外観 ©Kai Nakamura
1.内/外の一体化した公共空間をつくる
「ぎふメディアコスモス」はその名称通りに「みんなの森」に囲まれています。南側の「みんなの広場 カオカオ」、西側の桂の並木に面した歩行者のためのプロムナード「せせらぎの並木 テニテオ」、さらに東側や北側にも可能な限りの植栽が施されています。
強調したいのは建築が単に緑に覆われているだけでなく、建築内/外の相互貫入が実現されていることです。例えばメインエントランスのある南側では1階レストランや2階の大きな円形屋根付きテラス、西側はプロムナードに開かれた1階のワークショップスペースや2階のリニアーなテラス、これは西陽を遮ると同時に並木に面した快適な読書環境を生み出しています。さらに東側にも織田信長の居城であった金華山を臨むテラスが用意され、それぞれに雰囲気の異なる屋外での読書や休憩スペースを楽しむことが出来ます。我が国の公共施設では、このような屋外、半屋外空間を楽しめるケースはきわめて稀である、と言えるでしょう。何故ならば内/外を明確に区切ることによってコントロールの容易な人工環境をつくると同時に、管理しやすい施設にしようと考えるからなのです。
せせらぎの並木 テニテオ ©Kai Nakamura ひだまりテラス ©Kai Nakamura
2.空気の流れをデザインする
「ぎふメディアコスモス」の敷地は長良川に近いので、地下水が豊富です。地下室をつくることが困難な程水位が高いのです。この施設では地下水を利用して1〜2階床の輻射冷暖房を行っています。年中安定した水温の地下水を多少温度調整をしてコンクリート床内のパイプに流すのです。
でもそれだけではありません。床から上がってくる冷気や暖気を自然の力によって壁の少ない館内を循環させるのです。暖かい空気は自ら上昇しますから、煙突効果によって夏は最頂部の開口から排気され、冬は開口を閉じて循環させるのです。循環をより効果的にするために大小11の「グローブ」と呼ばれるオブジェが天井から吊られました。「グローブ」は上部からの自然光を和らげる働きもしますが、基本的には空気の流れに沿ってデザインされたのです。
この施設では地下水の他にも、太陽光など自然エネルギーを最大限に利用して従来の同規模施設の約1/2の消費エネルギーでまかなわれています。
開架閲覧エリア ©Kai Nakamura
3.地域の素材を利用する
空気の循環をスムーズにするためにつくられた屋根の高低差は木造の自由曲面シェルとしてデザインされました。木造でこのようなシェル曲面を構成するには通常集成材が用いられます。しかしここでは施工性と経済性を高めるため、わずか2cm厚の平板を3方向に互い違いに重ね合わせた曲面屋根が実現しました。曲げモーメントが最大となる柱付近ではレイヤーは21層、42cmになりますが、これらは接着剤とビスの併用によって接合されています。そしてここでの木材はすべて地元産のヒノキが用いられました。オープン後半年を経た今も、館内はヒノキの香りに包まれています。
左右:木屋根施工の様子 ©Kai Nakamura
4.一緒に考え一緒につくる
これは東日本大震災後、「みんなの家」づくりを通じて私達が得た教訓を基に、実践する方法です。それは「ぎふメディアコスモス」をつくるプロセスにも生かされました。地元大学生とのワークショップによって製作された「グローブ」の布のパターンや、市民活動交流センターの使われ方に関するワークショップ等です。