イベント情報

内藤多仲博士記念館(旧自邸)見学会とトーク イベントレポート

part1: 日時/2006年10月14日(土)14:00〜16:00※終了しています
part2: 日時/2006年10月20日(金)14:00〜16:00※終了しています

ギャラリー1  < タワー ‐内藤多仲と三塔物語‐ > 関連
part1: トーク/「内藤多仲が築いてきたもの」  講師/山田眞(早稲田大学理工学術院教授)
part2: トーク/「内藤多仲の三塔設計にタッチして」  講師/田中彌壽雄(早稲田大学名誉教授)


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2006年10月20日(金)


◆ 10月14日に引き続き、ギャラリー1(東京)「タワー 内藤多仲と三塔物語」関連イベント<内藤多仲博士自邸見学会&トーク>第2回が行われました。



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都営大江戸線若松河田駅から徒歩5分、大正モダンの香りを残す閑静な住宅がひっそりと佇みます。この邸宅は博士の死後に早稲田大学へ寄贈され、昭和61年に生誕百年を記念して内部が一部改築され、展示室となっています。通常は一般公開されていませんが、この度、早稲田大学理工学研究所のご協力により、特別に見学させていただきました。



内藤多仲博士自邸は大正15年(1925)に建設された「耐震壁」のモデル住宅です。設計は木子七郎、構造はもちろん内藤多仲によるもので、木子七郎は旧東京帝大で内藤多仲と親交があり、主に関西を中心に活躍していた建築家です。もっとも特徴的なのは、当時としては非常に珍しい「壁式コンクリート構造」。壁式コンクリートとは、耐震構造に特徴的な柱や梁をいっさい用いず、分厚い壁自体が柱の役割を果たしている構造です。



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もう一つの特徴は、意匠が設計図上で非常に作りこまれていること。木子七郎の意匠設計に今井兼次が協力し、家具のひとつひとつがオーダーメイドで部屋に収まるようになっており、細かな部分まで行き届いたデザインがみられます。



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見学者のみなさんが一番驚かれたのは、一見、木製のように見えるヒーターや扉。実は金属の上に木目を描いています。改装前には窓のサッシもすべて手描きの木目だったそうです。



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かつてダンスやお能が行われたというホールは、美しい寄木の床で覆われています。

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ダイニング。作り付けの食器棚の向こうには台所があり、棚の扉を開いて食事を渡す事が出来ました。

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屋上からは当時の東京が見渡せました。最上階には小さな書庫があります。



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多仲の書斎。大きな机の上には当時、資料が山積されていたとか。



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和室との境にある仕切りは、戸袋にコンパクトに収まるようになっています。決して平米数が大きな屋敷ではないにもかかわらず、大変に広広と部屋数が多く感じるのも、こうした工夫があればこそでしょう。
田中先生からは内藤多仲の授業風景など貴重な写真を織り交ぜつつ、塔の構造や当時の逸話についてお話いただきました。



「むだのない合理的な形が最も強く、コストパフォーマンスに優れている」



内藤多仲の設計の考え方はたいへんシンプルなものでした。

3塔の設計に当たっても、例えばシュトゥットガルトタワーのような柱型の塔もありますが、頂上に向けてゆるやかな曲線をもった三角形がもっとも単純で横揺れに強い形状であり、ベストな鉄塔を構造すれば必ずエッフェル塔に近いフォルムになるのだ、という確信を持っていました。

また、授業で大きな声を出すために、発声練習を兼ねて謡を趣味としていたなど、内藤多仲のもとで学んだ田中先生ならではのお話を伺うことができました。



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また、多仲は芸術にも優れた審美眼を持っていました。才能ある芸術家を見出し、そのうちでも深い親交を持っていたのが彫刻家である圓鍔勝三です。早稲田大学内藤記念館に置かれている圓鍔氏作の内藤多仲博士像(1956)は、多仲の姿を見事に写しています。

早稲田大学図書館(現・会津八一記念博物館)を設計した今井兼次は、多仲自邸の意匠造作にも関わった建築家ですが、芸術的な感覚を仕事にも発揮し、日本二十六聖人殉教記念館(長崎)の壁面モザイクに特にその発露を見ることができます。

幅広い知識と教養、好奇心が多仲の仕事の根幹に流れていたのでしょう。



「積み重ね、つみかさねても、またつみかさね」

「複雑な仕事ほど、一度たちもどって最もシンプルなところから眺めることが必要だ」



やむ事のない研鑚と合理的な思考能力、実行力が生み出した建築の数々、いくつものタワーは数十年の年月を経て多仲亡きいまも街と共に生き続けています。



最後に、貴重なお話をいただいた田中彌壽雄先生、part1に引き続き、また今展に多大なご協力いただきました山田眞先生および早稲田大学の皆様、内藤多仲博士ご親族の皆様、そしてご参加くださった皆様に厚く御礼申し上げます。



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<参加申込のご案内>※終了しています
1,2とも:
場所/内藤多仲博士記念館(東京都新宿区若松町)
定員/各15名 参加無料
問合せ先 : TEL/03(5250)6530 FAX/03(5250)6549


※参加ご希望の方は9/1以降お電話かFAX、またはeメールxbn@i2.inax.co.jpへギャラリーまでお申込みください。
※参加人数、緊急連絡先のお電話番号、メールアドレス、ご住所ご連絡先、FAX番号(あれば)をご明記ください。


◇名古屋テレビ塔、通天閣、東京タワーを建てた「塔博士」、内藤多仲の旧自邸を訪ねます。「耐震建築の父」とも呼ばれた多仲の自邸は大正15年に建設された「耐震壁」のモデル住宅でした。柱や梁がなく、壁と床スラブだけで建物を支えるという、当時としては非常に珍しい鉄筋コンクリート壁式構造建築です(意匠設計:木子七郎)。後に、多仲が教鞭をとっていた早稲田大学に寄贈され、現在は「内藤多仲博士記念館」となっています。見学後には、自邸内でトークを開催します。

 1回目の10/14(土)は、山田眞氏(早稲田大学理工学術院教授)に、多仲の業績を中心に語っていただきます。現在、同氏は多仲の自邸に残された膨大な資料や記録、図面類を調査しています。それらから垣間見る多仲の教育・研究、設計活動や人となりについてお話いただきます。

 2回目の10/20(金)は、早稲田大学名誉教授の田中彌壽雄氏を講師にお招きします。同氏は同大学で多仲に学び、その後多仲とともにタワーの設計に携わりました。自邸に隣接するアトリエからは名古屋テレビ塔、通天閣、東京タワーが誕生していきました。当時の様子を振り返りながら、それぞれのタワーについて語っていただきます。

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