建築・美術展 GALLERY 2




展覧会案内

中村亮一 展 Nakamura Ryoichi Exhibition<br>-The world has begun to quietly say,

中村亮一 展 Nakamura Ryoichi Exhibition
-The world has begun to quietly say,"No"-

2012年12月1日(土)〜12月26日(水)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク 12月1日(土) 16:00〜17:00

プレスリリースpdf_icon_s.gif ※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

The world has begun to quietly say, "No"
2011 Oil on roll canvas 2100 x 6000mm




展示会概要
中村亮一の作品は心象風景を描いた油彩画です。カンバスには数字や吹き出し、鮮やかな色彩、複数の情景が混在して描かれ、混沌とした社会を生きる若い作家のシャープな視点が観る者を惹きつけます。本展覧会では、東日本大震災での体験から描いた「3.11」シリーズの新作4点の発表を中心に7点で構成した展示を行います。


見どころ

@ 現代を生きる人々の不安や感情に呼応する混沌とした世界観
中村亮一はアメリカ同時多発テロ事件を目にして以来、混沌とした世界観、不穏な空気感、暗闇の風景を繰り返し描いてきました。近年の代表作である「Japan」(2011)は、画面いっぱいにモノが散乱し、遠方には火事のような炎、真っ赤な空、そして「NO」の文字が描かれ、視界に映る色鮮やかな明るさと裏腹に、大惨事を拒絶しているような不穏で不思議な光景を描いた長さ1800mm×4500mmの大作です。
また、ベルリン滞在期に描いた自然やジェンダーをモチーフにした「Paradox」シリーズ(2009)や、人形の頭を寓意的に描いた「王冠/Crown Doll」シリーズ(2008)などの作品は、力強く説得力のある具象的な描写と全体に漂う不穏な空気感が特長で、同時代に生きる人々の不安や感情に呼応し、多くの人々の心を捉えてきました。

A 残酷なモチーフをテーマとしながら、温かい視線で描かれる家族像
中村亮一の近年の作品のもう一つのモチーフとして、家族の姿を描いたシリーズがあります。3歳年上の姉との幼少期の思い出を描いた、「Memories」(2011)には「Japan」(2011)や「Paradox」シリーズ(2009)に描かれる混沌とした世界観とは反して、甘い雰囲気が漂います。落とし穴や髪の毛をひっぱるなど子どもたちのいたずらをテーマに扱いながら、無垢で屈託のない明るさが印象的です。暗いモチーフを扱いながらもどこか優しい、愛情とユーモアを感じさせる由縁は、中村 亮一の家族の姿を見つめる温かい視線にあります。また、グラフィックスやマンガのような数字、文字、吹き出しによる言葉を、具象的な描写と合わせる独特の表現は、現実を夢物語のように見せる役割を果たしています。

B 「3.11」シリーズ新作公開
東日本大震災が起こった後、中村はひとり福岡に滞在します。継続する惨事への恐怖、家族や友人の心配、自分だけ避難したことに対する罪悪感に苛まれたと話します。被災地から遠い福岡の自然の美しさも印象的に映りました。今展ではこの時の体験から、爆発のかたちにフレーミングしたカンバスに描かれた新作「3.11」シリーズの4点を中心に、6点で構成した展示を行います。若い作家が描く復興へ向けた未来の物語をご覧頂きます。



