建築・美術展 GALLERY 2




展覧会案内

クリエイションの未来展 第7回  伊東豊雄展 <br>「空気をデザインする ーみんなの森 ぎふメディアコスモスー」<br>Toyo Ito Exhibition

クリエイションの未来展 第7回 伊東豊雄展
「空気をデザインする ーみんなの森 ぎふメディアコスモスー」
Toyo Ito Exhibition

2016年3月4日(金)〜5月24日(火)

■ 休館日
水曜日、5月22日(日)
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料
■ 協力
岐阜市、大光電機株式会社

トークイベント  ※終了しています
日比野克彦(岐阜県美術館館長/東京藝術大学先端芸術表現科教授/アーティスト)× 伊東豊雄(建築家)
2016年3月31日(木)18:30〜20:00

ギャラリートーク  ※終了しています
ぎふメディアコスモス担当スタッフ:南俊允(伊東豊雄建築設計事務所)
2016年3月26日(土)、4月23日(土)、5月15日(日) いずれも15:00-


プレスリリース(853KB)pdf_icon_s.gif
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The 7th Future of Creation Exhibition: Supervised by Toyo ITO
Designing Air:‘Minna no Mori’Gifu Media Cosmos

4 March 2016 - 24 May
■ Closed
Wednesday, 22 May
■ Open
10:00〜18:00
■ Admission
Free
■ Thanks to
Gifu City, Daiko Electric Corporation

◆アートニュースはPDFをご覧下さい。/ Here is more details. (PDF 837KB)
伊東豊雄展アートニュース / Toyo Ito "Designing Air" Leafletpdf_icon_s.gif
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展示会概要
LIXILギャラリー企画「クリエイションの未来展」について
LIXILギャラリー企画「クリエイションの未来展」では、日本の建築・美術界を牽引する4人のクリエイター、清水敏男(アートディレクター)、宮田亮平(金工作家)、伊東豊雄(建築家)、隈研吾(建築家)を監修者に迎え、それぞれ3ケ月ごとの会期で、独自のテーマで現在進行形の考えを具現化した展覧会を開催しています。

→ Art and Architecture Exhibitions (GALLERY2)

建築家 伊東豊雄氏によるこれからの建築
「クリエイションの未来展」の第7回目となる今回は、建築家の伊東豊雄氏の展覧会「空気をデザインする‐みんなの森 ぎふメディアコスモス‐」を開催します。
「みんなの森 ぎふメディアコスモス」(岐阜県岐阜市)は、2015年7月に開館して以来、既に60万人以上の人が訪れ(2016年1月時点)、周辺地域に新しい賑わいを生み出しています。
本展は「ぎふメディアコスモスの完成報告」、「オープン後どのように使われているか」、「この先の展望」の構成からなり、コミュニケーションの場の回復とその展望を探るものです。会場ではコンペティション時の資料から施工中の様子、オープン後、現在に至るまでを写真や映像、模型など多彩な資料で紹介いたします。

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開架閲覧エリア  ©Kai Nakamura

作家からのコメント
●空気をデザインする −みんなの森 ぎふメディアコスモス−
  昨年7月岐阜市に「 みんなの森 ぎふメディアコスモス 」がオープンしました。ライブラリーを中心に、ギャラリー、ホール、市民のワークショップ活動を推進するための市民活動交流センター等が複合された公共施設です。
  この施設での活動内容は、15年前にオープンした「せんだいメディアテーク」に近いと言えます。「せんだい」をモデルにしてプログラムが決定されたのではないか、と言える程です。
  しかし近似したプログラムを備えながら、それらを包含する建築のあり様は大きく異なっています。この違いこそが、この15年間の私達の建築思想の展開の軌跡と言えます。そしてこの建築に込められたさまざまなメッセージこそが、これからの建築に対する私達のマニフェストなのです。今回の展覧会ではこのメッセージを具体的に示したいと考えます。
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外観  ©Kai Nakamura

1.内/外の一体化した公共空間をつくる
  「ぎふメディアコスモス」はその名称通りに「みんなの森」に囲まれています。南側の「みんなの広場 カオカオ」、西側の桂の並木に面した歩行者のためのプロムナード「せせらぎの並木 テニテオ」、さらに東側や北側にも可能な限りの植栽が施されています。
  強調したいのは建築が単に緑に覆われているだけでなく、建築内/外の相互貫入が実現されていることです。例えばメインエントランスのある南側では1階レストランや2階の大きな円形屋根付きテラス、西側はプロムナードに開かれた1階のワークショップスペースや2階のリニアーなテラス、これは西陽を遮ると同時に並木に面した快適な読書環境を生み出しています。さらに東側にも織田信長の居城であった金華山を臨むテラスが用意され、それぞれに雰囲気の異なる屋外での読書や休憩スペースを楽しむことが出来ます。我が国の公共施設では、このような屋外、半屋外空間を楽しめるケースはきわめて稀である、と言えるでしょう。何故ならば内/外を明確に区切ることによってコントロールの容易な人工環境をつくると同時に、管理しやすい施設にしようと考えるからなのです。
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せせらぎの並木 テニテオ  ©Kai Nakamura                   ひだまりテラス  ©Kai Nakamura

