やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

坂本素行 展 -造り込んだもの-<br>Sakamoto Motoyuki Exhibition

坂本素行 展 -造り込んだもの-
Sakamoto Motoyuki Exhibition

2014年4月24日(木)〜6月7日(土)

■ 休館日
水曜日、5/25
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

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「象嵌金彩 縞」
2014年 径15.5×H13.3cm
撮影:斎藤光治



展示会概要
坂本素行の作品は、象嵌技法を用いたコーヒーカップを中心としたテーブルウェアです。細かい線から広い面まで様々な色土を象嵌することによりつくられ、高度な技術の精緻で繊細な作品は、高い評判を得ています。本展ではコーヒーカップの他、ポットやクリーマ、小筥など約20点を展示します。


見どころ

@ 象嵌金彩
象嵌技法は、素地に線彫りや印花を施し、その中に地色と異なる泥を塗りこめて器面を装飾する方法です。
坂本 素行の象嵌は、様々な色土を細い線から広い面まで象嵌し、点描やグラデーションで陰影をつけたり、色をぼかしたりといった技法によって、繊細で精緻な中に濃密で装飾豊かな世界をつくり出しています。
坂本は旅行で度々パリを訪れる中で、そこで見た風物から受けたインスピレーションから、色合いの濃い、存在感のある作品を目指し制作に取り組んでいます。

A テーブルウェアの世界
坂本素行の陶歴では、病気の食事療法のために自ら料理をつくることで、器の作品に変化が表れました。一杯のコーヒーを美味しく味わうために、象嵌コーヒーカップは誕生しました。本展では、その贅沢な世界を表現するコーヒーカップ、デミタスカップ、ポット、シュガーポット、クリーマ、小さな壺や小筥などのテーブルウェア約20点を展示します。

坂本素行

坂本素行

坂本素行
坂本素行

2014年4月 ギャラリー3会場風景

坂本素行氏の象嵌陶芸について

象嵌(ぞうがん)とは、素地に線彫りや印花を施し、その中に地色と異なる泥を塗り込めて器面を装飾する技法で、古くは金属工芸にみられた技法である。のちに漆器や陶器にも応用されるようになったが、朝鮮半島の高麗時代に作られた高麗青磁は有名である。
坂本さんの象嵌作品は、いろんな色土を絵の具のように用いて、細かい線から広い面まで象嵌し、また点描や色のグラデーションを象嵌することによって陰影を付けたり、色をぼかしたり、なかなか手間の掛かる仕事で、まさに生地が乾いていく時間との競争である。坂本さんは、「色を繰り返し象嵌することで、深みのある絵や緻密な文様を創り出すことができる」のだと言う。
私は以前、坂本さんの作品を見て、「すぐに新印象主義の画家ジョルジュ・スーラの点描による絵画作品を思い浮かべた。坂本さんの作品は油彩画ではないが、陶器の上に象嵌で点描文様を表現している点では、陶芸の新印象主義と言えるかも知れない。」と書いたことがあった。その時は、坂本さんの作品をどこかノスタルジックな<懐かしいもの>として見ていたのであろう。それから三年ほど経ったある日、『炎芸術』という雑誌に原稿を書くため五日市の工房を訪ねた。驚いたことに、坂本さんの作品はそれまでの<どこか懐かしいもの>から<調和のとれた魅力的なもの>に生まれ変わっていた。その理由を尋ねると、「六十を過ぎて迷わず」との答えが返ってきた。
「坂本さんはこれまでも、和風と洋風の二つのパターンの意匠を制作してこられたが、先日、五日市の工房を訪ねると造形と意匠と配色の三者が見事に融合した、私の想像をはるかに超えた完成度の高い象嵌金彩の作品が創造されていた。それは、瑠璃色の手の付いたコーヒーカップで、これまでの坂本さんの経験が生かされた、彼が理想とする濃密で装飾豊かな作品であった。和風でも洋風でもない。坂本さんのかたち・意匠・配色が完成し、象嵌金彩を極められたと思った。」これは、その時の一文である。
その後の陶歴を拝見すると、坂本さんは2013年より「象嵌コーヒーカップを中心とした独自のテーブルウェアの世界を目指して制作」とある。彼の作品が、世のコーヒーカップの蒐集家たちの間で評判になっているからであろう。坂本さんの作品にある変化がみられるようになったのは、彼が糖尿病になり、その食事療法のため自ら料理を作るようになってからのことだ。料理を作ることで器が変わったのである。そして、美味しいコーヒーを味わうために、あの感動の瑠璃色の手の付いた象嵌コーヒーカップが誕生した。以来、坂本さんのコーヒーカップは、一杯のコーヒーを味わうための贅沢な時間と共に、私にとっても欠かせないものとなった。今展には、コーヒーカップ、デミタスカップ、ポット、シュガーポット、クリーマ、および壺など20点余の象嵌作品が展示されると言う。

森 孝一(美術評論家・日本陶磁協会事務局長)
作家略歴
1950年 東京都生まれ
1970年 私立育英工業高等専門学校デザイン科卒業
カーデザイナーとして日産自動車に入社
1974年 高麗青磁に魅せられ、象嵌技法に興味を持ち、独学で陶芸を始める。
1976年 <小紋象嵌壺>が日本伝統工芸展に初入選
1980年 日産自動車を退職し、陶芸家として独立
1981年 個展(京都島屋)
1984年 個展(日本橋島屋)
1985年 個展(大阪島屋)
美濃地方の粘土・長石などの採集を始め、灰釉陶器の研究を始める。
1986年 二人展 洋画家・高橋幸彦(神田・工芸サロン壺好)
古陶磁を勉強するため壺中居を紹介される。
1992年 個展(名古屋松坂屋)
東京美術倶楽部「ニューアートウェーブV」出品
1994年 個展「蜜象嵌展」(神田・工芸サロン壺好)
初個展「鉢のかたち」(日本橋・壺中居)
1995年 「象嵌コーヒーカップ展」(日本橋三越)
「灰釉陶器展」(日本橋島屋)
1997年 「灰釉陶器展」(燈々庵ギャラリー)
二人展 ジュフ・シャピロ(ニューヨーク・ギャラリーDAIICH)
「食器展」(ギャラリー・レトアール)
1998年 伝統工芸新作展第30回記念賞受賞
1999年 「象嵌鉢展」(日本橋三越)
「食器展」(ギャラリー・レトアール)
2000年 「空想する宴展」(日本橋・壺中居)
この頃から、毎年パリに出掛ける。
2001年 個展(日本橋三越)2003、2005
2002年 個展(日本橋・壺中居)
2003年 個展(銀座・黒田陶苑)
2006年 6回のパリ小旅行によって、日本美術と西洋美術の往復を体験し、色合いの濃い存在感のある作品の制作を目指すようになる。
2007年 「象嵌陶芸展−季・取取に」(日本橋・壺中居)
2008年 「象嵌陶芸展」(日本橋三越)、2010
2009年 「象嵌陶芸展」(板橋・瑞玉ギャラリー)、2012
2013年 象嵌コーヒーカップを中心に独自のテーブルウェアの世界を目指す。

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