やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

梶木 奈穂 展 -古陶磁的 チャイナドリーム-

梶木 奈穂 展 -古陶磁的 チャイナドリーム-

2009年7月7日(火)〜8月1日(土)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク 2009年7月7日(火) 18:30〜19:00

プレスリリースpdf_icon_s.gif ※ご覧いただくにはAdobe Reader が必要です。

Photo:  「再回帰線」 2009 W30/D26/H16cm



展示会概要
梶木奈穂(Kajiki Naho)さんの作品は、白い磁土に色鮮やかな絵付けをしたユーモラスなオブジェです。1点の大きさは30〜50cmで、5〜6点でひとつの世界をつくります。
梶木奈穂さんは2008年に大学院を修了したばかりの20代。大学院1年の制作展では「カジキュー拝ランド」を制作しました。
「カジキュー」は苗字の梶木と「富士急ハイランド」をもじって名づけられています。梶木さんは作品タイトルを先に考え、音や韻を踏む言葉から連想して作品をつくります。
真ん中に置かれた「HONZON(本尊)」は、金色の唐草模様付桃の上に載った青磁の茶碗です。両脇に小さな仏像がメリーゴーランドに乗った「蓮花メリー壷」と、これまた小さな涅槃仏がシーソーに乗った「蓮の上シーソー壷」を従えています。読経の際に鳴らす鐘は「乳滴鐘」で、ミルクのクラウンのかたちをしています。
なんとも愛らしく、誰もがくすっと笑ってしまう世界。中国雑貨のユーモラスさと「ボーンチャイナ」伝統の美しい絵付けが合わさり愛玩したくなるような作品です。
昨年の二人展「天邪鬼」でも、地球儀、ランチュウのような水盤、盆栽や曼荼羅など、誰もが知っているモチーフを基にして、独創的なかたちをつくり上げました。全方向から眺めて飽きない細部にこだわった作品です。
梶木奈穂

2009 / INAX ガレリア セラミカ会場

梶木奈穂梶木奈穂

(左)「改変theワールド」2008 W42×D18×H30cm (右)「メゾン蓬莱」2009 W35×D35×H40cm 

梶木奈穂梶木奈穂

「月台(プラットフォーム)」2009 W65×D35×H18cm 

梶木奈穂さんのこの独特の感覚は、幼い頃から「キョンシー」映画が大好きで、アジアの呪術的な世界に惹かれ、景徳鎮へ留学したことがベースにあります。同じ中華的エキゾチズムでも、香港や台湾の都会的なキッチュな感覚よりも、本土の土っぽい感覚が好きで、今展では昨年訪れた重慶をモチーフに新作が登場します。
重慶の霧深い長江の川原、射的やお面を売っているレトロな出店。そのタイムスリップしたような不思議な雰囲気をモチーフに制作をします。中国茶器、占い盤、双六などをモチーフにしたオブジェで構成された「マボロシ・チョンキンパーク」が展示される予定です。
中国古陶磁の緻密で繊細な表現をかりながら、愛玩したいコンテンポラリーオブジェをつくりだす梶木奈穂さんの世界をお楽しみください。
梶木奈穂

