にあたり、関係の方々に多大なるご協力を賜りました。この場をかりて厚く御礼申し上げます。
[企 画]
INAXギャラリー企画委員会
[制 作]
株式会社INAX
[協 力]
九州旅客鉄道、水戸岡鋭治+ドーンデザイン研究所
BOOKLET
『デザイン満開 九州列車の旅』
2008年9月刊行
本文75ページ(カラー60ページ)
定価:1575円(税込)
INAX出版
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