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「ふわとろ SIZZLE WORD『おいしい』言葉の現在」

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 「生活定点」という、博報堂生活総合研究所が行っている調査がある。1992年から隔年で訪問調査によって行われているもので、長年に渡り同じ質問を投げかけ、生活者の意識と欲求の推移を分析している。現在web上で発表されている質問項目は、21のカテゴリー、1500項目である。
 例えば、カテゴリー「遊び」の中の「よくするスポーツや趣味は何ですか?」という質問に対して読書と答えた人の割合は、2016年では、28.5%。調査を始めた1992年には37.1%だから約10%減で、24年を通したグラフで見ると、緩やかに下降している部類に入る。
 ・・・という具合に、1500項目もの質問事項があるから、一つひとつの質問について読み取ることはもちろん、グラフの形で似たもの、異なるもの、答えた人の年齢や性別での比較など、様々な見方、分析の仕方があり、時間を忘れて遊んでしまう。
 新しい発明や何か大きな出来事や現象、――良いことも悪いことも含めて――が起こると、私たちの意識や考え方は、否が応でも変わっていくだろうし、全く正反対になってしまうこともありうる。この調査によって、明らかに浮かびあがる原因の何か、を読み取ることもまた興味深い。

 この「生活定点」と同種の調査を、B・M・FTというマーケティングの会社が、「おいしいを感じる言葉」について12年間行っている。そしてまとめられたのが、『SIZZLE WORD シズルワードの現在』。そして、おいしさを表す言葉が使われている現場、その分析を読み物としてまとめたのが『ふわとろ SIZZLE WORD「おいしい」言葉の現在』である。
 シズルワードと言われても、耳慣れなく、すぐにはイメージはわかないかもしれない。シズルとは、英語でジュージューを表す擬音語で、購買意欲をそそる手法を意味するマーケティング用語として使われるそうである。
 時代を表す言葉が変化し、流行の言葉も次々と変わるように、私たちが耳にして「おいしさ」を連想する言葉も明らかに変化している。「もちもち」や「濃厚な」はおいしさを感じる言葉として12年間で順位が上がり、「コクがある」「旬」などは下がっている。コマーシャルなどによって入ってくる情報から私達の志向が変化するのか、志向が変化するから好まれる言葉が変化するのか、はっきりさせることは難しいとしても、この明かな変化を追うのもなかなかに興味深い。
 日本の食文化は豊かであり、したがって日本語は、食に関する言葉が豊かな言語である。おいしさを表現する言葉も多種多様にある。その言葉そのものに、様々なアプローチ方法で触れてみるのもまた楽しい。

ふわとろ/大橋正房/392ページ/B・M・FT出版部/\1,800+税

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