やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

市野雅彦展 −土のおもむくまま− <br>ICHINO Masahiko

市野雅彦展 −土のおもむくまま−
ICHINO Masahiko "As the Soil Wishes"

2016年11月4日(金)〜12月26日(月)

■ 場所
LIXILギャラリー
■ 休館日
水曜日、11月27日(日)
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料
アーティスト・トーク
2016年11月4日(金) 18:30〜19:30
申込不要(当日会場にて受付)  ※終了しています

プレスリリースpdf_icon_s.gif※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

Masahiko ICHINO   "As the Soil Wishes"
4 November - 26 December 2016
■ Closed
Wednesday, 27 November
■ Open
10:00-18:00
■ Admission
Free

◆Here is more details. (PDF 850KB)
'As the Soil Wishes' : ICHINO Masahikopdf_icon_s.gif
※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

丹波土塊(たんばつちくれ)/ Tanba-Tsuchikure  2008  30×18.5×H17cm  photo:Shizuka Suzuki



展示会概要
   LIXILギャラリーでは2016年11月4日(金)〜12月26日(月)の期間「市野雅彦-土のおもむくまま」を開催します。市野雅彦氏は、古窯丹波焼の茶陶の家に生まれ育ち、最年少で日本陶芸展最優秀作品賞を受賞、丹波焼の伝統的な技術と風土の精神を受け継ぎながら、独自の現代的な造形作品を制作しています。    今展では陶歴35年の多様なスタイルの中から、土の表情や質感をテーマに自然の生命力を感じさせるような造形作品8点を展示致します。丹波の日々の暮らしの中から生まれ出てくる、市野氏の心象を映した大らかで温かみがあり、どこかユーモラスな作品をどうぞお楽しみ下さい。

見どころ
日々の暮らしの中から生まれる
   市野雅彦氏は古窯丹波焼の伝統を受け継ぐ茶陶の家に生まれ、95年には最年少の34歳で日本陶芸展最優秀作品賞を受賞し、35年間に渡り丹波焼のイメージを刷新するような大胆で精緻な造形作品を制作してきました。
   市野氏の作品は端正な線刻技法や象眼技法を生かしたシャープなイメージのものから、有機的なかたちの土塊のような作品まで多様なスタイルがあります。いずれの作品にも丹波の土と釉薬、焼成方法、風土に学んだ精神が息づいています。
   市野氏は若き日の修行時代に京都で日々土づくりを行った経験から、丹波に帰ってからも土を集め、現在100トンにもなるコレクションがあります。土に宿る自然の生命力を生かし、それぞれの個性、魅力を伝え、日々の暮らの中から生まれてくるようなモノづくりを行いたいと考えています。その造形は大らかで柔らか味があり、どこかユーモラスでチャーミングです。
   今展では、丹波中世以来の伝統である焼締めによる「丹波土塊」、心象風景の中の田圃をイメージした「Untitled」など、土の感触を表現した作品8点を展示します。
masahikoichino-2.jpg
masahikoichino-3.jpg
masahikoichino-4.jpg

2016年11月 ギャラリー3 会場風景

   市野雅彦氏は、現代丹波を代表する陶芸家の一人である。1961年、茶陶の名工といわれた初代・市野信水(1932〜97)の次男として生まれたが、高校時代までは野球一筋であったようだ。市野氏の素直で真っ直ぐな性格は、そうした青年時代の屈託のない自由な生き方や、丹波という豊かな自然に恵まれた環境を抜きにしては考えられない。

   嵯峨美術短期大学(現・京都嵯峨芸術大学)陶芸科に進み、陶芸の基礎を学び、卒業後は、面象嵌の技法で知られる京都の陶芸家・今井政之氏に師事。大学時代を含めて7年間の京都生活の後、丹波に帰郷、父のもとで轆轤や窯焚きの技術を学び、1988年に独立した。

   市野氏が一躍時の人となったのは、1995年≪開≫という作品で第13回日本陶芸展最優秀作品賞(秩父宮賜杯)を受賞してからである。この作品は、貝を思わせるような横長のかたちで、口元の鮮やかなオレンジ色と全体の落ち着いた黒色のコントラストが美しい、ダイナミックな白い線模様が印象的な作品である。34歳、最年少での受賞である。

   市野氏の初期作品は、手捻りで全体を成形後、表面に装飾を彫り込んだもので、80年代の生乾きの土に針を束ねた道具で線を彫り込んだものから、90年代の乾燥させた堅い表面に線を彫り異なった色の土を象嵌するものなど、手作業の妙味と洗練されたフォルムが融合した繊細な作品である。しかし、90年代後半以降は丹波伝統の灰釉と赤土部(あかどべ)による二つの形態が組み合わさった作品や、カラフルな化粧土を掛け分けた作品が登場する。この頃から、表面的な装飾ではなく、土のかたちや質感にこだわった、球体や楕円形、花や果実を思わせる、自然で自由な造形を目指すようになった。

