やきもの展 GALLERY3




展覧会案内

岡林葵 展<br>― 包まれる陶磁形 ―

岡林葵 展
― 包まれる陶磁形 ―

2006年9月7日(木)〜10月2日(月)

■ 休館日
2006年9月20日(水)
■ 開館時間
10:00〜18:00
■ 観覧料
無料

アーティスト・トーク

会場にて、制作のことなど作家ご自身に語っていただきます。
2006年9月7日(木) 18:30〜19:30
先着順、入場無料




展示会概要
岡林葵(Okabayashi Aoi)さんの展覧会は2004年に続いて今回が2回目となります。その作品は、真っ白な四角い固綿状のベースに、いくつかの細い白陶の輪や波状の棒がレイアウトされ、青い糸で留められたキット状のものです。2004年には展覧会名を「陶土・のびやかな筆致」と名づけましたが、白い陶土を指先で一気に伸ばした紐状の、のびやかな筆致のような白陶のかたちは、ハングル文字の一幅の書のような、陰影によっては雪上に削られたレリーフのようにも見え、凛とした清清しい美しさがあります。キットのままのかたちと、そこから取り出して会場で再構成するという対比もあり、平面と立体の両空間の感覚を同時に表現し、豊かな広がりを感じさせます。

以下 photo:INAXガレリアセラミカ会場写真



現代美術でもやきもののオブジェでも、作品と梱包が一体化した作品はたくさんありますが、そこには、おもちゃ箱やプレゼントを開けるような愉しさ、舞台的演出、箱庭的小宇宙など、幾重にも喜びがあります。岡林さんはこうした作品「kit」を2002年頃からつくり始めましたが、最初のきっかけは海外への作品の輸送方法から思いついたそうです。
今展では「kit」に加えて、新しいシリーズ「bony」を中心に展覧致します。「bony」は小さな白磁のラッパ型がキットに等間隔に埋め込まれています。白磁の部分がまるでスチロールにめり込むように一体化し、キルティングのような厚みのある表情に変わりました。無数にはめ込まれた「穴」のようなかたちは、昆虫の巣穴のようであり、貝や耳、聞くといった暗喩のようでもあり、リズミカルなイメージがあります。のびやかな筆致の陶磁から、面となって作品の背後の豊饒さに気づきはじめた変化も、お楽しみください。
包まれる陶磁形

これまでにガレリアセラミカは125回の展覧会を開催してきたが、若手・気鋭の作家を中心に展覧会をする方針によって、開催する作家は初個展の場合や遠方に住んでいる方が多く、予算の範囲内で125往復の輸送とその方法を作家自身に依頼してきた。
やきものとはかなり壊れやすい性質のもので、初個展とは、すなわち自分の作品の特質すら見極められないできた作家による、いわば初梱包で、ましてや遠方への輸送作業には、数々の、息をのむ梱包輸送事件があった。

そんなわけで岡林葵のキット状の作品「Piece Project」を見た時、本当に、コロンブスの卵的感動もあった。数年来流行していた陽炎のように儚いやきもの作品のプレゼンテーションを受ける度に、作品の出来栄え以上に、輸送による破損ばかりを心配した。 岡林の2002年から始まったアメリカ輸送のために発想したというこの「kit」シリーズは、白い四角形の固綿上に細い白陶の輪や波状の棒が青い糸で留められレイアウトされている。のびやかな筆致のような白陶のかたちは、ハングル文字の一幅の書のようであり、あるときは陰影によって雪上に削られたレリーフのようにも見え、供物や御物を紐やリボンで結び留めたような、清澄で凛とした美しい作品である。 現代美術でもやきもののオブジェでも、作品と梱包が一体化した作品はたくさんある。おもちゃ箱やプレゼントを開けるような愉しさ、舞台的演出や箱庭的小宇宙など、段階的に幾重にも隠されている喜びに出会う。
2004年当時の岡林は、固綿状のベースに留めた線状の作品について、作品が「箱だとか鞄とかだといやらしい感じがするんです。だから文字を連想するようなものにしているんです。」と語っている。かたち間の微妙なバランスでも、そこから意図的なものを排除しようとする意識が働いて、作品に毅然とした雰囲気を漂わせていた。

岡林の作品にはまた、キットのままのかたちと、そこから一部を取り出して、会場で再構成するという対比もあって、平面と立体の両感覚を同時に表現し、豊かな広がりを感じさせた。 2年後の今展では、その頃兆していた新しい世界も登場する。綿のキット一面に埋め込まれているのは、白陶の小さなラッパ型だ。白陶の部分がまるで綿にのめり込むように一体化し、キルティングのような厚みのある表情に変わっている。 「kit」シリーズはフォルムとしての「かけら」、今回の「bony」シリーズは、テクスチャーとしての「かけら」を表しているという。

INAX文化推進部 大橋恵美
作家略歴
1973 兵庫県生まれ
1996 大阪芸術大学工芸学科陶芸コース卒業学長賞受賞
1999 大阪芸術大学大学院芸術制作研究科修了
■ 個展
2001 茶屋町画廊 (大阪)
2004 ギャラリー白(大阪)
2005 「Piece Project」 Atlantic University (アメリカ・フロリダ)
「Japanese Garden Project」 Willamette University(アメリカ・オレゴン)
「Air Work」Pocket美術函(神戸)
「陶土・緩やかな筆致」INAXガレリアセラミカ新宿(東京)
■ グループ展など
1994 キャラリー紅(京都)
1996 伊丹国際クラフト展(公募展)
1997 「酒器展」ギャラリープリンキピア(富山)、「うつわ展」ギャラリー紅(京都)
パラディアームイベントホール ディスプレイ(神戸)
1998 堺東高島屋アップル ディスプレイ(大阪)
1999 「焼成による変様」セルフソウアートギャラリー(大阪)
「同床異夢展」日韓米国際交流展 Gallery SAGAN (韓国・ソウル)
「現代陶芸交流展」日韓米国際交流展 アートミュージアム銀座(東京)
2001 朝日現代クラフト展(公募展)
2002 「EX:CHANGE」日韓米国際交流展(アメリカ・マイアミ)
アーティストレジデント招待参加(アメリカ・フロリダ)
アーティストレジデント招待参加(アメリカ・オレゴン)
金津創作の森 酒の器・展(公募展)
「℃展」ギャラリー千(大阪)
2003 「Ceramic Site」ギャラリー白(大阪)以後’04・’06出品
「ミニアチュール展」ギャラリー島田(神戸)
2004 器・小さなオブジェ・道具展 INAXガレリアセラミカ新宿(東京)
2005 ガレリアセラミカの11人展 世界のタイル博物館(愛知)
「無形なるものたち」ギャラリー島田(神戸)

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