建築・美術展 GALLERY 2




展覧会案内

酒井稚恵 -ほうき星、あらわる- 展<br>Sakai Chie Exhibition

酒井稚恵 -ほうき星、あらわる- 展
Sakai Chie Exhibition

2012年11月1日(木)〜11月28日(水)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク 11月1日(木) 18:00〜19:00

プレスリリースpdf_icon_s.gif ※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

「ニンフェットの蒸発」 300×300cm、2010、水玉プリント綿布、ナイロン糸
photo:YANO Makoto



展示会概要
酒井稚恵の作品は布を使ったインスタレ−ションです。ストライプや水玉模様の既成の布地を何メートルも使い、その模様を縫い合わせることで独創的なかたちを表現します。海外や関西を中心に活躍中の酒井による本展覧会では、「ほうき星、あらわる」「星をけちらしながら」など、宇宙をイメージした新作8点を発表します。


見どころ

@ 手芸マジックでつくるダイナミックな存在感
一見すると8mの高さから落ちる青い滝。近づいてみると青と白の光沢あるストライプの布を、糸で縫い縮めをして立体的に浮き出させていることがわかります。直径7mの深紅の大輪の花が床に広がっているように見える作品も、赤地に白い水玉模様の布を使い、水玉模様同士を縫い合わせることで、新たに放射状の模様をかたちづくっています。
酒井稚恵の作品はいずれも「シャーリング*1」や「スモッキング*2」といった手芸の技法を用い、一針ずつ縫い上げる手作業でつくられています。縫い縮めたり縫い合わせたりすることで現われるやわらかな立体感と、大きな布のもつ重量感や存在感を感じさせるダイナミックな作品です。
*1 洋裁で、細かいギャザーを寄せて模様や変化を出すこと。
*2 布地を縫い縮めてひだを寄せた上をかがって模様を表し、ひだを固定する技法。

A 布のもつ時代性と彫刻の普遍性
酒井稚恵は大阪芸術大学大学院の工芸コースで制作を始めました。自ら織機で布を制作する中で、縦糸と横糸の碁盤の目のようなラインに歪みを生じさせ、揺らぎを表現したいと考えるようになり、現在の作風が誕生しました。酒井稚恵は流行を反映する布素材、古くからの手芸の技法、彫刻のような存在感によって時代性と普遍性を合わせ、毎回新作を発表しています。

B 「ほうき星、あらわる」 新作公開
今回出品される作品は新作8点です。これまでの大きな平面的な作品から、今春、高知県の大日如来像が安置される竹林寺客殿での展示体験から生まれた立体的な作品へと、新たな世界が始まりました。「ほうき星、あらわる」「星をけちらしながら」と名づけられた「宇宙」をイメージした新作も合わせてご覧下さい。



