2008年4月11日 インタビュー:大橋恵美(INAX文化推進部)
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大橋 |
2007年の卒展で声を掛けさせて頂いてから、丸1年位たちましたが、どうされていましたか。
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児玉 |
卒業して、半年は岡山の実家に帰って就職していたのですが、その後こちらに戻ってきて、今年から愛知教育大の6ケ月単位の社会人向けのクラスで制作を再開しました。
帰省している間中、あれをつくりたい、これをつくりたいとずっと考えていたんですよ。
それで今、新しい作品をつくっているんですが、白磁土で器をつくって、中からウワッて生えて行く予定なんですけど、上手く行かなくて。
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大橋 |
白磁土はやっぱり難しいのかもしれないですね。部分がきれいに定着していないという感じですね。これは試行錯誤に未だ時間がかかりますね。
前の作品は海中の生物か、土中から生えてくる植物みたいで、躯体とこのマカロニみたいなものが一体化していましたが、近作は未だ分離していますよね。器の中からこういうものが出てきたというのは、今までのイメージとは違うんですか。
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児玉 |
器は水溜りで、そこから出て来た生命的なものとして、動きを見せて行きたかったんです。 |
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大橋 |
もっと前の作品では箱から出ていましたよね。
これは中島先生の課題のそれぞれが土の表情を100個つくるというのから始まったんですね。
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児玉 |
そうです。100個の中から私はこれを選んで。皆フジツボと呼びます。(笑)
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大橋 |
(笑)フジツボが箱の中や花瓶の中から出てくる。
白磁に変えたのはフジツボをどんな表情にしたかったんですか。
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児玉 |
透き通るイメージにしたかったんです。最初に掛けていた色の釉薬よりもっと透明感が欲しかった。山奥の誰もいない所に溜まっている水のようなイメージです。
パッと見た方からは、珊瑚礁みたいだと言われます。私は育った場所が瀬戸内海に面した家なので、どうしても水のイメージになっていくのかなと思って。無意識に好きだったものが、つくり出して見ると出てきたのかも知れません。
最初中島先生の授業で、自分のかたちをベストスリーに絞れと言われた時には、これは入っていなかった。先生にはこれは捨てろと言われて。でも、立体化した時のイメージが頭の中に出来ていたので、捨てたふりして残しておいた。で、他のものと同時に密かに陰でつくっていたんです。
100個が終る頃、次の課題が出された。「テクスチャーが魅力的に見えるかたち」。ボソボソしたかたちとタタラでつくったツルンとしたかたちで、私はU字型の円柱にフジツボがついている作品を出したんです。そうしたら中島先生もこれ面白いなと。
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大橋 |
このかたちは素敵ですよ。角笛みたいで。U字型はどうしてできたんですか。
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児玉 |
私にとっての陶芸的立体のイメージなんです。そこにフジツボがついていたら素敵だなと。
私は根詰めてつくるのが得意ではないんですが、この時は作業に夢中で楽しかったんですが、胴体の部分はどうして苦手でした。苦手なものはサッサとつくって、早くフジツボをつくりたい。でもある程度の量のフジツボをつけるには、胴体が先に必要で、フジツボの上部は薄いので乾燥が早く、つける時には、フジツボにも力が掛かるんです。
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大橋 |
フジツボの部分は本当にきめ細やかにできていますよね。緑釉の作品は大量のフジツボがきれいで、まるで岩から剥がしてきたように胴体と一体化していますよ。
釉薬が掛かっていて、フジツボがおせんべいみたいにペチャンコになっている土の表情の作品がありますよね。これは胴体をどのように考えていたんでしょうか。
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児玉 |
私は、釉薬は上手く行くんです。思った通りにできて。ツルンとした表面にフジツボをつけたいんです。
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大橋 |
自然界でツルンとしたものにフジツボって付いていますか。船だって塗装の荒れたところについているし、鯨の肌だってザラザラだし、コンクリートもそうですよね。磁土につけるのは難しそう。
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児玉 |
ツルンとした面にコチャコチャしたものがついていると両方が引き立つようなことをしたかったんです。
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大橋 |
児玉さんは美術が好きで、特に陶芸ではなかったそうですね。
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児玉 |
そうです。でも、陶芸には小学4年生の時に出会った。図工の時間にたまたま電気窯が借りられることになったので、陶芸をやってみましょうということなって。
つくった後に、余った土でさらにいくつか適当につくったんですけど、それが新聞に掲載された。
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大橋 |
それは子供には嬉しい体験ですよね。焼成体験はどうだったですか。 |
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児玉 |
経過は見れなくて、焼き上がってから返してもらったんですけど、釉薬の色の変化もビックリで、自分でもこんな商品みたいなものがつくれるんだと嬉しかったです。火とか陶芸ってすごいと思いました。でもその後は美術の高校へ進んだんですけど、好きな絵画でした。私は基礎コースに行って石膏デッサンを描いていたら、自由課題の生徒たちが筆なんか使わないで、手やローラーで、滅茶苦茶に描いていたんです。私はそれまで筆で描かないという考え方自体がなくて、美術って何をやってもいいんだと衝撃でした。本当に楽しかったです。
それで高校卒業後、愛知教育大造形文化コースに進むことにしたんです。ここには、論文だけで実技をしたことがない人も来るんですが。そういう人は突拍子もないことをするのですごく刺激になります。
私は1年生の時から中島先生だったんですけど、自分がいいなと思うものが中島先生と合ったので、すごく楽しかったです。卒業してから悩んで、ここに戻りたくて6ケ月コースで帰ってきましたけど、今、自分が何をつくりたいのか少しわからなくなっています。
それでも初期に戻って、土も今度は白磁土にしてやってみているんです。
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大橋 |
土の性質が違いますから、今つくれないのは技術的なところでしょうか。環境がつくらせてくれることもありますよね。
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児玉 |
あります。服部真紀子さんがいないと困ります。悔しいという感情がないと。(笑) |
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大橋 |
中島先生に負けないというのもありますよね。 |
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児玉 |
絶対いつか横に並んでやるというのがありますね。(笑) |
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大橋 |
離れていてもその感情があれば、どこでも制作できますよ。ここでこれだけ出来た人達が卒業後バラバラになってどうなるのかなとちょっと心配ですけどね。
夜中もつくれたり、ライバルがいたりという良い環境から離れて、今の児玉さんのようにモチベーションを保つのに実際苦労しながらも、つくりたい衝動を維持して、自分が自分のライバルになる位つくらなければならない。早くそこに行って頂きたいというか、つくることに安定できる自分の中身になって欲しいですね。児玉さんは好きなものがいっぱいありますね。
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児玉 |
はい、陶芸に関して言うと、加藤委さんが大好きなんです。委さんは衝動的につくる天才肌なんです。すごくカッコいい。そうなりたいな。服部真紀子さんの作品も、最初はそうでもなかったんですけど、今はすごく良いと思います。隣にいてくれて本当にありがとうって思います。 |
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大橋 |
良い先生と仲間に恵まれてきたんですから、児玉さんもまた今展をきっかけに、ご自分で目指すものに突き進んでくださいね。展覧会楽しみにしています。
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