やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

岡本作礼展 −祈りの系譜− <br>OKAMOTO Sakurei

岡本作礼展 −祈りの系譜−
OKAMOTO Sakurei "A Genealogy of Prayers"

2017年7月7日(金)〜9月5日(火)

■ 休館日
水曜日、2017年8月11日(金・祝)〜16日(火)、8月27日(日)
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料
アーティスト・トーク
7月7日(金) 18:30〜19:00  ※終了しています

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緑黒陶般若心経釘彫経筒/Cylindrical greenish-black ceramic sutra container with the Heart Sutra engraved with a nail (2017) 14.7×26.6cm

◆ Here is more details.
OKAMOTO Sakurei   "A Genealogy of Prayers" pdf_icon_s.gif
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緑黒陶般若心経釘彫経筒 / Cylindrical greenish-black ceramic sutra container with the Heart Sutra engraved with a nail   2017  14.7cm ×26.6cm



展示会概要
LIXILギャラリーでは2017年7月7日(金)〜9月5日(火)の期間「岡本作礼展 ―祈りの系譜― 」を開催します。
岡本作礼氏は唐津焼の伝統技法によるうつわや壺、茶道具などを制作して、現在唐津を代表する作家の一人です。その確かな技と現代性あふれる作品は、人気が高く東京でも数多くの作品展を開催してきました。
今展では陶歴40年になる岡本氏の作品の中から、叩き技法の痕跡を太古の洞窟の壁に見立てた壺や、般若心経を釘で彫り記した経筒などを中心に近作8点を展示します。
岡本氏は、土には太古からの鼓動があると考え、自然の摂理への畏怖、創造への敬虔な気持ちを祈りの姿勢として作品を制作しています。


見どころ
唐津焼でつくる祈りのかたち
岡本作礼氏は佐賀県唐津市出身で、唐津焼の窯元で修行をしたのちに窯を築き、40年に渡り唐津焼の技法で現代的な作品を制作してきました。
古来自然を畏れ敬う中国の五行やインドの五大元素のように、日本でも自然崇拝は強く、土、火、水を使うやきものはこのような祈りの姿勢をもって表されることがあります。岡本氏も土には太古からの鼓動があると考え、敬虔な祈りの姿勢で制作を行っています。
今展の出品作である「唐津叩き彩文土器」(2017)は、叩き技法による痕跡を古代の洞窟壁に見立てた壺で、壁画の代わりに円条文を描き宇宙の中心を表現しています。また、「緑黒陶般若心経釘彫経筒」(2017)では仏教の経典を入れる経筒の側面に般若心経が釘で一文字ずつ彫り込まれています。その他に、これまでの唐津にはない織部焼の型起こし技法を取り入れた「朝鮮唐津四方手付鉢」や、十五客の入れ子鉢「唐津殿青釉紫文寿互鉢」など多様な近作8点が展示されます。


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2017年7月  ギャラリー3 会場風景  撮影:荻沼秀和

「岡本作礼展 ―祈りの系譜―」に寄せて

   岡本作礼氏は、いま唐津を代表する陶芸家のひとりである。彼の作品は、単なる古唐津の再現ではない。素材である陶土と真剣に向かい合うことによって、過去にはない今日の唐津に挑戦する。故に岡本氏は、古い唐津の概念を越えて、やきものの本質へと向かう。中国の鈞窯やわが国の彩文土器に挑戦するのも、その一つの方法なのであろう。

   古代中国人は、宇宙の根源は木・火・土・金・水の五つの元素からなると考えていた。やきものも、この五行の働きによって生じる。木は窯焚きの燃料の薪、その灰は釉薬としても使う。火は窯の焼成、土は粘土、金は鉱物(釉薬)、水は水簸や土練りの時にも使う。また、古代インドでは、宇宙の構成は地・水・火・風・空の五つの元素からなると考えていた。すなわち、やきものは土を水で練って形を造り、木を燃料に風を送ることで火を焚き、釉薬には鉄や銅などの金属が使われる。そのプロセスは、今日にあっても大きく変わることはない。

   ところで、中国の五行やインドの五元素よりも早く、わが国には自然のエネルギーや、霊力を崇拝するという思想が存在した。自然のエネルギーは、時には豊かさを運び、時には荒(すさ)ましい破壊力となって人間を襲う。しかし、そうしたエネルギーを鋭く感知する能力に長けていたからこそ、祈りを内在する縄文土器が生まれたのである。

   今回のサブタイトルを―祈りの系譜―としたのは、日本のやきものには、そうした祈りの系譜が脈々と流れていると思うからである。

   「唐津叩き彩文土器」や「唐津緑黒陶般若心経釘彫経筒」に祈りが内在するのには異論がないであろうが、「朝鮮唐津四方手付鉢」にどうして祈りが内在するのか、疑問を持たれる方もいるかも知れない。

   懐石の器と日常の器の違いは、前者は茶の湯という非日常の空間で使用される器であり、後者は日常の空間で使用される器ということである。手の付いた鉢は料理が盛りつけにくいだけでなく、取り扱う上でも決して実用的ではない。しかし、豪快な把っ手が付いていることで、料理に不思議な緊張感が生まれる。岡本氏の「朝鮮唐津四方手付鉢」は、これまでの唐津にはない、織部焼の型起こしによる技法を取り入れたシャープな作品で、白い藁灰釉と黒釉を左右に掛け分け、力強い竹節の把っ手が付く、四方脚付の鉢である。

   この「朝鮮唐津四方手付鉢」は、懐石の器としての凛とした空気感を醸し出しているだけでなく、仏具を観るような、作者の深い祈りの姿勢を感じるのである。この祈りの姿勢こそ、日本のやきものの特徴といってもいいだろう。


森 孝一(美術評論家・日本陶磁協会常任理事)
唐津叩き彩文土器.jpg    朝鮮唐津四方手付鉢.jpg

左:唐津叩き彩文土器  2017年  36.5×33.2cm
右:朝鮮唐津四方手付鉢  2017年  25.5×20.3×13.7cm


作家略歴
1958 佐賀県唐津市に生まれる
1978 陶芸家・中里重利氏に師事
1989 作礼山山麓(唐津市)に工房設立
1996 個展(備前焼ギャラリー青山/東京)、以後隔年開催
2002 第1回日仏現代陶芸展(佐賀県立九州陶磁文化館)
2003 「現代日本の陶芸 受容と発信」(東京都庭園美術館)
個展(銀座黒田陶苑)、以後毎年新作を発表
2005 第2回日仏現代陶芸展(佐賀県立九州陶磁文化館)
2006 岡本作礼茶陶展(佐賀玉屋)
2007 個展(桝久/山形)、以後毎年開催
2008 個展(野村美術館/京都)
2009 唐津九人展(佐賀県立九州陶磁文化館)
個展(ギャラリー縄/大阪)、以後隔年個展
2010 個展(陶彩/新橋・東京)
2012 岡本作礼茶陶展(金源堂/仙台)
個展(柿傳ギャラリー/新宿)
2013 個展(横浜島屋/神奈川)
2014 日韓交流展(釜山・韓国)
個展(玉川島屋/東京)
2015 唐津陶芸五人展(和光ホール/銀座)
日韓中陶磁展(阪急うめだ/大阪)
2016 個展(福岡三越)
現在、佐賀大学非常勤講師、佐賀陶芸家協会会員

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