酒井稚恵(Sakai Chie)展

酒井稚恵(Sakai Chie)展 酒井稚恵(Sakai Chie)展

酒井稚恵(Sakai Chie)展

酒井稚恵(Sakai Chie)展

2012年 会場風景

インタビュー
2012年8月25日 インタビュー:大橋恵美(LIXILギャラリー)
大橋 酒井さんの作品は既成のプリント模様の布を使い、スモッキングやシャーリングという手芸の技法で手づくりされています。こうした作品をつくるようになったのはなぜですか。
酒井 洋服をつくりたくて大阪芸術大学大学院へ進み、自分で糸から染めて織物を織っていたのですが、ある時、織物は縦横の糸で出来ているけれど、それが斜めに縮んだら面白いんじゃないかと思い、斜めにするために織物を糸で縫っていったんです。格子に織った柄が菱形になり、その織物の構造が壊れるところに私自身は面白さを感じたのですが、鑑賞者にはやはり織物という素材のテクスチャーばかりが強い印象に残るようで、その面白さに気づいてもらえませんでした。
そこでいっそのこと、テクスチャーそのものを失くしてしまおう、機械生産によるテクスチャーのフラットな状態の布を使おうと思ったのが始まりです。
布の歴史は産業革命で大量生産されるようになりました。経済性を重んじた、人の欲望から生まれたそうした布について美術工芸を学ぶ大学では目にすることはほとんどありませんから、大きく価値観を変えたと思っています。自分自身の新しい視点が持てたから反抗心が生まれたのかもしれません。
人は手仕事のぬくもりを求めていると思いますが、一方で私自身赤ちゃんの頃から着ている服も既製服で、糸から紡ぐことは自分の生活ではリアリティがありませんでした。今の時代に生きているからこそ出来ることがあると思います。
大橋 作品のイメージはありますか。
酒井 テキスタイルを専攻していた頃に、ファイバーワーク全盛時代やヨーロッパのタピスリーの歴史から繋がるローザンヌビエンナーレがなぜ終わってしまったのか、アヴァカノヴィッチ(Magdalena Abakanowicz)の表現などを調べました。絵画や他の表現では、独自に表現したいテーマや物語が先にあって、それに近づく方法として絵を描いたりします。でも工芸の技法と素材は、そんな風なつくり方をすると逆にそれが制限になってしまうんです。
工芸の作品の昔からの技術はすごく美しいです。私は、最初にテーマや物語をつくるのではなく、その美しさみたいなものを目標に持っていったら、何も制限がなくなるのではないかと考えています。
生地を見て縫っていると、イメージが立ち現れてきます。タイトルもそこから連想するものをつけています。
大橋 好きな生地はありますか。
酒井 生地は相当ストックを持っています。生地はファッションに通じるので時代の影響を反映しやすい素材です。水玉模様も日本では横並び、ヨーロッパでは斜めに並んでいるんです。玉の大きさや並び方で私が作品としてつくれる模様も全然違ってきます。
モチーフのある柄、ストライプ、水玉、ギンガムチェックと、作品としての縫い方はそれぞれ違います。モチーフやストライプの布は、絵を描くように直接的に模様を掬い上げて縫っていきます。水玉やギンガムチェックの模様はしわをつくるために規則的に縫って使います。
模様のサイズを細かく計算して生地を自分でつくることも考えられますが、想定通りのものをつくってもやはり面白くありません。自分では絶対につくらないようなセンスの、思いもよらない生地に出会えた時は嬉しくなります。そんな生地がたくさんあるので、アイデアは尽きません。
実は私は今、生地の図案を描くアルバイトもしているんです。作品では手仕事を大切にしたものを制作しているのに、一方では大量生産される生地の図案を描くのがとても面白いと思っています。
大橋 繊細な布でも作品はダイナミックです。
酒井 織物を織っていた頃から、大きな機で2mくらいの作品を基準に制作してきました。布は軽いので大きなものをつくりやすいし、繊維の細かさに注目すると、手に乗るような小さな作品も魅力的です。大きなものと小さなものの両方をつくっていきたいと思います。
かたちも、以前は布と糸だけで自立し、内側が空洞であることにこだわっていましたが、内側に心材がないとつくれない大きさがあります。凄く小さなものに挑戦した時に、内側に綿を入れてみたら今までにないきれいな張りが出ました。それによって平面だけでなく、立体的なさまざまなかたちに挑戦できるようになりました。
大橋 作品タイトルやフォルムに独特の印象があります。
酒井 私は子供の頃男の子みたいだったんです。女の子になるのが恥ずかしくて、小学生の間一回もスカートを穿いたことがありませんでした。母の本棚に「立原えりか」や「やなせたかし」などの詩歌集が並んでいて、読んだらだめと言われて、母が仕事に行っている間にこっそり読みました。短い詩の言葉から広がる大きな世界がすごく好きで、それが作品に直結しているように思います。母親と同世代の方は、スモッキング・ワンピースを思い出すとか、作品のタイトルを見てノスタルジーなイメージを共感してくれます。その頃、女の子らしさを隠していたので、今になって爆発しているのかもしれません。
大橋 作品のスケールが大きくなりました。
酒井 今春、高知県の五台山竹林寺(遍路寺)の客殿に展示をしました。戸をすべて開け放ち、内と外の境のない大きな空間を体験しました。春だったのでとても風が気持ちよかったです。
この展示のために最初に制作した作品に、なぜだか今までにない宇宙的なイメージを感じました。会場を下見した時に、安置されていた大日如来像の姿が記憶のどこかに残っていて、宇宙のイメージに繋がったのだと思います。そうした場所への供物のように展示した作品に、和尚さんが本物のお供えとご声明をしてくださいました。今展でもこの体験から新しく生まれた感覚の作品をつくっていきたいと思います。
作家略歴
1977年 神戸市生まれ
2000年 大阪芸術大学 工芸学科 テキスタイルデザインコース卒業
2002年 大阪芸術大学大学院 芸術制作研究科 表現領域X(染織)修士課程修了
主な個展
    
2010年 “GIRLY” Gallery Gallery/京都
2009年 “GIRLY” GALLERY SOL/東京
2008年 “GIRLY” 千疋屋ギャラリー/東京
2007年 “GIRLY” ギャラリー白/大阪
2005年 “Convert A to Z” 千疋屋ギャラリー/東京
主なグループ展
    
2012年 Chikurinji Art Experience 五台山竹林寺/高知
SLICK(-Art fair- GallerySATORUより) ブリュッセル/ベルギー
2011年 日本オーストラリア交流30周年展 W.AMuseum/Perth、西オーストラリア、兵庫県立美術館ギャラリー/神戸
第2回テキスタイルアート・ミニアチュール展—百花斉放— Gallery5610/東京
清州国際工芸ビエンナーレ/清州、韓国
[Art Court Frontier] アートコートギャラリー/大阪
アートフェア京都(GalleryGalleryより) モントレホテル京都/京都
「行商」The gallery circus(GallerySATORUより) スパイラルガーデン/東京
『色考|白』 GallerySATORU/東京
2010年 「新鋭作家展」 染・清流館/京都
6th International Fiber Art Biennale/中国
International Exhibition of Contemporary Textile Art Church of San Francesco/como イタリア
「P&E2010」 アートコートギャラリー/大阪
「FLOWERS〜Like a wildflower」 GallerySATORU/東京
ECHO TOUR 京都府庁旧本館/京都
第1回テキスタイルアート・ミニアチュール展-百花彩才- ルーフギャラリー/東京
2009年 “あやなす“ ほたるまちギャラリー/大阪
2008年 5th International Fiber Art Biennale/北京、中国
2006年 4th International Fiber Art Biennale/蘇州工芸美術職業技術学院、中国
“TODAY’S ART TEXTILE” Craft story/釜山、韓国
AZABU10BAN ART TEXTILEU 元麻布ギャラリー/東京
“放たれた視線からみあう視線” イムラアートギャラリー/京都
2005年 “TODAY’S ART TEXTILE” Craft story/釜山、韓国
“あやなす“ 海岸通ギャラリーCASO/大阪
2004年 3rd International Fiber Art Biennale/上海応用技術学院、中国
“SQUARE-CARRE-CUADRADO” W.T.A.Textile art 3rd international biennial/アメリカ

ページの先頭へ

LIXIL Link to Good Living

Copyright © LIXIL Corporation. All rights reserved.