2007年11月3日 インタビュー:大橋恵美(INAX文化推進部)
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大橋 |
服部さんの作品には「愛教大の造形展」で出会ったのですが、最初から大きな作品でしたね。
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服部 |
作品らしくなったのが2006年で、未だ1年しかたっていないんです。作品点数が少ないので、個展にどれ位出せばいいのかわからなくて。
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大橋 |
すでに朝日陶芸展と女流陶芸展に出されていますけど、その時はどうだったんですか。
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服部 |
事故りました。自分の車を自分で運転して京都の街中を走っている時に、急ブレーキをかけて作品が転がりました。それで欠けてしまって。
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大橋 |
でも欠けてもわからないですよね。
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服部 |
わからないです。(笑)出っ張った所からなくなっていく。重さも20キロくらいあるので窯詰めの時から誰かいないと成り立たないんです。陶芸室の人には迷惑をかけています、感謝しています。
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大橋 |
カンナ屑のような薄い土片が密集していますが、この中の支持体はどうなっているんですか。
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服部 |
中の底から貼り付け出して、外側へと広げていくんです。広がったものがそのまま反り返っていって、丸くなったものが初期の作品です。
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大橋 |
そもそもこういうものをつくろうと思ったきっかけは。
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服部 |
自分でもよくわからないんですが、中島晴美先生の授業で土の表情を探るというのがあって100種類つくったんです。同じ学年の8人がそれぞれがつくって800種類。色々、柔らかい感じ、優しい感じ、ぴっちりしたのとかそれぞれの個性が出ていたんですが、私は3年生で陶芸を専攻した時から、土の柔らかいクニャッとした女性的な、官能的なところがずっと好きで。かたちは後からついてきたんです。
自分の手の中でキュッと締めた時の感じが良かったんです。最初の頃は襞が大きかったけど、どんどん単位が小さくなりました。
中島先生の課題は100という単位が多くて、デッサンで円柱を100枚描くというのもありました。
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大橋 |
その位の物量をやらないと駄目だということですね。800種類もあると似ているものが出て来きませんか。
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服部 |
隣の人がやっているのを見てつくったとしても、それぞれの個性が違うので、始めは似ていても段々違うものになるんです。
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大橋 |
1点をつくるのにどの位時間がかかりますか。
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服部 |
1ケ月以上かかります。分厚いので1ケ月位乾燥させてからガス窯で焼きます。
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大橋 |
生地に釉薬を掛けたことはありますか。
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服部 |
ありますが、そうすると襞の上に膜がかかって一番見せたい繊細な部分が埋まってしまうし、陰影がすごく不自然になります。だからやめました。私の作品はよく土じゃないみたいと言われます。何か柔らかいもので出来ているようだと言われます。
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大橋 |
そういう驚きはあります。思わず触りたくなりますし、すごい量感を感じます。最近は円錐や円盤や色々なかたちが生まれてきていますね。
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服部 |
最初は土の表情それだけで面白くて、結果こういうかたちになっちゃったという流れだったんですけど、意識が変わってきて、襞のクシャクシャにぴったり合うかたちというのがあるのではないかと考えるようになりました。ぴっちりしたかたち、きれいなかたちというのに自分で拘るようになってきた。それまでは多少歪んでいようと気にならなかったんですが、今は気になる。公募展に出しても自分のはすごく未完成だと思ったり。
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大橋 |
それは段々理想が高くなります。でも、最初につくった作品には自然に生まれて来たような原始的な力があります。
花器の口にヒラヒラがついている作品がありますね。
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服部 |
ある意味これが最初です。手びねりとたたら、ろくろと手びねりとか二つの技法を使って花器をつくるという課題が出て、これが出来たんですけど、花を飾る必要がないと言われた。課題としては駄目なんですけど、自分の中ではここから始まったという気がする。
4年生になって教育実習に行って帰って来てから、もう一度思い出してこれをつくったんです。
私の作品は、器の「包み込む」みたいな、用途を越えた概念としての器を連想するところから出て来るんです。
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大橋 |
新作では土も変わって黒い作品になっていますね。
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服部 |
土は新しいものを見つけた。肌理の細かさはありますね。これまでのは、カサカサした感じが出ちゃうんですけど、生っぽい感じを出せるような土を探して、見つけたのがクロマイトを混ぜた土。濡れている時はグロテスクな感じがする位生っぽい土です。
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大橋 |
さらに繊細な表情が可能になりますね。新作では、外側には貼り付けなくなりましたが。
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服部 |
自分の中では襞は中から外へと広がっていくというのではなく、逆に襞の中へ落ち込んで行くという感じなんですね。花開くイメージのように見られるんですが、内側に落ち込んでいくイメージなんです。砂時計みたいに落ちていく。覗き込んで自分が作品の内側へ入り込んでいくような感じ。
今回の作品では外に貼り付けるとイメージが違うと思い、張り付けなかったけれど、作品によっては貼り付けるかもしれない。
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大橋 |
自分と作品が一体化する感じで引き込まれるように集中していくのでしょうか。服部さんの皮膚感覚に近いところで発生しているんですね。
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服部 |
そうですね、誰にどう見られるかあんまり気にしない。作品をつくっている時は引き込まれてつくっている。それがすごく楽しいんです。自分が何か特別なことをしている意識はないので、発表する機会を頂けるような作品をつくっていることがすごく不思議で、すごいことになっているなと感じているんです。
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大橋 |
もともとは陶芸希望ではなかったのですか。
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服部 |
陶芸がしたくてここの大学へ来たわけではなくて、一人で黙々と何かをつくるのが好きで来たんです。
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大橋 |
服部さんは先生になる予定だったのではないですか。
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服部 |
私は教育実習で中学2年生の授業をやったのですが、今の美術の授業は私たちの時代と全然違う。美術は本来自由ですごく楽しいものなのに、すごく短い時間しかないので、限られた内容を記憶するだけというか。ああいう授業をやることを仕事にするのは合わないかも知れないと。
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大橋 |
今大学院も含めて8人で学校のアトリエをシェアされていますけど、すごく刺激になりますよね。普段はどんな感じなんですか。
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服部 |
中島先生も含めて、それぞれすごく頑張っていて次々とすごい作品が出てくるので面白いです。皆黙々とやっていて、煮詰まったりすると誰かがタバコを吸いに行ったりお茶を飲んだりする。でも私は中学生の時から陸上をやっていたので、煮詰まると走りに行くんです。
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大橋 |
選手だったんですか。
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服部 |
800m走です。大学のトラックもあるし、外に出て1時間位、距離にすると10キロ位走る。それですっきりして帰って来てまたつくるんです。
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大橋 |
すごいですね。細かい息を詰めるような作品をつくり続けていて、パアッっと走りに行く。なんだかバランスがとれるというか。
あと少しで展覧会です。走ってすっきりさせて、良い展覧会にしてください。
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