2.空気の流れをデザインする
  「ぎふメディアコスモス」の敷地は長良川に近いので、地下水が豊富です。地下室をつくることが困難な程水位が高いのです。この施設では地下水を利用して1〜2階床の輻射冷暖房を行っています。年中安定した水温の地下水を多少温度調整をしてコンクリート床内のパイプに流すのです。   でもそれだけではありません。床から上がってくる冷気や暖気を自然の力によって壁の少ない館内を循環させるのです。暖かい空気は自ら上昇しますから、煙突効果によって夏は最頂部の開口から排気され、冬は開口を閉じて循環させるのです。循環をより効果的にするために大小11の「グローブ」と呼ばれるオブジェが天井から吊られました。「グローブ」は上部からの自然光を和らげる働きもしますが、基本的には空気の流れに沿ってデザインされたのです。   この施設では地下水の他にも、太陽光など自然エネルギーを最大限に利用して従来の同規模施設の約1/2の消費エネルギーでまかなわれています。
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開架閲覧エリア  ©Kai Nakamura

3.地域の素材を利用する
  空気の循環をスムーズにするためにつくられた屋根の高低差は木造の自由曲面シェルとしてデザインされました。木造でこのようなシェル曲面を構成するには通常集成材が用いられます。しかしここでは施工性と経済性を高めるため、わずか2cm厚の平板を3方向に互い違いに重ね合わせた曲面屋根が実現しました。曲げモーメントが最大となる柱付近ではレイヤーは21層、42cmになりますが、これらは接着剤とビスの併用によって接合されています。そしてここでの木材はすべて地元産のヒノキが用いられました。オープン後半年を経た今も、館内はヒノキの香りに包まれています。
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左右:木屋根施工の様子  ©Kai Nakamura

4.一緒に考え一緒につくる
  これは東日本大震災後、「みんなの家」づくりを通じて私達が得た教訓を基に、実践する方法です。それは「ぎふメディアコスモス」をつくるプロセスにも生かされました。地元大学生とのワークショップによって製作された「グローブ」の布のパターンや、市民活動交流センターの使われ方に関するワークショップ等です。
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グローブ製作ワークショップの様子                       市民活動交流センター
©Yoko Ando Design                                             ©Toyo Ito & Associates, Architects


  こうしたメッセージを通じて、私達はグローバル経済の下で均質化を進める建築世界にあって、地域や場所に密着した建築を提唱したいと考えました。それは近代主義の先 に私達が発見するべき明日の建築の先駆けとは言えないでしょうか。


2016年1月15日
伊東豊雄


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2016年 会場風景    撮影:白石ちえこ

作家略歴
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1941年生まれ。65年東京大学工学部建築学科卒業。65〜69年菊竹清訓建築設計事務所勤務。71年アーバンロボット設立。79年伊東豊雄建築設計事務所に改称。
主な作品に「シルバーハット」、「八代市立博物館」、「大館樹海ドーム」、「せんだいメディアテーク」、「多摩美術大学図書館(八王子)」、「2009高雄ワールドゲームズメインスタジアム」、「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」、「台湾大学社会科学部棟」(台湾)、「CapitaGreen」(シンガポール)など。現在、「新青森県総合運動公園陸上競技場(仮称)」、「台中国立歌劇院」(台湾)などが進行中。
日本建築学会賞作品賞、ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、王立英国建築家協会(RIBA)ロイヤルゴールドメダル、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、プリツカー建築賞など受賞。
東日本大震災の復興活動に精力的に取り組んでおり、住民の憩いの場として提案した「みんなの家」は、2015年7月までに14軒完成した。その役割も、コミュニティの回復、子供達の遊び場、農業や漁業の再興を目指す人々の拠点などに発展している。2011年に私塾「伊東建築塾」を設立。これからのまちや建築のあり方を考える場として様々な活動を行っている。また、自身のミュージアムが建つ大三島においては、2012年より塾生有志や地域の人々とともに継続的なまちづくりの活動に取り組んでいる。