やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

山岸 大祐 展 -白壷の輪郭 花鳥のアーチ-

山岸 大祐 展 -白壷の輪郭 花鳥のアーチ-

2007年11月6日(火)〜12月4日(火)

■ 休館日
日祝日
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク

会場にて、制作のことなど作家ご自身に語っていただきます。
2007年11月6日(火)18:30〜19:00
先着順、入場無料

線の行方 H44×W37×D29cm 2007 撮影者:林 周悟



展示会概要
山岸大祐(Yamagishi daisuke)さんの作品は、壷をモチーフにした白陶のオブジェです。
壷の外壁を刳り貫き、内側に入れ子状の構造をつくった独特のかたちをしています。その薄く白く細長いかたちは、白さぎや白鳥の立ち姿のように、あるいは蘭の花芯のように、稟として優美な雰囲気があります。
作品のタイトルは「線の行方」。ラインが一筆書きのようにつながり、フォルムを形成していく様をイメージしています。 細い高台の上、ロクロで膨らませた壺のお腹辺りを、一旦切り広げ、内側にもうひとつ、お椀や壺のような形を仕込みます。底から細長い円柱が鶴首のように伸び上がり、やがて外壺の肩にあたる辺りで、外壁から立ち上がってきた帯状のかたちと結ばれます。

