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「アリスとキャロルのパズルランド 不思議の国の謎解きブック」

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 ルイス・キャロル著「不思議の国のアリス」は、「聖書やシェイクスピアに次ぐといわれるほど多数の言語に翻訳され引用や言及の対象となっている作品」だという。知らない人の方が少ないといえるほどにはよく知られている書籍である。

 日本語訳はこれまでに200回以上翻訳・出版されている。1つの作品がこれほどまで異なる翻訳者により訳されるのは非常に稀なケースだ。もちろん作品が面白く魅力的だからという理由だけではない。不思議の国のアリスは作品が書かれた言語である英語によるナンセンスな言葉遊び、パロディ、古い詩や童謡からの引用が豊富であり、そのままのニュアンスや面白さを残したまま別の言語に置き換えることが非常に難しく、昔は翻訳するのは不可能と考えられていた作品なのである。作品中の言葉の理解やセンスは翻訳者の力量に負うところが多く、そこが翻訳の腕の見せ所となる。

 「アリス」には好奇心をかき立てる言葉遊びや謎が多い、という点に目をつけたの(かどうかは定かではないが)が、本書の作者エドワード・ウェイリングである。著者はルイス・キャロルの研究家であり、数学者でもある。彼は、不可思議な出来事や言葉で織りなされている不思議の国のアリスと、続編の「鏡の国のアリス」の物語の場面や会話、言葉から、このパズルと頭脳遊戯を作成している。読者はパズルそのものを楽しむと同時に、2つの物語のシーンを思い起こしながら再度味わうことができる。

 謎解きは言葉の解釈解説、翻訳過程の提示のようにも思われる。著者は日本語訳に当たり、監修も行うことで翻訳の正確を期している。数学者でもあったルイス・キャロル自身が考案したオリジナルパズルもいくつか掲載されている。

 また、アリスといえば、ジョン・テニエルの挿絵が有名である。魅力ある挿絵の数々が本書の愉しみの1つとなるだろう。初版を思わせる凝った装丁で美しい。プレゼントにも喜ばれそうな1冊である。


「アリスとキャロルのパズルランド 不思議の国の謎解きブック」R.W.ガラント著/楠本君恵訳/グラフィック社/256ページ/2,200円+税

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