中村亮一(Nakamura Ryoichi)展

中村亮一(Nakamura Ryoichi)展

中村亮一(Nakamura Ryoichi)展

2012年会場風景

インタビュー
2012年10月10日 インタビュー:大橋恵美(LIXILギャラリー)
大橋 中村さんの作品は、マンガやグラフィックスのように数字や吹き出しが画面に登場して、描かれている物語が読み解きできるそうですね。ダークなイメージが鮮やかな色彩で描かれ、意地悪な子供の様子にも優しい印象があります。
中村 僕は鑑賞者に理解して欲しいという気持ちが強いので、解読できるように作品をつくっています。画面で使っているアルファベットは、並びとして一つの単語にはなっていないのですが、「H、O、P」で「HOPE」、「P」と豚の絵で「PIG」と想像できるように一つ一つに意味を持たせています。
「His sister and a Tapir」(2011)は自身の思い出が元になっていて、子供の頃家族でスキーに行った時に、誰かがつくった落とし穴に落ちた僕を、家族が笑いながら見ていたことがあって、それがショックで自分を俯瞰した情景で描いたんです。
やはり子供の頃、初めて父に絵を描いてもらった事がすごく嬉しくて、自分でも絵を描き始めるきっかけとなったのですが、その時の父の絵が、鼻血を出してティッシュを鼻に詰めている僕の顔で、子供ながらに意地悪だなーって思いました。それが父のユーモアで、今の自分のユーモアにも繋がっていると思います。
大橋 「H.O.P」(2011)や「His sister and a Tapir」(2011)の女の子のモデルはお姉さんだそうですね。
中村 姉からは強い影響を受けていて、高校生の時に海外に行ったのも、留学経験のある姉が羨ましかったからです。僕がベルリンにいた時にはわざわざベルリンまで来て、あなたわかっているの、と説教したり、昔から僕には厳しくあたるので、親よりも姉に対する反発というのがありました。姉に息子が生まれた時も、あなたも作品が変わるかもね、と言われてショックを受けてしまったり、今でも影響を受けていると思います。
大橋 最近作品が変わってきました。
中村 ベルリンにいた時インスタレーションの作家に、なぜ素材選びをしないで決められたキャンパスと油絵の具を使っているんだ、それで本当に表現をしているのかと言われたことがあります。そのこともずっと考えていたのですが、最近、四角いキャンバスでなく、かたちにも意味を持たせたキャンパスの方が内容とフィックスして表現が深まるのではと考え始めました。
新作の「It escapes me」(2012)は去年の震災後に制作したのですが、海外のニュースで東京も放射能に汚染されると報道され、海外の友人からとにかく逃げなさいと強く言われて、福岡に行きました。キャンパスの有機的な形は原発が爆発したときの映像のイメージそのもので、その中で家族を残してたった一人遠くに来たという不安や罪悪感、孤独感でいっぱいの心情を描いています。それ以降、それまでには感じなかった故郷の存在をリアルに感じるようになりました。原発で失われた安全な自然のユートピアが爆発のイメージのフレームの中にあるという作品です。
同じく「Where do we go from here?」(2012)も震災後、南相馬に行った時に描いたものなのですが、TVでみた光景とはあまりにも差があって、ショックで現状を把握し切れなかったというのが正直なところです。
残された家の基礎部分から想像は出来るんですが、以前からあった風景のようにも見えてしまって、理解や解釈が出来ませんでした。そういうイメージをただアウトプットしたくて描きましたので、まだ消化は出来ていないのかもしれません。
大橋 これまでも混沌とした世界を選んで表現しています。
中村 僕は最初から、日本に限らず混沌とした世界に対して強い興味を抱いていると思います。
ベルリンでアトリエがあった場所はトルコ人が多かったのですが、ドイツは移民をたくさん受け入れているのに住む場所が区分けされています。宗教的な問題もあり、その境界線って何だろうかと感じていました。
またドイツは冬の間光が暗いのですが、その頃の僕の作品は光が明るく描かれています。光を求めて意識的に明るくしていたかも知れませんが、帰国後ベルリンの生活に比べたらいろいろな面で楽になりましたが、さらに内向的なイメージを探るようになったと思います。
僕自身の周囲だけでなく、生きている社会や時代に対して様々なことを感じます。反原発デモ、ギリシャの経済、ニューヨークの1%デモ、時代やジェネレーションによって抑圧されている人々、人々が能力を生かせるチャンスが少なくなっている社会など、純粋な疑問や反発したくなる内容など色々な想いを感じます。僕の作品は基本的には心象風景ですが、自分が置かれている状況も含めて社会と呼ぶのであれば、社会に映し出される自身をリアルに描くことで、社会を表現していくのだろうと思います。
作家略歴
1982年 東京生まれ
2006年 KHB ベルリン・バイセンゼー芸術大学、カタリーナグロス教授、聴講生
2002年 東京造形大学 入学(2004年 自主退学)
1998年 国際交流基金、交換留学プログラム、ベルリン市派遣
個展
    
2012年 Niche Gallery(東京)
2011年 第4回アーティクル賞 グランプリ, ターナーギャラリー(東京)
2009年 Gallery 156(東京)

2005年 Gallery Rodolfo. Art en laboratorio(ベルリン)
2004年 ディーゼル デニム ギャラリー アート エキシビジョン(東京-大阪)
La Girafa(ベルリン)
主なグループ展
              
2012年 "Spring Fair", ギャラリー椿(東京)
2011年 "The Color of Future", ターナーギャラリー Curator: 蜷川千春 Organizer: ターナー色彩株式会社(東京)
"Japan Congo", Garage Center for Contemporary Culture (モスクワ)
"第4回アーティクル賞 入選者展覧会", ターナーギャラリー(東京)
2009年 "Somebody", Lunch Project Curator: Lyla Rye Organizer: Toronto School of Art(トロント)
2008年 "Psycho", Gallery Waschhaus (ベルリン)
2007年 "中村亮一&Melissa Steckbauer", Gallery Waschhaus (ベルリン)
"Smash", Gallery Waschhaus (ベルリン)
2006年 "中村亮一&松崎宏史", Gallery Waschhaus (ベルリン)
ギャラリーアーティスト+招待作家. Gallery Birthe Laursen (コペンハーゲン)
2005年 "中国−日本−韓国", Gallery Rodolfo (ベルリン)
2004年 ABC kunstservice (ベルリン)
"Isst du gerade meinen Tofu?", Backfabrik Organizer: Hsiu-Ling Chi, Eri Kawamura, Erika Magnusson, Lisa Schreiber (ベルリン)
2003年 "肖像画", La Girafa (ベルリン)
アーティストインレジデンス
    
2009年 トロントアートスクール. Independent Summer Residence. (トロント)
アワード
    
2011年 第4回アーティクル賞 グランプリ(東京)

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