やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

美崎光邦展 −茫洋として− <br>MISAKI Mitsukuni

美崎光邦展 −茫洋として−
MISAKI Mitsukuni "Being Boundless"

2017年1月12日(木)〜3月12日(日)

■ 場所
LIXILギャラリー
■ 休館日
水曜日、2月26日(日)、3月2日(木)
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料
アーティスト・トーク
2017年1月12日(木) 18:30〜19:30
申込不要(当日会場にて受付)
プレスリリースpdf_icon_s.gif※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

MISAKI Mitsukuni   "Being Boundless"
12 January - 12 March, 2017
■ Closed
Wednesday, 26 February, 2 March
■ Open
10:00-18:00
■ Admission
Free

◆Here is more details. (PDF 824KB)
" Being Boundless " : MISAKI Mitsuhiko pdf_icon_s.gif
※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

彩釉泥器/ Vase decorated with slips  2016  77×37×H35cm



展示会概要
   LIXILギャラリーでは、2017年1月12日(木)〜3月12日(日)の期間「美崎光邦展 −茫洋として−」を開催します。
   美崎光邦氏は学生時代、旅先で小山冨士夫の窯に出会い、陶芸家をめざします。卒業後は日本各地の窯場を廻って陶技を学びました。現在では日本工芸会奨励賞、日本陶芸展大賞・秩父宮賜杯、菊池ビエンナーレ大賞と受賞を重ねる人気作家です。
   美崎氏の作品はいずれも静謐さと緊張感にみち、見る者を魅了します。《彩釉泥器》(さいゆうでいき)シリーズは、青と白の化粧土を四層に重ねて擦り込んだ、表面の鮮やかなブルーが印象的な作品で、「茫洋として」という心象風景を映しています。
   本展では、同シリーズでこれまでつくられてきたすっきりとした扁壺(へんこ)形とは異なる、ゆったりと横に広がるフォルムの作品(2016年作)7点をご覧頂けます。


見どころ
長い時にさらされて生まれてくるもの
   美崎光邦氏は大学で法学部に在学していましたが、旅先で小山冨士夫の窯に出会い、陶芸家をめざします。卒業後に全国の窯元を廻って陶技を学び、現在では朝日陶芸展、日本伝統工芸展、長三賞展、陶芸ビエンナーレ、日本陶芸展、菊池ビエンナーレと数多くの賞を受賞する人気の作家です。
   その作風はこれまで幾多の変化がありました。「1980年代の30歳の頃には世の中がピリピリしていたので、緊張感のある心をシンと静めるようなものを」制作していたそうですが、その作品は今なお静謐の中に緊張感をはらみ、見る者の心をとらえます。
   《彩釉泥器》シリーズの鮮やかなブルーは、青と白の化粧土を四層に擦り込み、口縁部には黒と茶の化粧土を擦り込んで、へらで磨き上げたのち、焼成したものです。時にさらされた情緒、風情が感じられる作品で、「茫洋と空に浮かぶ雲のようにゆったりと生きる」ことを理想としている作家のイメージが表現されています。
   本展では、同シリーズでこれまでつくられてきたすっきりとした扁壺形とは異なる、ゆったりと横に広がるフォルムの作品(2016年作)7点をご覧頂けます。
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2017年1月 ギャラリー3 会場風景 撮影:福森崇広

「美崎光邦展 −茫洋として−」に寄せて

   美崎光邦は漂泊の詩人である。どこに居ても、旅人の過敏な眼と繊細な心を失わない。そして、言葉にならない詩心を、造形と色彩で追求する。故に美崎は、一つの作風に安住することがなく、新たな創作に向けて旅立つのである。これまでも、日本工芸会奨励賞、日本陶芸展大賞・秩父宮賜杯、菊池ビエンナーレ大賞など数々の受賞歴を誇るが、美崎は決して、そこに安住することはない。そういう意味で、彼は西行や芭蕉と同じ道を行く人である。

   これは、美崎氏の個展に寄せた私の文章の冒頭部分ですが、誤解のないように付け加えておくならば、彼は決してロマンチシストと呼ばれるような人ではありません。旅人の過敏な眼とは彼の冷静な眼差しをいい、繊細な心とは虚偽を嫌う潔癖さをいいます。美崎氏は、中央大学法学部に入学し弁護士を目指していました。しかし、学園紛争のさなかで、授業もまともに行われず、旅行ばかりしていたようです。そして、陶芸家を目指してからも、彼は日本各地の窯場を転々と廻っていました。美崎氏の手紙に「風雨にさらされながら歩く切なさと甘美にひたった放浪」とあるのは、恐らくその頃のことでしょう。そうした旅心が、いまも彼の心の中には燻っているようです。

