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「伊東豊雄 子ども建築塾」

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 「子ども建築塾」として文字通り、日本の小学校のカリキュラムでは教えてくれない「建築」について子ども達に分かりやすく教えてくれる学校について書籍化した。一流の建築家である伊東豊雄が「いえ」や「まち」について、1年をかけて子ども達に教え、最終的には自分の考える街を具体的に模型として形にするというものだ。
 月2回、1年間という期間、この塾に通っているのは、当然建築に興味があったり、将来建築家になりたいと考えたりしている子ども達である。そしてそんな子ども達に機会を与え、願いをかなえたいと考えている教育熱心な両親達である。

 しかし、伊東自身は「必ずしも建築を考えるための塾ではない」と語っている。そして座談会において、建築史家でありこの塾の講師の一人である松村伸は「子ども塾を卒業してプロの建築家になる人はそんなにいないと思う」と述べている。

 伊東は「建築」を子ども達に教える対象としながらも、決して建築についてのみ指導しようとしているのではないということだろう。もっと教育を広く全体的なものとしてとらえていて、むしろ人間性そのものをはぐくむ場としてこの塾を運営しているようである。これは、伊東豊雄の建築が、単なる建物としてではなく、風景、そして集う人々との調和を常に念頭において創られるていることと共通しているように思う。

 本書には、哲学者の鷲田清一、元陸選手の為末大との鼎談も掲載されている。形は違うけれども3人とも子ども達に教える場を独自に作っており、教育の場、そして教育そのものに対するそれぞれの考え方も興味深い。

 伊東豊雄は日本において最も知られている建築家の一人であり、世界的評価も高い。2013年には建築界のノーベル賞と呼ばれるプリツカー賞を受賞している。彼のような建築家が、子ども達との交流に意義を見出していることに注目したい。


「伊東豊雄 子ども建築塾」伊東豊雄・松村伸ほか著/LIXIL出版/208ページ/2,300円+税

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