やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

高柳むつみ 展 −くうきをうつす 磁器/やまびこのアロー−<br>Takayanagi Mutsumi Exhibition

高柳むつみ 展 −くうきをうつす 磁器/やまびこのアロー−
Takayanagi Mutsumi Exhibition

2011年1月11日(火)〜2月1日(火)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク  1月11日(火)18:30〜19:00

プレスリリースpdf_icon_s.gif ※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

「からだに飛び込む脳のクラウン」 2010 H600×φ600 mm



展示会概要
高柳むつみの作品は、磁器に古典的な中国風の絵付けや金彩が施された、端正で華やか、凛としたたたずまいのオブジェです。一方で、「からだに飛び込む脳のクラウン」「ひかるひらめき」「転がるアンサー」「ゆうえんちの真実」「ぐるぐるの風景」・・・どれもユーモラスで宇宙的なタイトルが印象的です。オブジェとしての完成度の高さもさることながら、そこに込められたストーリーが作品全体に不思議な求心力を与えています。
プラチナ彩で鈴のついた電球は、マンガでひらめきを表す頭の横に飛び出す記号。うつわを重ねて回転するアンサー。金色の球がお皿に飛び込んで赤いしぶきをあげる「からだに飛び込む脳のクラウン」は、頭ばかりではなく全身で考えたいという思いを表し、ひらめいたアイデアが転がって大きくなり、からだ全部で表現するという思いにつながります。
「ゆうえんちの真実」では地元富山の立山曼荼羅から地獄絵図をモチーフにして、地獄の七層を下るテーマパークを九谷焼の壺を模して組み立てました。フォルムの違ういくつもの壷や皿がタワー状に積み重なり、壷の天辺から蜘蛛の糸に乗って血の池地獄に下り、鬼に蹴られ、象に踏まれ、鳥に攫われ、火に焼かれ、最後は出口へ。阿鼻叫喚、と見せかけて実は楽しんでいる風景が色鮮やかな絵付けで描かれています。
高柳むつみ

2011年ガレリアセラミカ会場風景

高柳むつみ 高柳むつみ

高柳むつみ 高柳むつみ

高柳は、大学の工芸基礎で、ろくろをひき、窯とやり取りする面白さから陶芸に進みました。在学中にはフィンランドへ留学し生活から生まれるものづくりを学んでいます。大学院に進んだ後は、改めて日本の陶芸の歴史を学びながら、季節を空間へ取り込むことや、異素材との組み合わせで生まれるやきものの魅力を感じ、つくり続けています。新春に華やかな光を呼び込むような高柳むつみの世界をぜひ会場でご覧ください。

