A 家財と家族の関係性
羽山まり子の作品は、椅子を家族ひとりひとりになぞらえて、それが中空で衝突しているように展示したり、祖母と母の各々の時代の家具を積み重ねて血族を表したり、家財の時代性や種類、装飾デザインを隠喩として、繰り広げられる人間模様を象徴的に表わしています。時には家庭内暴力も連想させ、また愛情表現に胸が詰まるようなシーンもあり、印象的です。
B 社会と個人
羽山まり子は女子美術大学の洋画科から制作を始めましたが、学部3年時より絵画から徐々に離れ、現在の手法で制作しています。社会の大きなシステムに興味を持ち、モチーフとしています。地元埼玉県川口市のキューポラ煙突、足尾銅山の黒い砂礫といった負の部分をクローズアップさせる視点が特徴です。最近では社会から個人の体験へとテーマが集約してきました。社会の最少単位としての「コミュニティ=家族」に着目して制作された作品をご覧いただけます。