やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

毛塚友梨 展 −陶 蒼い心−<br>Kezuka Yuri Exhibition

毛塚友梨 展 −陶 蒼い心−
Kezuka Yuri Exhibition

2012年7月5日(木)〜7月31日(火)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク  7月5日(木)18:30〜19:00

プレスリリースpdf_icon_s.gif ※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

「愛-参(紙袋)」紙袋サイズH24×W21×D12cm
蛇口サイズH11×W9×D25cm  2011



展示会概要
毛塚友梨の作品は、蒼い釉薬が印象的な陶によるインスタレーションです。
「愛 壱ー伍」(2011)は、5つの容器に5つの蛇口から、それぞれに何かが注ぎ込まれる場面がつくられています。注ぐのは水道の蛇口、水洗金具の壊れたもの、湯沸し器などで、受け入れるのは大きなバケツ、歪んだ鍋、牛乳パック、紙袋、割れた茶碗です。日用品をモチーフに選び、簡単には注ぎ込めない状況から、注ぎ口と受け皿を一筋縄ではいかない人間関係に喩えた作品です。
端正な造形と、陶器に置き換えられ、鮮やかな青色の釉薬で包まれた情景は、詩的で心ひかれる世界をつくり上げています。

毛塚は陶芸家の家に育ち、伝統的な陶芸を目指して東京芸術大学に学びましたが、いつしか身の回りの思い入れのあるモノたちをモチーフに作品を制作するようになりました。2009年の修了制作では、愛用の自転車を陶器で実物大につくり、長い髪をたなびかせて自転車を繰る自分の姿をその影として組み合わせた作品で、新しい世界へと羽ばたいて行く若者の心象風景を爽やかに表しました。

青い風景は幼少から好きだった水色、深い海のような群青色のイメージで、いつも毛塚の心を映してきました。毛塚にはこの他にも、古陶器を思わせる、灰釉や赤土を使った勉強机やバスルームをモチーフにした作品もあります。どの作品も土や釉薬の美しさ、豊かさなどやきものの表情も見どころです。

今展では、水道の蛇口とコップ、バケツ、ビン、割れた壷など8点の容器を組み合わせた新作インスタレーションを発表します。蒼が満々と湛えられたモノたちは、観る者をどのような世界に誘ってくれるでしょうか。どうぞ会場でご覧ください。

