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「現実脱出論」

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 資本主義、民主主義思想が浸透してからの日本は、物質的(金銭的)豊かさ=幸福、と信じてひたすら突き進んで来た。いや今もこの路線を変更することなく、邁進し続けている。バブルが崩壊しようと、経済破綻した国があろうと、国の借金は増え続け、年金の将来的破綻が目に見え、経済格差が広がり、自殺者が激増していたとしても。間違いに気づいている政治家はもちろん存在しているだろうが、現時点ではまだまだ少数派なのだろう。

 何かを獲得することでのみ得られる幸福感の誤りを指摘してきた思想家、知識人は少なくなくない。そういった人々は、「古き良き」時代の精神や人と人との繋がりを取り戻すために、政府や行政に頼るのではなく、独自に活動を行っているようである。

 本書の著者、坂口恭平もその一人である。
 「0円ハウス」は、ホームレスと呼ばれる人々の家の写真集。「モバイルハウス 3万円で家をつくる」では、家賃は高すぎないか、そもそも土地を所有してよいのか、という至極まっとうな疑問をもとに、たった3万円で可動式の家を作ってみせる。「独立国家のつくりかた」は、社会システムを意に介することなく、独自のレイヤー(と著者は呼ぶ)で、仕事をし、活動を続ける著者の軌跡である。

 そして本書「現実脱出論」は、自身の活動の根幹をなす著者の思想の開示である。著者の思想は、現代社会のあり方、考え方に対するアンチ・テーゼである。共感する人は多いだろう。そうはいっても現実が・・・といいたくなる人も多いだろう。しかし、今後、こうした思想は、益々多くの人に受け入れられ、支持されるのではないだろうか。


現実脱出論/坂口恭平著/206ページ/講談社現代新書/\760+税

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