山岸大祐

Photo:ガレリアセラミカ会場 2007

山岸大祐
山岸さんはロクロ成型に魅力を感じ、やきものと器の関係、器の内側と外側の関係を模索しているうちに、この作品が生まれました。最初に大まかなスケッチはしても、かたちはつくっているうちに自然に掌の中で生まれてくると語ります。
山岸さんは現在、愛知教育大学陶芸造形コースの大学院生ですが、2年続けて朝日陶芸展に入選し、高さ30cmほどの小さな作品ながら、独創的なかたちと存在感で圧倒しました。
薄く伸ばされ、焼き締められ、真っ白に乾いた山岸さんの作品は美しく、見るものに多様な印象を与えます。背骨と骨盤の組み合わせのような厳かさ、白い胡蝶蘭や香水壜、つま先立ちをしたバレリーナ像をイメージするような華やかさを合わせ持っています。
今展は山岸さんの初個展となります。
山岸大祐
山岸大祐
山岸大祐
インタビュー
2007年9月7日 インタビュー:大橋恵美(INAXギャラリー)
大橋 山岸さんの作品を「朝日陶芸展」と愛知県陶磁資料館での「愛教大の造形展」で拝見して、セラミカで展覧会をして頂こうとご連絡しました。教育大は美術大学と違って、学校の先生になる人が多いのではないかと思うんですけど。
山岸 僕の場合は教師になることは考えていませんでした。もともとはやきものをやりたくて、大学を受験しました。愛知教育大以外にも選択肢は他にもありましたが、そちらはプロダクトデザインという関わり方でしたので直接土が触れる愛知教育大へ行ったんです。
大橋 作家として作品をつくりたいというのはあったんですか。
山岸 ありましたね。中学生の時から陶芸家になりたいというのが。
大橋 随分早いですね。
山岸 その頃の陶芸家のイメージは、山の中にひとりで籠ってやるという感じで、人里離れた所でやって行けたらいいなと思って。自給自足じゃないですけど。もともと、人とのコミュニケーションが苦手でひとりで絵を描いたり、工作をしたりするのが好きでした。
大橋 何かつくりたかったんでしょうね。それにしても早いですね。
山岸 はい。高校へ進学する時も陶芸の出来る高校へ進もうと思って、地元の陶芸家の人に相談したんです。そこでは可能性の幅を狭めるのは良くないと言われて、結局は普通科の高校へ進みました。それでも陶芸をやりたくて大学に進むことになるのですけど。大学に入ってからは色々刺激があって、ただ陶芸をやりたいという気持ちからは変わっていきましたね。1年生の時に4つの素材を、漆、ガラス、金工、陶芸と触わり、その中でもガラスがキレイで憧れて、3年生で専攻に分かれる時ガラスと陶芸のどちらにしようかと悩みましたが、最終的には陶芸を選びました。やりたかったことでもあるし、やはり一番しっくりきたのだと思います。
大橋 それほどやりたかったやきものを、やってみた感想はどうでしたか。
山岸 ロクロは初めての経験で、土を引き伸ばして自分の手でかたちになるというのが面白くて。僕は薄くするのが好きで、でも薄くするとへたります。自分のこうしたいという想いと、そうなってくれない土とのギャップを感じました。直接触れた土から、つくったままにかたちが出来てくるのがいいなと思っていましたから。でも、実際にやってみると、つくりたいかたちをつくれない。 自分の考えだけを押し付けることはできない。難しいと気がついて、それをなんとかしてやろうと嵌っていったんですね。
大橋 中島先生にはいつから教わったんですか。
山岸 学部の2年生です。
大橋 では早い時期に巡り会ったんですね。
山岸 先生が来る前から先生の作品のことは知っていました。水玉の、すごい先生がくるなと思いました。先生には考え方や姿勢など色々影響されました。愛知教育大の陶芸の色も変わりましたね。
大橋 作品はロクロからいきなり「線の行方」になったんですか。
山岸 今思えば少しずつですね。2004年「花器」の頃から僕の中ではそんなに違いは感じていないんです。
大橋 「花器」といっても一輪挿しも入らないですね。
山岸 そうです。ロクロをひいている時も、すごく底の小さな器をひいていて、使えないと言えば使えない。口をつけると口が切れるような器だったり。ロクロは放射状に伸びていくので、器というより放射状の形態をつくる感じだったんです。だから同じ感じなんです。
大橋 2004年「痕」になると繊細なだけでない骨太な感じがでてきますね。
山岸 「痕」は土で紐と玉をつくって、その上にたたらを置いて手びねりでつくるんです。どちらかと言うと、僕は加飾が苦手で、それで、最初から加装のような仕事で、加飾が構造にならないかと考えたんです。課題で、卵の殻を使ってかたちをつくってそこに加飾をするというのがあったんですけど、それも絵付けではしっくりこないので、紐で模様を作りそれを卵型にしたり。ある時は、土の円盤をつくりたくて、土でやると歪むので、それを解消するために、収縮性を弱めるため焼き切った磁器の粉を支持体に敷き詰め、窯の中で成型をするという仕事をやってたりもしてましたね。その後に「内と外」という課題 で制作する機会があって、久しぶりに土をまともに触り、その時に「線の行方」の原型が生まれました。
大橋 山岸さんだけの作品が生まれましたね。白くて繊細な陶の作品というのはブームのように多いのですが、山岸さんのかたちは例えば骨のイメージだけでない、構造だけでもない膨らみと、大きさも小さくて1点しか出品していないのにすごい存在感があった。
山岸 「内と外」で始まったんですが、イメージは壺に結びついています。膨らみがあって、内部あって、それが口に向う。うつわというのはやきものの中では外せない要素だと思っています。オブジェとうつわと言いますけど、表現の中ではそういう括りもなくなってきていると思います。使ううつわは産業で生み出されるものの方が使いやすいし、安いし、皆が手に入れやすいと思います。ただ使うという目的はそういうもので果たされているので、なぜ現代の陶芸家がうつわをつくるのかという感覚を大事にしたいと思っています。
大橋 これまでのお話の中で、高校の時にはプロダクトデザインにも進みたいと思っていて、来年の就職では職業としてプロダクトデザインで器をつくることを選んだそうですね。
山岸 そうです。そこではデザイナーの感覚でうつわと関わると思います。
大橋 今年は充実していますね。夏には就職も決まり、東京で個展を開催して、そして修了制作展がある。
山岸 はい、充実しましたね。年末には多治見で、年明けには愛知県陶磁資料館での企画展に参加させていただきますし。初めての事が多くて、てんやわんやしてます。
大橋 山岸さんは学校行きながらコンスタントに発表をされていますね。発表するということはどうですか。
山岸 作家になりたいと思ったときから、結果を残していかないといけないという気持ちがありました。それに発表することが経験を積むことにもなると思うんです。アトリエで見ているのと、コンペで皆の作品に囲まれるのとでは全然違います。僕はいきなり美濃の国際コンペに出したんで搬入のとき自分のものを並べると、もう、あーという感じでしたね。
大橋 全然引きこもりではないじゃないですか。
山岸 山に籠っていたいとは言っていられませんでした。それでも、じっくり作品と向き合う時間は欲しいですね。これからは土の事、焼成の事、構造の事を深化させていくことが課題だと思っています。「線の行方」以前は、ただつくらなければという気持ちが強かったけれど、今は僕自身ただ闇雲に進んでいく時期は過ぎたのかなと感じています。こんな風に構えたことを言ったら、中島先生は「まだまだや!」とおっしゃる気もしますが。
大橋 今回の展覧会も、中島先生が何かおっしゃるかどうかも、楽しみですね。
作家略歴
1984 愛知県生まれ
2006 愛知教育大学造形文化コース卒業
2007 愛知教育大学大学院芸術教育専攻在学
■ グループ展ほか
2005 2006 2007
2005きてん(大一美術館内Dギャラリー/名古屋)
2006愛知教育大学造形文化コース卒業制作展(中区市民ギャラリー/名古屋) 第44回朝日陶芸展入選 cera-mix-愛教大の造形-(目黒陶芸館/四日市)
2007愛教大の造形展(愛知県陶磁資料館/瀬戸) フタのある形(ギャラリーヴォイス/多治見) 第45回朝日陶芸展入選

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