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「西山夘三のすまい採集帖」

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 西山夘三という名前を耳にしても、建築の専門家でもなければ、ぴんと来ない人の方が多いかもしれない。しかし、私達の住居は彼の研究の成果と深い関わりがあり、誰もが知らない筈がないものである。
 西山夘三は、1994年まで生きた建築学者、建築家、都市計画家であり、日本の住宅研究の基礎を築いた人物。彼なしには、現在の私達の一般的なアパートやマンションの間取りは存在しないといっても過言ではない。ダイニングキッチン、何DKというモデルは彼の研究に基づいて作られているのだから。

 彼はこのダイニングキッチン何DKという住居の間取りを編み出すにあたって、ありとあらゆる住居(長屋、町屋、農家などなど)と庶民の生活の実態調査を綿密に、そして徹底的に行っている。
 とはいえ、現代のようにインターネットでいとも簡単に大量の情報を手にできる時代とは明らかに異なっている。一つひとつが実際に足を運んでの現場調査、そして記録は手で紙に書き留められたもの。その記録は膨大なものである。気が遠くなるような作業ではないか。漫画家を志した時期もあったという西山夘三のスケッチや図版は、美しく、資料としても、絵として眺めても非常に面白い。

 西山夘三の著作は、現在は絶版になっているものが殆どで、入手できる『すまい考今学―現代日本住宅史』も素人が読む本としては若干小難しいかもしれない。本書は、資料として描かれた図版やスケッチがふんだんに掲載され、漫画も収録、また専門家による解説もあり、西山夘三の魅力満載である。
 日本住居研究の基礎を築いた建築家、この機会に是非知ってほしい人物なのである。


西山夘三のすまい採集帖/五十嵐太郎ほか/112ページ/LIXIL出版/\1,800+税

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