やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

宮永春香 展 -白陶 やわらかく編む-

宮永春香 展 -白陶 やわらかく編む-

2008年4月4日(金)〜5月1日(木)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク 2008年4月4日(金) 18:30〜19:00

Photo: (上)FEITICO  2007 h12×w11×d80cm  (下)FEITICO  2007 h12×w360×d450cm

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展示会概要
会場の四角く設えられた白い展示台にそっと置かれた、赤ちゃんのソックス、リース、花のような編み物−「FEITICO」=ポルトガル語で「お守り」と名づけられたこの作品は、泥しょうをつけた紙紐を、編み物と同じように鈎針で編むことで出来ています。
会場に出現した12点の白土による作品は、ジュエリーやお守りといった誰かの大切なもの、想いをコレクションするようにつくられています。フロアに直に置かれた作品は、誤って踏んでしまいそうな儚さと同時に、強い思念を象徴するような存在感を放っています。

宮永春香
宮永春香
宮永春香
宮永春香(Miyanaga Haruka)さんは今春大学院博士課程を修了したばかり、金沢で陶芸を始めて8年目になります。 目下のところ、目の前にあるかたちや方法をどんどん試しながら制作をしている最中で、これまで千変万化するように異なる作風の作品を発表して来ました。 内側が灰色の真っ白なメビウスの帯のようなかたち、うねうねとくねる蛇腹で出来ている水生植物群のようなかたち、ボロボロと崩れる地層を立方体に切り取ったかたち。いずれもダイナミックなムーブメントを持ち、モダンでシンプルな印象ながら、大地の根源的な力強さを感じさせることが魅力です。  宮永さんの特徴は、蛇腹は支持体に紙紐を巻くことで、地層は土を型に入れてつくるという風に、常に制作方法と形態が結びついています。作品の肌はいつも骨のように白く硬質ですが、その清らかな美しさを纏ったかたちは必然性のある構造に支えられ、確固たる緊張感に満ちています。 窯を焚く度に、生じた紙の灰は粉として素材へ、或いは焼成後に残るものと消えるものへとテーマが増えて行きます。やきものの魅力をふんだんに生かしながら、可能性を広げている宮永さんの新作展をご覧下さい。
宮永春香
宮永春香