   2011年、市野氏は大病を患い3年間の療養生活を送る。市野氏の作品に、自らを育んだ風土への熱き思いが込められるようになったのは、この頃からであろうか。「土にはいろいろあって、それぞれの個性がある。その土のもっている魅力を、伝えていきたい。少し立ち止まって今を感じながら、丹波の土を使い、日々の暮しの中から生まれてくるモノづくりができればと思う。」この言葉からは、いま自分が生かされていることへの感謝と、生命あるものへの慈愛が感じられる。

   市野氏は、かつて今井氏の許で日々土作りを経験した。丹波に帰ってからも、辺りで採れる土を集め、いまではいろんなところから採った土が100トン以上あるという。市野は、その「土の質感によって想像力が触発され、それをもとにかたちが生まれる。そのプロセスを残せたら」と語る。今展には、丹波中世以来の伝統である焼締めによる≪丹波土塊≫、心象風景の中の田圃をイメージした≪Untitled≫など、土の感触を表現した作品が展示される。

森 孝一(美術評論家・日本陶磁協会常任理事)


作家略歴
1961 兵庫県篠山市に生まれる
1981 嵯峨美術短大 (現 京都嵯峨芸術大学) 陶芸科卒業
今井政之氏、父・信水に師事
1986 国際陶磁器フェスティバル美濃 入選 ('89)
日展 入選 ('89、'90、'95)
1988 独立し、大雅窯を築く
1989 陶芸ビエンナーレ89 入選('95)
朝日陶芸展 入選 ('90、'92、'93、'94)
1992 茶の湯の造形展入選
(田部美術館・島根、'95、'99、'03 入選 / '96、'98、'10 優秀賞 / '04、'05 奨励賞 / '09 大賞)
1993 日本陶芸展入選('97、'99 入選 / '95 大賞・秩父宮賜杯 / '01 推薦出品 / '05、'07招待出品)
1997 NHK・BS2放送「やきもの探訪」放映
1998 NHKやきもの探訪展(日本橋島屋・東京 他)
1999 海外巡回・日本の陶芸展 (国際交流基金主催・南米巡回)
日本の工芸〈今〉百選展 (三越エトワール・パリ、日本橋三越本店・東京 他)
2000 茶の湯―現代の造形展 (ヘルシンキ市立美術館・フィンランド)
国際陶芸交流展 (中国美術館・北京)
兵庫県芸術奨励賞受賞
2001 アジアのアート展 (ケイティ ジョーンズ ギャラリー・ロンドン)
2002 アジア国際現代陶芸展 (台北県立鶯歌陶芸博物館・台湾)
2003 現代韓日陶芸展 (錦湖美術館・ソウル)
2004 COLLECT (V&A美術館、サーチギャラリー・ロンドン / '08、'09、'10、'11、'15)
2006 2005年度日本陶磁協会賞受賞 (銀座・和光にて記念展)
2007 兵庫の陶芸 (兵庫陶芸美術館)
パラミタ陶芸大賞展 準大賞受賞 (パラミタミュージアム・三重)
現代陶芸への招待 (兵庫陶芸美術館)
神戸市文化奨励賞受賞
2008 光州ビエンナーレ日韓現代陶磁器展 (韓国民俗博物館・ソウル)
2009 滋賀県立陶芸の森にて招聘作家として作品制作
未来へのタカラモノ(日本橋高島屋・東京 他)
2010 現代の茶−造形の自由− (菊池寛実記念智美術館、東京)
現代工芸への視点−茶事をめぐって(東京国立近代美術館)
2011 現代陶芸の地平を拓く (兵庫陶芸美術館)
現代工芸アートフェア(東京国際フォーラム)
茶陶・造形と意匠にみる現在性 (ギャラリーヴォイス・岐阜)
兵庫県文化賞受賞
2014 アイデンティティとオリジナリティ (兵庫陶芸美術館)
2015 茶-今日のしつらえ (札幌芸術の森工芸館)
近代工芸と茶の湯 (東京国立近代美術館工芸館)
市野雅彦‐軌跡、丹波にて(兵庫陶芸美術館)
2016 うつろのかたち−市野雅彦・陶展UTUWA (パラミタミュージアム・三重)

ページの先頭へ

LIXIL Link to Good Living

Copyright © LIXIL Corporation. All rights reserved.