   また別の手紙に「動きの無い時間を生きている私はクールダウンが必要とロスコ(積極的に精神活動をせず、勝手に浮かんでくるイメージを意味付けなしに追いかけることと私は捕えています)しています。ボーっとしています。」とあり、その文面からは、不必要な意味付けを嫌う彼の作陶姿勢が感じられます。ロスコとは、画家のマーク・ロスコのことで、雲のように茫洋として広がる色面を内に孕んだ光を静かに放つ絵画作品のことをいいます。美崎氏の理想は、茫洋と空に浮かぶ雲のようにゆったりと生きることであり、彼の作品はそのイメージを表現したものといえましょう。

   1993年、美術評論家の乾由明氏は日本陶芸展で最優秀作品賞・秩父宮賜杯を受賞した美崎氏の《彩泥鉢》を評して、「これほど静謐でありながら、これほど緊張をはらんだ作品は、そう多くはないだろう。」と述べています。この静謐と緊張こそ、彼の作品の生命線といってもいいでしょう。そのどちらが欠けても、彼の作品は成り立ちません。

   今展に出品される《彩釉泥器》は、これまでの上に伸びる、すっきりとした扁壺形の作品とは違い、バランスの取れた、ゆったりとしたフォルムの作品です。これは、彼がいうところの「動きの中の静寂」から「静けさの中の動き」への移行であろうと思われます。表面に塗られた鮮やかなブルーは、水色・青・白・青と四層に化粧土を擦り込み、口縁部には黒と茶の二種の化粧土を擦り込み、箆で磨き上げて焼成したものです。まさに、ゆったりと時に晒された情緒、風情が感じられる作品です。


森 孝一(美術評論家・日本陶磁協会常任理事)


作家略歴
1951 千葉県市川市に生まれる
1970 中央大学法学部法律学科入学
1972 小山冨士夫の花の木窯を尋ね、陶芸家になることを決意
1975 中央大学法学部法律学科卒業
小石原焼の窯元で修業
1976 九谷焼の素地屋、弘前の津軽焼、会津の本郷焼、備前焼の窯元を巡り修業
1979 三重県尾鷲市で独立
1982 美崎光邦作陶展(東武百貨店/池袋)
朝日陶芸展入選
1983 日本陶芸展入選
日本伝統工芸展入選
1984 中日国際陶芸展入選
東海伝統工芸展入選
1986 千葉県富里町(現・富里市)に移転
1987 『洋々窯』開窯展(洋々窯陶房/千葉県富里町)
1989 個展(黒田陶苑/銀座)
第36回日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞
陶芸ビエンナーレ入選
1991 第20回長三賞現代陶芸展 奨励賞
陶芸ビエンナーレ 佳作賞
美崎光邦展(黒田陶苑/銀座)
1993 第12回日本陶芸展 大賞・秩父宮賜杯
美崎光邦作陶展(伊勢丹/新宿)
1994 美崎光邦作陶展(島屋/横浜)
1995 淡交ビエンナーレ茶道美術公募展 特別奨励賞
1996 第3回美崎光邦陶芸展(藤野屋/宇都宮)
1999 千葉県八街市に移転
現代陶芸への招待 (兵庫陶芸美術館)
美崎光邦作陶展(柴田悦子画廊/銀座)
2003 美崎光邦作陶展(三越/新宿)
2004 美崎光邦展(カマクラコーゲイ/鎌倉)
2005 美崎光邦作陶展(ギャラリー開/日本橋室町)
美崎光邦展(立山画廊/富山)
2006 美崎光邦作陶展(ギャラリー小川/赤坂)
2007 美崎光邦作陶展(大丸/高知)
2008 美崎光邦作陶展(惠埜画廊/山形)
2009 第20回日本陶芸展 優秀作品賞・毎日新聞社賞
2013 第5回菊池ビエンナーレ大賞
神戸ビエンナーレ奨励賞
2014 個展(中村美術サロン/茨城県筑西市)
2015 個展(ギャラリー上田/銀座)
2016 個展(アートサロン光玄/名古屋)
「美崎光邦陶展−ロスコーのように茫洋と…」(一穂堂ギャラリー/銀座)

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