高柳むつみ 高柳むつみ

高柳むつみ

インタビュー
2010年10月30日 インタビュー:大橋恵美(INAX文化推進部)
大橋 高柳さんの作品は、タイトルにユーモアがあって宇宙的な広がりを感じさせつつ、古典的な釉薬の使い方や端整さが魅力です。タイトルはどうやってつけているのですか。
高柳 物語を組み立てる途中で思いついたり、逆に題名が決まるとパッとストーリーが浮かんだりします。
二回生の時の「THRON」は、ドイツ語で王座という意味と俗語でおまるという意味があって、その対照が面白いと思いました。「星座早見盤 トラワレ」は、ろくろで成形して、うつわのかたちをしているけど全く違う機能を持って成立しているものをつくると決めて、何かないかと探していたところ思いつきました。
大橋 中国の昔の発明みたいですね。「ゆうえんちの真実」は中国の絵付けの壷のようです。
高柳 それまで釉薬が中心でしたが、大学院の受験もあって、日本の陶磁器の歴史を勉強していて絵付けに興味を持ったんです。なぜ絵付けは昔のままなのか、もっと変えられないかと思って初めて色絵をやりました。
大橋 「ゆうえんち」という名前ですが、地獄の様子ですか。
高柳 そうです。地元の富山に立山曼荼羅という地獄絵巻があって、それを幼稚園の時に見てすごく衝撃的でした。大きくなってから見直してみると、生き生きしていて、すごく自分のものの見方に影響があったことがわかったんです。昔は人を怖がらせるものだったのですが、今見ると現実味がないので逆に面白いものと捉えてしまう。地獄の遊園地という発想です。雲から蜘蛛の糸が出て、血の池に入り、地獄の七層を下っていきます。昔はお腹が出ているのを餓鬼といったのが今なら肥満だなと思ったり。
大橋 鳥に攫われたり馬に蹴られたり、地獄体験ワールドですね。
高柳 と、見せかけて遊んでいるテーマパークです。遊園地も非日常の場ですし。一番下には一応出口を用意しています。
大橋 怖いけど楽しくて最後に出口があるのが、明るい性格なのかもしれませんね。
高柳 仏教系の幼稚園で「蜘蛛の糸」のような話をすごく聞かされました。隣にお墓があって、どろどろという音を先生がオルガンで弾いて脅かしながら片付けをさせるんです。富山には「もうもう」という子供が悪い事をすると来る妖怪がいるのですが、押入れに入れられた時に見えました。ふわふわしていて、虎のような感じでした。
大橋 すごいですね。きっとそこで今の高柳さんが形づくられて、何かつくろうとするとすっと出てくるのではないですか。
高柳 「ぐるぐるの風景」は、流行も含めて世界の流れが回ってスパイラル状になって進んでいるなと実感した時があったんです。かたち自体はうつわからイメージしていますが、中にあるものを引っ張りぬいたようなイメージでつくっています。
大橋 うつわでは内と外ということよく言いますが、ひっくり返すような感じですか。
高柳 内と外の間にもう一層あって、その間の厚みに何があるのかがすごく気になっています。間に何かがいるような、期待とか恐怖とかがあるのかもしれません。
大橋 2008年にフィンランドへ留学されましたね。
高柳 信楽陶芸の森でカイ・フランクのミルクピッチャーを見たときにすごく感動したんです。北欧は寒くて二重窓なのですが、その隙間を冷蔵庫代わりにして丁度入れられるサイズで、新鮮なミルクを使えるようにするというものでした。そういう、自分の生活から発見するものづくりというのに興味を持っていたら、交換留学の報告会で、そのアラビア社の工房の上にある大学に行けるというのを知って興味を持って。
大橋 フィンランドの職人さんの、日本人とは違うセンスを感じましたか。
高柳 すごくシンプルで凝ったりしないけれど上手い、という感じです。既にあるものからちょっとの差で全然違うものを見つけてつくり出していく。
在学中はデザインの授業だったので、今までと違うつくり方というのに刺激を受けていましたが、段々消化してきた気がします。
大橋 「転がるアンサー」は、タイトルがとても素敵です。答えがくるくる変るということですか。
高柳 自分の頭の中にあるものを巻き込んで雪だるまのようになって、答えが出る。それで中にくるくる回る玉が入っています。「ひかるひらめき」でひらめいて、転がるアンサーで答えが出るというイメージです。「からだに飛び込む脳のクラウン」は頭でばかり考えていないで体で答えを出したいという自分の基本そのままがかたちになっています。脳が飛び込んでできる血管のミルククラウンに、下は臓器です。
大橋 美しくて、祭器のような感じです。
高柳 仏像だとか、そういう強い存在感、揺るがないイメージには興味があります。それはやきものも持っていて、魅力のひとつだと思います。
大橋 高柳さんはどうして陶芸を選んだのですか。
高柳 工芸基礎でやった時に、ろくろをひくのと薪窯を焚くのが楽しかったんです。自分の知らないところで変化していくというのが面白かった。土と自分の間にろくろが入って駆け引きしている感じや、窯とのやり取りが好きです。全身を使っているという実感があって、特に大きいものをひいている時の方が体を使っている感じがします。逆に、最後の最後に窯に預けて変えてもらうというのも魅力です。
大橋 端正な作品ですが、収縮率の計算など、自分にとっての成功率というのは高い方ですか。
高柳 ある程度経験してこうなるだろうというのはありますけど、今でも絵付けの焼成前と後の色が全然違ったりすることに驚いています。ただ失敗する時は逆によい方向へ作品を持っていけるチャンスでもあって、爆発した作品から代替で紐を使ったり、自分の回路を変えられる機会と思っています。
大橋 鏡や電球と組み合わせた作品もありますが、異素材を入れることについてはどう思いますか。
高柳 異素材を使うのは昔から好きでした。やきものだけでやらないといけない、みたいなこともあるんですが、自分としてはやきものは異素材と相性がいいのが魅力と思っているので、使ってもいいのではないかと思いながら使っています。
大橋 高柳さんの技法は古典を踏襲している部分もあるわけですが、パロディやキッチュにもなりかねない部分もありますよね。
高柳 キッチュな感じをどうしたら無くせるかというのも課題です。やっぱり自分でやると職人さんの足元にも及ばなくて安っぽさを感じてしまう。伝統というものを意識し始めたのは四回生からですが、今は続いてきたものの中に自分がいて、変えて、続いていくんだという思いでやっています。
作家略歴
1985 富山県出身
2008 京都市立芸術大学 卒業
ヘルシンキ芸術大学に派遣留学
2010 京都市立芸術大学大学院 陶磁器専攻科修了
展覧会
2005 京都市立芸術大学 作品展 : 京都市美術館(2010年まで各年)
2007 手のひらカフェ / 蔵
陶テン /ギャラリー集
2008 手のひらカフェ’08 /堺町画廊
2009 Led by Form - Production in Series /フィスカルス,フィンランド
手のひらカフェ’09 /堺町画廊
アジア現代陶芸 新世代の交感展 /愛知県陶磁資料館
四条ストリートギャラリー /高島屋 京都店
2010 手のひらカフェ’10 /monoff
懐石の器展 /ギャラリー器館
もうそうのふきだし展 /ギャラリーマロニエ
アジア現代陶芸展 /弘益大学,韓国
受賞歴
2008 京都市立芸術大学 作品展 市長賞
2010 京都市立芸術大学 作品展 同窓会賞

ページの先頭へ

LIXIL Link to Good Living

Copyright © LIXIL Corporation. All rights reserved.