毛塚友梨

毛塚友梨 毛塚友梨

毛塚友梨

毛塚友梨

2012年 ガレリアセラミカ会場風景

インタビュー
2012年4月24日 インタビュー:大橋恵美(LIXILギャラリー)
大橋 毛塚さんの作品は青い釉薬が印象的ですが、最初に使われたのが「8年間」(2009)でした。この作品はどうしてつくったのですか。
毛塚 これは学部の卒業制作で、高校生から使っている自転車があって、すごく思い入れがあったので、まず漠然と自転車をつくりたい、それも陶器でつくりたいと思い、大学を卒業して長かった学生生活が終わり社会に出て行くので、そのことも表わそうと思い、じゃ影に自分の姿をつくろうと考えて作品になりました。
私は夫がイラン人なのですが、イランの陶器はペルシャンブルーできれいな釉薬が多いのでその影響を受けています。もともと水色が一番好きな色で、青が好きなのは子供の頃からなんです。
大橋 陶芸科を選択されて、どんな作家になりたいと思っていましたか。
毛塚 私の家は父親が益子で修行した後に独立して陶芸をやっている家で、父は伝統的な作品をつくっていたので、私も漠然と人間国宝みたいな作品をつくりたいと思って芸大に入りました。
でもうつわをつくる課題が出て、やってみたらどうも親がやっていた感じになってしまうんです。先生にも自分のかたちを探せと言われたのですが、食器自体に興味が持てなかったんです。
それで、自分のやりたいことはなんだろうとしばらく考えて、芸大の試験では粘土で模刻と言ってものをそっくりにつくったり、配置をかっこよくしたりすることをよく勉強して面白かったのですが、そういうことを生かすのなら、現代的な陶芸なんじゃないかという感じで最初が自転車になっちゃったんです。
大橋 「思い出す限りでは」(2010)はバスルームの作品ですが、この時は青色ではありませんでした。同様にバスルームの後に「忍耐」という机まわりの風景をつくられた。
毛塚 青色以外にも、昔からの茶碗に使われているような色あいも好きで、錆びたような色を出したくて、「思い出す限りでは」こうしてみたんです。
「忍耐」は、留学しようと思って3年間英語を毎日朝から晩まで勉強していたことがきっかけでつくりました。
学生結婚だったのですが、主人に出合ったのをきっかけにアメリカに留学しようと思い、毎日猛勉強をしていたのですが、葛藤があって、本当は作品がつくりたいのに英語を勉強しなくてはならない、それなのに大してスコアも伸びない、そういう日々を表現したんです。いつもものをつくる時には喩えがあるというか、この机は、誰でも何かをやるためには積み重ねが必要だというイメージです。
大橋 「焦燥」も「忍耐」も同じつくりかたですか。
毛塚 そうです。私は紐づくりにこだわっていて、たたらも縄状にしたものでつくります。グルグルと巻くように始まったものがドンドン広がって、目がつぶれないように片側だけをくっつけます。そうすると溝が残るので、溝が残る方を表にして2枚を貼り付けています。たたらの時点で型で切り、2枚を重ね、皺になる所には下に新聞紙を入れて、そのまま焼くと燃えて消えて作品だけ残ります。ヒビも焼きで入ったヒビで、紐と紐の繋ぎ目にヒビが入るのですが、割れたところから模様がつながっていきます。
大橋 「愛」(2011)でまた青色に戻ります。油絵の具やクレヨンで描かれたものが、立体になっているかのような鮮やかな存在感です。これはどんな思いでつくられたのですか。
毛塚 この作品は最初から青色にしようと決めていました。これは段階で表現するということをやってみようと思ったんです。
下の入れものが心を表していて、蛇口の方が外部や、周囲からの影響、それに注がれるものと言うイメージです。
5点あって、最初が一番受け入れやすいもの、2番目なると容器が小さくなって入りにくくなっていきます。水を注いでも、紙袋で流れ出してしまったり、牛乳のパックはもともとは注げるものなのに、破れていると注げません、注ぐ方も悪いところがあると注ぐこともできないと言う意味です。
最後は3つの容器が壊れていますが、容器がたくさんあっても注げないので、例えシャワーのように注ぎやすいものでも意味がないということです。
この作品のきっかけは、高校時代のお友達が精神的な原因で亡くなってしまったことです。なんとあっけないことかと思いました。そういうことがあるということを表現する、そして世の中に伝えたいと考えました。
大橋 つくることで気持ちの整理はつきましたか。
毛塚 自分でも精神的に少しですけど、前に進めたかなと思います。
大橋 これからも続けて行けそうですか。
毛塚 自分の中のプランとしては順調です。力を入れて前に進んでいかなくてはいけないと考えています。
生活の中で疑問に感じたことを、思いつくと手帖に描いて、こういうのはどうだろうかといつも考えています。
これまでアルバイトでも陶芸とは全然関係のないことをしてきました。
最近は接客業がやりたくて、お寿司屋さんで働きました。家業も陶芸だったので、他の世界を覗いてみたいんです。そこで作品のネタを探しています。
お客さんと話したり、職場環境の全然違う人と話したり、いろんな人との出会いがあって、幅広く友達と出会うことで視野を広げていきたいと考えています。そういうことをものに置き換えて、喩えで表現していくことを自分のスタイルとして確立していきたいと思います。
大橋 好きな作家はいますか。
毛塚 好きな作家は深見陶治先生 鯉江良二先生です。
私は旅行が大好きで、夫の国イランへも首都テヘランやマシャド、イスファファンに行きました。とてもきれいでほんとうに感動しました。空の色も湿気がないので真っ青で、強い日差しの中を黒いチャドルを来た女性がたくさん歩いていている風景もきれいでした。モスクも広くて精緻で神聖な緊張感がありました。
イランでも美しい様々な青がありますが、私の青のイメージは海の底なんです。沖縄の海の好き透った感じです。色々な物に興味があるので、他の様々な色も好きなのですが、最後に疲れて戻ってくるところが青色なんです。青色は癒しの色でもあります。
建築でも美術でも全般的になんでも見に行きます。偏らないようにと意識して考えていないと、陶芸しか目に入らなくなりますから。
これからもっともっと度肝を抜くようなものをつくりたいと思っています。
作家略歴
1984年 栃木県生まれ
2003年 作新学院高等学校 卒業
2009年 東京藝術大学美術学部 卒業
主な展示
2009年 LandscapeⅪ展(Pepper's Gallery 銀座)
2010年 SICF11(スパイラル)
杜窯会作陶展(日本橋三越本店)
第19回 SOSABEOL国際芸術シンポジウム(韓国)
2011年 土土土工展(TURNER GALLERY 1F)
Blijven展 (G671gallery 銀座)
杜窯会作陶展(日本橋三越本店)
京畿世界陶磁ビエンナーレ国際公募展(ワールドセラミックセンター 韓国)
YOUNG ARTISTS JAPAN VOL.4(ラフォーレミュージアム六本木)
2012年 SICF13(スパイラル 南青山)
Young Art Taipei(台湾 台北市)
2nd International Ceramic Triennal UNICUM 2012(スロヴェニア マリボル)
受賞
2011年 京畿世界陶磁ビエンナーレ国際公募展 入選
YOUNG ARTISTS JAPAN VOL.4 小暮ともこ賞、石井信賞
2012年 2nd International Ceramic Triennal UNICUM入選

ページの先頭へ

LIXIL Link to Good Living

Copyright © LIXIL Corporation. All rights reserved.