A 自然界のデザインをモチーフにして
薄井歩の作品は、自然界のパターンをモチーフに自らのデザインを組み合わせた立体作品です。約10cmという小さな作品には、表面に彫られた模様の5mm下の層にさらに模様が彫られて重層的になっていたり、彫られた模様が1mmほどの線の集合体であったりと、精緻で端正な表現が用いられています。陶芸の技法を使い、土でかたちを成型し、掌の中でクルクルまわしながらヘラや針を使って模様を彫り、釉薬をかけ焼成してつくられています。骨を思わせる乾いた質感から、漆のような深い光沢のある色彩まで、多様なデザインも魅力です。
B テーマはパライソ=天国
薄井歩は、金沢美術工芸大学大学院陶芸コースで陶芸を学びました。薄井は視力が2.0あり、自らディテールが良く見えると感じています。金沢の周囲の豊かな自然を事細かに観察して1本1本の線、曲線、幾何形体の重なりや連なりから、現在の作品を着想しました。
タイトルの「パライソ」はポルトガル語で「天国」を意味し、薄井のこうした作品のような宝物がいくつも落ちている海辺をイメージしてつけられています。