「算命池」2009 サイズ可変 H2cm

梶木奈穂

「重慶縮景」2009 W50×D30×H25cm

インタビュー
2009年5月1日 インタビュー:大橋恵美 (INAX文化推進部)
大橋 梶木さんの作品は染付が印象的ですが、絵付けがお好きなんですか。
梶木 最初は上絵への興味から入ったんです。 筑波大の窯芸コースに入ったんですけど、陶芸の単位が少なくてそれだけでは卒業もできないんです。私はその前にいた日本画コースの時の単位と合わせて取得しました。
大橋 梶木さんは何をやりたくて筑波大に進んだのですか。
梶木 もともとは白稜高校という進学校へ入学して、東大の法学部にでも行きたいと思っていたんですが、実際に高校に入ってみたら皆がすごかった。そこで大学4年間は好きな事をやって普通に就職しようと思った。その時何が好きか考えて、絵を描くのが好きだったので、美術系に行こうと思ったんです。条件として国公立で、現役で、日本画でと探したら、筑波大になった。日本画に憧れていたんですが、入ってみたら、実際にはひとつひとつのプロセスが苦痛でしかなかった。写生し、拡大し、トレースし、胡粉団子つくって、水干やって、やっと岩絵の具になる。作業が単調で、早く描きたいのにと思いました。 2年生の時に基礎の授業の陶芸で器をつくったら「しまった、こっちやった」と思った。それでなんとか窯芸へ転科したんです。 大学では中国語も専攻していて、中国語学の先生に「卒業したら中国に語学留学をしようと思います」と言ったら、「行くのなら語学でなく専門で行きなさい」とアドバイスされ、奨学金について調べて志望を出したのですが、「あなたには景徳鎮陶瓷学院に行ってもらいます」ということになった。陶芸をやっていたので学校の存在自体は知っていたのですが、嬉しいのと同時に怖かったです。そんな縁で1年半留学しました。
大橋 梶木さんは日本では陶土だったんですか。
梶木 いいえ、陶芸始めて半年くらいから磁土でした。ロクロで。 でも景徳鎮では授業のタイミングで染付の授業になかなか当たらなかった。せっかく来ているので染付をやりたいと思って、近くの工場で茶器とかつくっている職人さんの横で、お願いして練習させてもらいました。すごく面白かった。
大橋 景徳鎮での滞在が今の梶木さんをつくっている感じがしますね。
梶木 物価が安いので海外からたくさん人が来ていて、皆そこに家を買ったり、借りたりして作品をつくっているんです。窯は毎日必ずどこかで焚いているので、いつでも焼いてもらえるんです。
大橋 それはすごく良いですね。
梶木 そうして景徳鎮ではどっぷり伝統に浸かっていたんですけど、留学する前に 茨城県陶芸美術館の「現代陶芸の華」という展覧会で、川口淳先生の作品を初めて観て衝撃を受けた。伝統も大事だけど、オブジェも気になって、自分の気になる作家さん達が京都市立芸大を出ていたので、京都市立芸大の大学院へ進んだんです。川口先生に近づこうと。
大橋 タイトルもそうですけど、中国的なモチーフがたくさん出てくるのは景徳鎮へ留学してからですか。
梶木 オブジェ作品で初めてつくったのが、「駱駝走絲繍之路」(2006年)なんです。2作目が「飛往銀河」(2006年)で、この時までは文様の写しとか絶対しんとこうと思って、技術を抑えて、京芸っぽいオブジェをつくろうと思っていたんです。でも抑えているとフラストレーションが溜まって。でも何かをやると誰かに似ていると思われるのが怖くて中途半端だったのが、最後の方の制作展の頃に爆発した。川口先生もその年度でやめちゃうし、自分の中ではこれが最後みたいな感じでした。
大橋 そそれが「カジキュー拝ランド」(2007年)ですね。ようやく梶木さんらしくなった。 できる人の陥りやすい罠は、体には合わないのにやれるような気がしていっちゃう。個々の持っている感性はもっと深くて色々なのに、立派だと言われるものをまず押さえてから最後に自分のものにいこうとする。梶木さんらしいものとは中華的なエキゾチズムですか。
梶木 中国は小さな頃から好きだったんで根強い。 キョンシーの世代なんです。その話をある先生にしたら、日本の子供がアジアのものを見て衝撃を受けるのは、すっかり西洋化してしまったからだと言われたので、ほんまにそうやなと思って。呪術的なおまじないの世界が衝撃的で、キョンシーの世界が忘れられないんです。
大橋 作品は愛でたり、愛玩したりするものという意識はあるんですか。
梶木 私の作品は工芸でありたい。家の中に置いてあって、ちょっと開けてみようかなと。
大橋 それは愛玩したり、にやっと笑ったりするものですよね。特に中国の工芸品にはよく見かけますね。
梶木 景徳鎮の骨董市場でそういうものを見かけて、うちはこういうのに感動するんや、面白いと思うんやと。
大橋 つくる時にはどういう仕組みにするか最初に考えるんですか。
梶木 いいえ、最初はタイトルから考えるんです。散歩の時思いついた言葉とか、ヒップホップが好きなのでラップで韻を踏んでいるみたいな感じで、イメージを膨らませて、つくりたいかたちを合わせていく。
大橋 物語を自分の中でつくるんですか。
梶木 「あばよ達」(2007年)は葬式のイメージで、基本的にだいたい作品は暗いんです。
大橋 ブラックユーモアみたいなものが利いているのが、皆を捕らえる。
梶木 この時赤土を使ってみて、私はやっぱり磁土が好きで、完全に磁土用の手になっていると思いました。染付もやり続けたいのですが、今は色絵よりも釉薬でやっていきたいと思います。「ワタシマグロ」(2008年)では辰砂を使ったんです。
大橋 これからまた6月には中国に行かれるんですよね。
梶木 重慶です。向こうの学校に勤務する予定なんです。でも現在の職業はニートです。陶芸家、作家ではないんです。作品を売って食べたくないんです。就職するなりバイトするなりで生活はしたいんです。
大橋 重慶は古都で良い街なんですよね。
梶木 重慶と言うより中国に身を置きたいんです。台湾も香港も好きなんですけど、やっぱり大陸の土っぽい感じが一番合う。
大橋 今展はどんな展示になりますか。
梶木 重慶の学校に視察に行った時に、街がいつもずっと霞んでいた。出店がたくさん出ているタイムスリップしたみたいな所があって、長江の川原で射的やお面を売っていたりするんです。重慶で見た風景を、私は「マボロシ・チョンキンパーク」と名前をつけて、その言葉からイメージを膨らませていこうと思います。中国茶器や中国の占い盤をモチーフにしたものなどで、「チョンキンパーク」をつくりたいと思います。
大橋 聞いているだけで欲しくなってきました。(笑)楽しみにしています。
作家略歴
1981 兵庫県姫路市出身
2006 筑波大学芸術専門学群特別カリキュラム窯芸コース卒業(2002年日本画コースから転科)
2008 京都市立芸術大学美術研究科陶磁器専攻修了
2003
〜2005
中国政府奨学金にて景徳鎮陶瓷学院留学
個展
2006 かじき・じき展(ギャラリー北野坂//神戸)
グループ展
2006 陶のかたち展(ギャラリー北野坂/神戸)(’08、’09)
2007 ニッポニアニッポン展(ギャラリー北野坂/神戸)
日米美術学生展(ISE Cultural Foundation/ニューヨーク)
PIECES(海岸通ギャラリーCASO/大阪)
日中韓現代陶芸−新世代の交感展−(韓国工芸文化振興院/ソウル)
陶 院2展(京都芸大ギャラリー/京都)
2008 tetete exhibition−with安藤隆一郎、染谷聡(ギャラリー葵庵/京都)
日中韓現代陶芸−新世代の交感展−(石湾陶瓷博物館/中国佛山)
天邪鬼展−with花塚愛−(牙狼画廊/横浜)

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