Photo:ガレリアセラミカ会場 2008

インタビュー
2008年2月10日 インタビュー:大橋恵美(INAX文化推進部)
大橋 今日は金沢美大の博士課程修了展を拝見しました。これで学校生活も終わりですね。
宮永 そうです。この後は金沢出身なので実家で制作を続けるつもりです。
大橋 今回、作品が変わられましたね。以前は内と外や、メビウスみたいなものがテーマのようでしたが。
宮永 そうですね。つくり方と形態の結びつきが私のテーマで、どんどん変わっています。今回は紙紐を躯体に使っています。 紙だと表面が毛羽立たないのできれいにできるんです。「虚(そら)と骨」という作品も紙と粘土で制作しています。まず針金で形態をつくって、その上に紙を巻いてホース状のものをつくり、さらに紙紐を巻き付けてジャバラみたいなかたちを出し、粘土を組み合わせてジャバラみたいな部分を写しとります。 ジャバラはつくっている段階では見えなくて、窯から出た時に見て、その驚きから始まりました。粘土は収縮するので、しないものと組み合わせると妨げになってひびが入ることがよくあります。このシリーズではひびが入らないかたちをつくりたかったんです。針金に紙を巻くと、粘土を付ける場所は決まってくるんですね。必然的にかたちが決まります。
大橋 便宜上ホースと呼びますが、ホースで出来るかたちはだいたい決まっていると思うんです。そうするとホースをつくる段階で、つくりたいかたちにつくるわけですね。
宮永 そうです。
大橋 表面が黒っぽい作品と白っぽい作品がありますが。
宮永 黒っぽいのは、紙が燃えた時の炭素が粘土に吸着している状態で、白っぽいのは温度が高くて炭素がすべて抜け切ったものです。焼成温度が倍位違うんです。
大橋 「虚と骨」というタイトルですが、出来てから骨を意識したのですか。
宮永 出来てからです。「虚と実」のようだとか、骨のようだと言われることが多くて、後から「虚と実」の「実」の部分は骨なのかなと思って、置き換えてつけました。
大橋 ご自分では作品の色はどちらが良かったのですか。
宮永 一回窯が壊れて、すごく低い温度で焼けて黒くなったんです。それが面白いなと思って。
大橋 黒とグレー、白とグレーのコントラストの作品はすごく新鮮でした。段々かたちも自在になって来ているようですね。
宮永 私、飽き性というか、同じことをずっと続けるとか、その中で突き詰めるというのができないんです。やり尽したら戻る、展開するという可能性もあると思うんですけど、今は目の前にあるものをどんどんやりたい。
大橋 「虚と骨」の次に「Gathering」ができてきますが、これは随分大きな作品ですね。
宮永 ちょっとつくり方を変えてみたんです。それまでは針金を芯にしていたのを、紐を結んでネット状にしてそれに紙を巻いているんです。うねうねとしたかたちが出来るのでその形態が良いと思って。
大橋 これは骨というより生きもののようです。
宮永 これをつくった時に言われたのが、一部が壊れながらも根を張った生命感みたいなものがあると。それは確かだなと。つくった後からですけど。
大橋 欠けたことで表情が増えて魅力が増した感じです。
宮永 この後が「Binary unit」。これは、かたちが全然違いますが原点は「虚(そら)と骨」にあります。窯から出した時に、紙が燃えた灰が残るので、それを取り除く作業が必要となる。それが新しいものを発見、発掘するような感じなんですね。その時に粉を使おうと思いついた。焼いて溶ける物質と、焼いても溶けない物質があって、配合して焼いてみたら柔らかい塊になると思って。今になってみるとそういうことをされている方っていっぱいいらして、まねしたみたいなんですけど。つくる中で最初の意図とは違った面白さが出てきた。
大橋 発掘という発想は楽しいですね。土をキューブに切り取ったかたちも土の断層のようです。
宮永 それは焼く前は粉の状態なので型をつくらなければならない。まず、つくりやすいかたちだった。中に入れるものが有機的なので、それとの対比を見せることはできるだろうと思いました。
大橋 球体で始まった人が、途中で四角くなることは少ないと思いますし、キューブは宮永さん自身が意識してつくるかたちより強いです。 この後、金沢21世紀美術館の「珪藻土のプロジェクト」を拝見したわけですが、宮永さんにとって大変な仕事ではありませんでしたか。
宮永 大変でした。作品自体は楽しくつくれましたが、ぽわっとした学生だったのに、美術館の現場にぽいっと入れられて。すごく勉強になりました。本当に厳しい所は先生方がされましたが、そういう現場に入れたことは良かった。
大橋 「珪藻土プロジェクト」では何人かの作家が舞台となる部分を制作して、その上でダンスや芝居が上演されたわけですが、展示プランというのはどのように決められたのですか。
宮永 パフォーマンス担当の藤枝守先生が舞台のイメージを提案し、伊藤公象先生や久世建二先生がそれを受けてインスタレーションのプランが決まりました。舞台周囲の「層」と言っていたんですけど、その部分を各々が分担したんです。各々が10案位提案して、そこから先生方が宮永のはこれと選ばれた。終わった後は、自然物だけの廃棄物を土に戻す会社があるのでそこに引き取ってもらいました。
大橋 私達も偶然でしたが遭遇できて、それまで知っていた宮永さんの魅力が開花した気がしました。今展の作品はどのようになりますか。
宮永 2006年の村松画廊の個展では、会場に色々な要素の作品を展示し過ぎたと思いました。
大橋 これまでの集約みたいなつもりで入れたのですか。
宮永 それぞれの作品が、私の中では変わっていないのに、見え方も与える印象も違うと言われました。それでひとつひとつの作品が、どういう印象を与えるのか考えるようになりました。大橋:宮永さんは、無意識につくっているものを、人に言われてから検証していませんか。 宮永:そうですね、でも聞きたくなっちゃうんです。人から言われることもそうですが、完成した自分の作品から、最初の意図とは異なる印象を受けて、そのイメージを次の作品に繋げていくことで制作を展開させています。今回は結び目の作品に原点があります。
大橋 それで今展では紙紐でつくった作品になるんですね。
宮永 はい。鈎針で編みました。紙紐を編んで出来たものから、ジュエリーやお守りといった印象を受けたので、それらをコレクションする感覚で編み進めています。
大橋 宮永さんの新しい作品は編みをモチーフにしていますよね。そういう作品はセラミカでは既に2006年に開催しているので、ちょっと困っているんです。宮永さんもまだ変わり始めたばかりだから、質量とももっと変わる気がしていますが。
宮永 そうですか。学部から作品を見てくださっている先生がいて、その先生からも新しい作品は大分これまでとは違う受け取られ方をすると思うから、覚悟しておいた方が良いよって言われています。
大橋 (笑)。新しい作品に宮永さんらしさが出るといいですね。
作家略歴
1980 金沢生まれ
2005 金沢美術工芸大学大学院 修士課程美術工芸研究科 修了 / 同大学院博士課程入学
2008 金沢美術工芸大学大学院 博士課程美術工芸研究科 満期修了 
■ 個展
2006 村松画廊(東京)、ギャラリー点(金沢)
■ グループ展
2002 第40回北陸中日美術展(石川県立美術館)
2003 金沢美術工芸大学第44回美術工芸学部卒業制作展(金沢美術工芸大学)、第41回北陸中日美術展(石川県立美術館)、第41回朝日陶芸展、吉野谷アート&クラフト展2003(吉野谷工芸の里/石川)
2004 再起−珪藻土の新たな活用−(金沢美術工芸大学敷地内旧本部長校舎/金沢)
2005 珪藻土アートプロジェクトInstallation「生命・珪藻賛〜1200万年前の海底から」(金沢21世紀美術館)、「土を焼く人為・その有機と無機の間に」金沢美術工芸大学伊藤公象研究室(ギャラリー那珂/金沢)、金沢美術工芸大学第23回大学院修了制作展(金沢21世紀美術館/市民ギャラリー)、日韓現代陶芸新世代の交感展2005(愛知県陶磁資料館/瀬戸)
2007 existence of TEN  −10人の美術家たち−(ギャラリー点/金沢)、RESONANCE−共鳴−能登半島地震復興支援のためのチャリティー展(ギャラリー点/金沢)、collaboration 結実の土・陶の美(G-WINGギャラリー四緑園/金沢)、第二回世界文化遺産 白川郷芸術祭(五箇山合掌の里会場:羽場家)、第9回金沢美術工芸大学大学院博士課程修了研究作品展(金沢美術工芸大学)
2008 existence of TEN vol.2 −10人の美術家たち−(ギャラリー点/金沢)
■ 賞歴、その他
2006 第41回朝日陶芸展 秀作賞(2003)、第40、41回北陸中日美術展 入選(2002,2003) 吉野谷アート&クラフト展2003 佳作賞(2003) 津幡町文化会館 シグナス (石川県)に作品設置(2005) 金沢美術工芸大学大学院修了制作買取(2005) 金沢美術工芸大学大学院博士課程修了制作買取(2008) 

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